ヨル

都内で働くアラサー。人生全部フィクション

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どうしてこの街じゃダメだったんだろ

私はどこで間違えたんだろう。 物凄い田舎って訳じゃないけど、タワマンはないし、インスタで流行りのカフェも、ディオールもマルジェラもないこの街。 ここには何もなくて、それが嫌で上京した。東京に行けば何者かになれると思ってた。沢山の夢と希望を抱えて飛び乗った夜行バス。何かを変えたかった18の春。 何も変わらなかった訳じゃない。それなりにチャンスが巡ってきて、それなりに挑戦もした。ちょっとした有名人にも会ったし、欲しかったバッグも手に入れた。でも私は、何者にもなれない。 頑

    • 好きなことを仕事にするのって最適解?

      私の仕事は“書くこと”だ。 気がついた頃には何かを書くのが好きで、 誰に読んでもらうでもないブログや日記を 自由気ままに書き綴っていた。 いつのまにか大人になって、 色々遠回りもしたけれど “それ”を仕事にしている。 しかし最近、 ピタリと指が動かなくなってしまった。 生まれて初めての スランプが来たのだ。 スランプというとすごく偉そうだけど、 こんなにも言葉を紡ぐのが辛くなったのは 27年生きてきて、初めての体験。 今まではずっと、 思いとか、経験とか、気に入っ

      • 恋愛は日焼けに似ているらしい

        そういえば、失恋した。 正確にいうと 別れたのは半年以上前だけど その時点では失恋ではなかったと思う。 そして最近、ちゃんと恋が終わった。 私が終わりを告げたのに、 5歳の頃みたいに泣いた。 気づいたら3日が経っていた。 彼の広い肩幅が 少し高い声が 甘い匂いが 瞼の裏にも 耳の奥にも 鼻の先にも まだ熱く残っていて 決して情緒的でも、劇的でもない、 そこら辺にありふれた恋だった。 ううん、だけど、ちゃんと愛だった。 体が半分に切り裂かれたような 今はそんな気持

        • Dolce&Gabbanaじゃん

          別になんてことない。 夜中にいきなり電話がかかってきて 半年前に別れた元彼に再会しても。 私がどれだけ説得しても 頑なに伸ばしていたロン毛は短くなり いきなりタバコを咥えるようになっていた。 ちょっとだけ昔の、あの歌みたい。 失恋の模範回答で正直ちょっとウケた。 何よりも、会わなければよかった。 キラキラした思い出を 宝物として大切に 心の中にしまっておけばよかった。 一生懸命磨いていたダイヤモンドも もうくすんでしまったガラス玉だと気づいたら、 どうでもよくなった

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        どうしてこの街じゃダメだったんだろ

          プリンセスになりたかっただけなのに

          お姫様は王子様と 末永く幸せに暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。 そんな大人になるんだと 信じて疑わなかった幼少期。 中学生になって 自分はお姫様じゃないことに気づいた。 高校生になって 白馬の王子様なんていないことを知った。 大学生になって 末永い幸せなんてそうないことがわかった。 26歳の今、思っていることは とびっきり裕福でなくていいから 振り向くようなイケメンじゃなくていいから 普通に、ふつうに、フツウに、 結婚したい。家庭を持ちたい。 だけど。 兄弟が

          プリンセスになりたかっただけなのに

          彼らが神様だった頃

          小さい頃、両親は神様だった。 何をするにも両親の言うことが正しかったし 身につけるものは 全て両親が買ってくれたもので 出かける場所は 全て両親が選んでくれたところだった。 両親が私の全てだった。 海外に出張に行き 難しい本を読む父を私は尊敬していたし いつも違ったアクセサリーをつけて デパートで洋服を選ぶ母に私は憧れていた。 両親は紛れもなく、私の神様だった。 少しずつ私の世界が広がって 両親のいない世界がどんどん大きくなって やっと両親の助けを借りずに 自分の足

