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孤独とひとりは違うから

 ウィーンへの一人旅は最高だった。社会人3年目に思い立って行ってみた。「一人で海外なんてきついよ」って言われ、その通りきつかった。それが良かった。旅先で病気になっても、感動しても分かち合う相手はいない。
 友達や家族と旅に行くと、どうしても日本の濃度が高く保たれてしまう側面がある。一人だと、異文化の中に溶け込めるような気がする。東京なのか、ウィーンなのか、その違いだけ。私は教会や美術館に行く、カフェで一息つく、読書をする、散歩をする。普段の休日の過ごし方だ。場所が違うだけで世界は繋がっていることを、より実感することができる。ひとりの旅は非日常よりも日常に近づくから好きなのだ。

「30も近いのに独りなんてかわいそうに」
なんてクリシェを世間に言わされているかのような母に、むっとする。結婚願望はあるけれど、恋人がいないからといって今の私のひとり期間を否定されるのは違う。家族、友達、仕事仲間、いずれにも恵まれていて毎日楽しいことも十分ある。
 確かにひとりは自由すぎて、ときに寂しい。旅をするのも、仕事をするのも、習い事をするのも私の自由で誰も制することはない。なんて気ままなことか。では、結婚していたら「ひとり」ではないのか。そんなことあるまい。婚姻ステータスに関わらず、人は誰もひとり、そのスタイルが異なっているだけ。
 どんな時でも、ひとりもふたりもみんなも満喫できる「ひとり」でありたい。

「今は恋はしたくない」
フラジールな恋は精神に異常をきたす病だから。強固な愛なんてまだ信じられない。青臭いと言われてもいい。今は実行するときではないのだ。今はじっと観察し、体にため込むとき。いつかその時がきたら、精一杯愛する。それだけのこと。

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