どうしてこの街じゃダメだったんだろ
私はどこで間違えたんだろう。
物凄い田舎って訳じゃないけど、タワマンはないし、インスタで流行りのカフェも、ディオールもマルジェラもないこの街。
ここには何もなくて、それが嫌で上京した。東京に行けば何者かになれると思ってた。沢山の夢と希望を抱えて飛び乗った夜行バス。何かを変えたかった18の春。
何も変わらなかった訳じゃない。それなりにチャンスが巡ってきて、それなりに挑戦もした。ちょっとした有名人にも会ったし、欲しかったバッグも手に入れた。でも私は、何者にもなれない。
頑張れば世界は変わる、そう信じて頑張ってきたつもりだった。
今の悩みは、3年付き合ってる彼氏との将来とか、年々崩れていく体型とか、仕事の微妙な立ち位置とか、26歳の女にはよくあることばかり。
いつまでもパッとしないチョイ役として誰かの人生に花を添えるだけの毎日。
仕事を休んで、ただぼーっとしたくて、この街に帰ってきた。高校生の時に飛び出した実家の部屋は、あの頃のまま。
私の成長が18で止まっている両親は、甘ったるいいちごミルクと唐揚げをこれでもかと食卓に並べる。
あの頃よりもコンビニの営業時間が長くなって、駅前に綺麗なファッションビルが立って、謎のブティックはスタバに変わった。ジャニーズのドラマも放送されるようになったし、ボタンを押さなくても電車のドアが開くようになった。
地元の友達は皆結婚したし、自分の店を始めた子もいるし、整形してめちゃくちゃ可愛くなった子もいる。
この街でも、私の悩みは解決できるんじゃん。何者にもなれなかったのは、何もないこの街のせいじゃなくて、何もない自分のせいじゃん。
あの頃の自分が報われなくて、今日も唐揚げをいちごミルクで流し込んでる。何やってんだろ。
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