          彼らが神様だった頃

          ナマケモノの日曜日

          仕事に行きたくない人のひとりごと。 3連休が2回続いたので 大人の特権を使って 9日間の夏休みをとった。 この9日間、ずっとすっぴんで 犬と一緒に昼寝をして 美味しいものを沢山食べて 嫌な気持ちになるミステリーを2冊読んだ。 私が子どもの頃に接した大人たちは ビシッとスーツを着こなして 朝から晩までバリバリ働いて 家でキンキンに冷えたビールを飲んでいた。 土日も8時くらいには起きて イオンやららぽーとなんかに出かけて 時には釣りやハイキングも楽しんでいた。 でもあれは

          ナマケモノの日曜日

          私は指先に雲を飼う

          “好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると恋が叶う” “写真を枕の下に敷いて寝ると夢にその人が現れる” アラサー女子ならきっと 一度は試したことのあるおまじない。 私ももちろんその1人で 放課後にこっそり好きな子の上靴を履いたし、 ミサンガも狂ったように編んだ。 願いが叶うかどうかなんて関係ない。 おまじないを試すことで、 一歩踏み出す勇気がもらえる。 弱い自分を捨てることができる。 おまじないにはそんな力がある。 そしてアラサーになった今、 自分を強くしてくれる

          私は指先に雲を飼う

          お昼寝と夢と恋人

          切れ長の一重に、ツンと上を向いた鼻。 色白な肌にふわふわの猫っ毛。 いつもお洒落な音楽を聴いていて 少し古いバイクをとても大切にしていて なぜかとても落ち着く匂いがする。 職場では凛々しい目つきで働いているくせに 家ではいつもふにゃふにゃしていて ブラックコーヒーは飲めなくて 私の目を盗んでスイートポテトを焼いている。 (白玉やフルーツポンチの日もある) 私は彼がわからない。 彼と出会ってから どこかに出かけるのが楽しみになったし 家に帰るのがとても

          お昼寝と夢と恋人

          人生のアディショナルタイム

          私はいつでも死ねる学生時代を過ごした。 とはいっても、大した悩みがあった訳でも、家庭環境が複雑だった訳でも、いじめられていた訳でもない。 先生の目を盗んで校則違反のカーディガンを着たり、大好きなメロンパンを買うために全速力で廊下を走ったり、時には凍えながらサッカー部の練習を覗き見たりもした。 でもなぜか、いつも死にたかった。 いつ死んでもいいと思っていた。 無性に全てから解放されたかった。 大学生になって、彼氏に振られた。三日三晩お酒を浴びるほど飲んで、やっと決心

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          平行線の人生とおじさんの話

          今日は私が出会ったおじさんの話をしたい。 時間は無限だと思っていた頃に、お金が無限にあるおじさんと知り合った。 “パパ活”といわれるとそれまでだけど、直接的なお金のやり取りも、オトナな関係もなく、ただ美味しいご飯を食べさせてくれて、たまに欲しいものをプレゼントしてくれる人。 私はお腹が空いたらおじさんに会って、欲しいものある?と聞かれたら自分では買えないようなアクセサリーや洋服を買ってもらった。 おじさんが何の仕事をしている人なのか?家族はいるのか?なんて知らなかった

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          マイケルコースの呪縛

          私はマイケルコースみたいな女が嫌いだ。 マイケルコースを持っている女が全員嫌いって訳じゃない。ましてや、マイケルコースが悪いって話ではまったくない。 ただ私が嫌いな女がマイケルコースを持ってたってだけ。 アニエスべーは、地味でつまんない前カノ。 ロエベは、高校時代のマドンナ。 マイケルコースは、3年付き合ってた彼氏と浮気が発覚した女。 ある日突然知らない女から友達申請がきた。アイコンは汚い茶髪と伸びたネイルにマイケルコース。名前はアルファベットでRの一文字。 「あ

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          24歳、今日もフィアットを探している

          実家の車はいつもゴツゴツしてた。パジェロ、デリカ、ステップワゴン。 父の好きな、家族皆で乗れる強面の車が、私も兄も大好きで。でも私は知っていた。デリカの助手席から、すれ違うビートルを母が目で追っているのを。いつだったかふと母に、フォルクスワーゲンが好きなのかと尋ねると、忘れられない車なのだと母は言った。 あの頃の私には、何を言っているのか分からなかったし、母もそれ以上は何も言わなかった。 時は流れて、東京に出てきた18歳の私には恋人ができた。今までの価値観なんてどうでも

          24歳、今日もフィアットを探している