見出し画像

私は指先に雲を飼う

“好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると恋が叶う”

“写真を枕の下に敷いて寝ると夢にその人が現れる”

アラサー女子ならきっと
一度は試したことのあるおまじない。

私ももちろんその1人で
放課後にこっそり好きな子の上靴を履いたし、
ミサンガも狂ったように編んだ。

願いが叶うかどうかなんて関係ない。
おまじないを試すことで、
一歩踏み出す勇気がもらえる。
弱い自分を捨てることができる。
おまじないにはそんな力がある。

そしてアラサーになった今、
自分を強くしてくれるものは、ネイルだ。

しょうもないと思う人が多いかもしれないけど
私にはものすごく大切な習慣である。

上司に怒られても、
顧客に変なクレームをつけられても、
突然の雨に降られても、
ツヤツヤの爪が
憂鬱な日々を特別な1日に変えてくれる。

お花畑アラサー女子の特効薬だ。

ネイルにもそれなりに流行があって
痛ネイル、塗りかけネイル、針金ネイル、
水滴ネイル、チークネイル・・・。

どんなに流行が移り変わっても
大抵の女子はキラキラのネイルが好きだ。

平々凡々なOLの私もご多分に漏れず
キラキラのネイルが大好きだ。

夜空に輝く星のように
私たちの進むべき道を照らしてくれるーー。



ところで、
私の過ごす日常は
夜空というよりも昼間の曇天だ。

夜空のようなロマンの欠片もないし
何の可能性も秘めていない。
これから雨が降る予感すらする。

小さい頃からの夢は叶うはずもない、
まるで雲を掴むような話だ。

私の爪に宿るべきなのは
キラキラ輝く一番星ではなくて
雨が降ったときのための、
大きな傘なのかもしれない。

おまじないが私を
そんな曇り空の現実に引き戻す。

現実を生きる私がお花畑を馬鹿にして
昨日よりも強く曇り空の下を歩いていく。
これもおまじないの効果なのか。

今日もお花畑アラサー女子の私は
懲りずに爪をキラキラにする。

いつか絶対にあの雲を掴んで
指先で飼い慣らすために。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?