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国際平和を望んでいた

国際平和を望んでいた

 ころころマカロン。マカロンころん。色とりどりのマカロンは、見た目の可愛らしさよりもずっと甘い砂糖という毒を持つ。確実に一口ずつ健康を蝕むような、そんな味。『ゴシップ・ガール』のブレアに憧れて、湯舟に浸かってマカロンを口に運びながらそんなことを考える。夢見心地のフランス生まれのメレンゲ菓子。
 世界平和はマカロンの詰め合わせみたいだと思う。わかりやすい華やかさを備え、毒が詰まっている。固いメレンゲ

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若さと美貌

若さと美貌

 女性ばかりでぎゅうぎゅう詰めのエスカレーター付近で、ふと思う。
「私は明らかに周囲の女性より若いし、ある程度美人な自信はある。でも、みんながそんな顔をして歩いている。いつか私のこの自信がなくなったとき、私は何にすがって生きていくのだろうか。」
 私は都心の通勤中、人混みに紛れている訳ではない。何を隠そう、宝塚歌劇団の宙組公演を観劇し、劇場から出るまでの道を進んでいる。
見た感じ二十代から六十代く

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孤独とひとりは違うから

孤独とひとりは違うから

 ウィーンへの一人旅は最高だった。社会人3年目に思い立って行ってみた。「一人で海外なんてきついよ」って言われ、その通りきつかった。それが良かった。旅先で病気になっても、感動しても分かち合う相手はいない。
 友達や家族と旅に行くと、どうしても日本の濃度が高く保たれてしまう側面がある。一人だと、異文化の中に溶け込めるような気がする。東京なのか、ウィーンなのか、その違いだけ。私は教会や美術館に行く、カフ

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おまつりの夜

おまつりの夜

 立ち並ぶ屋台と、宵に輝く燈火に永遠を感じた子供の頃。父の背中におんぶされたまま、「おまつりの夜」はずっと続くと信じていた。今では、そんな記憶さえ確かなものではないのに。おまつりの夜は、暗闇が怖くない唯一の夜だった。

 たまに暗闇が少し怖い。私が日常に死を感じるのは映画館の暗闇だ。シアター全体が暗くなる瞬間に非日常がぽっと顔を出す。映画を観るときは違う世界に行くのだから、一度自分の人生が終わった

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Women in Tokyo

Women in Tokyo

 マウンティングーー嫌な言葉が定着してしまった。全人類が関与を逃れることはできない。今更始まったことではなく、人間の本能だ。自己が他者よりも優れている部分を誇示する。

 「女」の幸せは、「結婚すること、子供を持つこと、キャリアを築くこと、親孝行すること」などのステータスに基づき判断されがちではないだろうか。男性も同様だが、男性の場合は圧倒的に「名声」や「年収」による比重が大きい。昨今はダイバーシ

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