深夜1時半と炭酸レモネード。

  テーブルに片足をあげて、ヘンテコな格好で眠りについた息子を見て、一頻り爆笑する。午後8時半。
かあちゃんはちょっと心配になるわ。
なんでこんな体制で寝れるのだ、息子よ。
でも、図太く生きてくれ、とたまに思う。



そのまま寝れなくて、私は午前1時半の壁を超えてしまった。
しゅわしゅわのレモネードが飲みたくなった。
近頃はカフェオレよりもサイダーが飲みたいし、サイコホラーな映画よりもアンパンマンの映画を見るし、パンプスよりもスニーカーを選ぶし、お子ちゃま化している様だ。
もちろん子どもの影響は否めないけれど。
でも今の私は俗にいう「等身大」ってやつだと思う。



昔の私は今よりも煌びやかな世界で息をしていたのに、いつも息苦しくて、いつも不機嫌で、自分を守るために嘘とでたらめで構成されていた。

深呼吸をしたくて、でもできなくて、肺の奥底まで煙を入れて煙草を吸う。灰皿はいつも吸殻だらけだった。私のものか男のものかもわからなかった。クラブに行っては本名かどうかわからない男と飲むことも増えた。身体を重ねることも増えた。手を出しちゃマズいものが誘惑してくることもあった。


その頃の私は本名なんて持ち合わせていなかったから、なんにでもなれると、どこへでもいけると、本気で思っていた。馬鹿だった。

ヒールが高いパンプスは良い女の証だったし、ブランド物の服を着ないと気が済まなかったし、メイクもネイルも必須項目。しかもネイルはスカルプでロングにしないとテンションはあがらない。髪の毛を巻かないなんて、ありえなかった。

いつも心に埋まらない寂しさがあって、いつも不機嫌で、どんどん何かに依存していった。男だったことも、クスリだったことも、セックスだったことも。
その時に手に入るもので心が埋まるならなんでもよかったから、行き当たりばったりな生活。
酒と男に溺れて、心のどろどろ黒いものが溢れてリストカットして、また別の男に抱かれて。

スクラップ置き場で生きているかのように、本当に無茶苦茶だった。
良く生きていけたな、と思うけれど、女であることが武器でもあった。

風俗に身を置いたこともあった。でもお金を稼ぐ目的や夢がないと闇に落ちていくだけ。少なくとも私はかなり精神を病んでしまった。

騙し騙されの世界で、信用してた女の子にも裏切られて、統括にも手の焼く子扱いされて、更にどんどん闇堕ちしていた。



ボロ雑巾よりボロボロになって、4万円だけ握りしめて実家に帰ったっけ。


  その頃の不安定な話しはまた後日書くとして、とにかく、すごく不安定だった。



  だから、ね、今、しゅわしゅわのレモネードが飲みたくなったってことが嬉しくて。あの頃ならお酒を飲んでいただろうし。

息子の寝相で爆笑することなんて考えられなかった。あの頃はいつも不機嫌だったし。


このまま死んでもいいかな、と思ったこともあったけれど、とりあえずもう少し生きてみるかってなって。なんだかんだで、やっぱり死ぬのは怖いんだわ。


死んだように生きていて、もしかしたらこの先もあの時よりも絶望が待っているかもしれないけれど、まあ、人間の底辺みたいな生活を送ったから、もう少し良いことがないかなって少しだけ未来に期待してみたくもなった。

それに、私は今、息子の成長が見たい。

そうやって拾った人生をもうちょっとだけ丁寧に生きてみようかな、と。
無理も嘘も吐かずに、そのまんまの私でいいと少し思えたし。
過去は変えられないから、進むしかないもんな。
だからこれから先は、息子にとって恥じないかあちゃんでいたい。




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