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ニーチェ霊解

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#ツァラトゥストラ

ニーチェ 「高貴な学校」

ニーチェ 「高貴な学校」

ニーチェが書いた『ツァラトゥストラかく語りき』は、比類なき書物です。

『反キリスト者 キリスト教への呪詛』などという本を書いたニーチェ自身が、世界宗教を望むはずがありませんが、もし世界の宗教を統一して一つの世界宗教を作るとするならば、この『ツァラトゥストラかく語りき』を正典にするのが相応しいでしょう。

しかし、正典ではないにしても、『ツァラトゥストラかく語りき』は「人類の教科書」として学校で教

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ニーチェ「独自の予言的夢想と星の知らせ」

ニーチェ「独自の予言的夢想と星の知らせ」

「我々は、信仰も迷信も持ち合わせていない」と胸を張る「現実的な者」に対して、ニーチェは「惨めに痩せこけて、張る胸もないではないか」と皮肉ります。

ニーチェは「神は死んだ」と宣言しましたが、それは「汝なすべし」と義務を強制してくる存在(宗教や道徳や風習)を否定したのであって、古代人が持っていた「独自の予言的夢想と星の知らせ」という素朴な信仰や神話まで否定したわけではありません。

むしろ、素朴な信

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ニーチェの死因 神の死から超人へ

ニーチェの死因 神の死から超人へ

1889年1月3日、ニーチェはトリノの広場で鞭で打たれる馬に出会いました。彼は駆け寄り、その首をかき抱いて涙を流しました。

その後、彼の精神は崩壊し、最期の10年間を看取られながら穏やかに過ごしたと伝えられています。

ニーチェは『ツァラトゥストラ』で次のように述べています。

ニーチェは『ツァラトゥストラ』において「同情」を執拗に批判しましたが、それは彼自身が他者の苦しみに対する感受性が強かっ

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ニーチェ 「人間の存在と目的」

ニーチェ 「人間の存在と目的」

人間とは何か?人生の目的とは何か?は、以下の言葉に集約されています。

人間は、「超人を目指して飛ぶ一本の矢」であるべきだとニーチェは述べています。人間の存在と目的は切り離せません。超人とは、駱駝から獅子、そして子供へと変化を遂げた、新しい価値を創造する無邪気な存在です。

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人間とは乗り超えられるべきあるものである。あなたがたは、人間を乗り超えるために、何をしたか。およそ

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ニーチェ「超人とルフィ/重力の魔と黒ひげ」

ニーチェ「超人とルフィ/重力の魔と黒ひげ」

『ツァラトゥストラ』において「超人」は、道化師、太陽、無邪気な子供、笑う者、踊る神など、様々なイメージで表現されていますが、『ワンピース』のニカ・ルフィは、まさにそのような存在です。「超人」はニカ・ルフィのモチーフの一つになっているのではないかと思います。

その対極にある存在が「重力の魔」であり、暗くて重たい存在です。それはヤミヤミの実の能力者である黒ひげと重なります。ですから、「超人」と「重力

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孤独の教典 『ツァラトゥストラ』

孤独の教典 『ツァラトゥストラ』

ニーチェの『ツァラトゥストラ』は孤独な者や孤独を愛する者の教典です。孤独は不幸ではなく、むしろ自ら進んで選ぶほど価値のあるものです。

『ツァラトゥストラ』を読むことで、孤独の価値に目覚めます。『荘子』に登場する「神人」も孤独の世界で遊んでいました。

あなたも、ニーチェや荘子のように、神聖な孤独の世界に入り、優雅に暮らすことで、超人や神人のような美しい存在に生まれ変わるでしょう。

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ニーチェ「永遠回帰と超人」

ニーチェ「永遠回帰と超人」

『ツァラトゥストラ』がニーチェの主著であり、彼の哲学のすべてが含まれています。この主著のテーマは永遠回帰です。

永遠回帰こそがニーチェ哲学の最重要テーマです。永遠回帰とは、すべてのものが寸分たがわず同一の姿で永遠に回帰することです。同一のことが無限に繰り返されることです。

しかし、その啓示を受けたとき、ニーチェは恐怖を感じました。なぜなら、偉大な者だけでなく、ニーチェが吐き気を催すほど嫌いな「

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ニーチェ「完全な読者の像」

ニーチェ「完全な読者の像」

哲学者は、主に同業者を相手に論文を書いているため、文章が難解なのは仕方がありません。一方で、ニーチェの『ツァラトゥストラ』は万人向けに書かれているため、文章が非常にわかりやすいです。しかし、表現がわかりやすいからといって、ニーチェの真意を理解できるかというと、それはまた別の問題です。ニーチェ自身も「だれでも読めるが、だれにも読めない書物」とサブタイトルに付けています。では、誰がニーチェの著作を理解

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ニーチェ「運命愛と救済」

ニーチェ「運命愛と救済」

ニーチェの哲学は「肯定の哲学」ですが、彼は運命をも肯定します。それが「運命愛」として表現されています。

運命愛とは、文字通り運命を愛することです。過去・現在・未来の出来事は偶然に支配されていますが、意志によって、「わたしがそれを欲した」と捉え直し、必然の出来事に変換します。これにより、運命・偶然に翻弄されることがなくなります。

運命愛は『ツァラトゥストラ』の「三様の変化」と密接に関係しており、

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ニーチェ「不倶戴天の敵」

ニーチェ「不倶戴天の敵」

ニーチェの宿敵であり、不倶戴天の敵であるのは、重力の魔と善人・同情です。

重力の魔は、「最高最大の悪魔」とも言われ、人間の足を下へ、深みへと引きおろすものであり、人生を重く感じさせる霊です。ニーチェは、重力の魔を舞踏と笑いで撃退します。

また、もう一人の敵である善人・同情に対しても、鋭い心理分析を行い、同情を殺す勇気、同情を超えた高みがあることを示します。ニーチェは、同情の克服を高貴な徳の一つ

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ニーチェ「一切は滅びるに値する」

ニーチェ「一切は滅びるに値する」

「我々は、信仰も迷信も持ち合わせていない」と胸を張る現代人の無信仰の主張は、「一切は滅びるに値する」という生や存在の否定に帰結します。

しかし、ニーチェの「神の死」の宣言は、ニヒリズムと結びつくことなく、むしろ生を肯定するものになります。

ニーチェは、「汝なすべし」と義務を強制してくる存在(宗教的な教義、道徳的な規範、社会的な慣習)を否定しただけであり、何でも科学で説明しようとする痩せこけた科

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ニーチェ「嫉妬と復讐」

ニーチェ「嫉妬と復讐」

平等を説く者の心の中には、嫉妬や復讐心、他者を支配したいという欲望が隠れています。プライドが高いことも彼らの特徴の一つです。

ニーチェは嫉妬や復讐と戦った哲学者ですが、彼が追求した「超人」は、嫉妬や復讐心を持つような小さな存在ではなく、他者のどんな大きな幸福であろうとも、妬まずに見ることができる太陽のように大きく豊かな存在です。

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わたしの哲学は、復讐や遺恨の感情と戦闘

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ニーチェ「極限的な肯定」

ニーチェ「極限的な肯定」

ニーチェは、苦悩や罪、過去にあった一切のことに対して「肯定」します。彼はその肯定を「巨大な無際限の肯定」「到達しうるかぎりの最高の肯定」「極限的な肯定」と表現しています。

さらに、「永遠の然り」「何一つ無用なものはない」とも述べています。

しかし、ニーチェの「肯定の哲学」は、すべてのものを肯定するわけではありません。彼は、「よろず満足家」ではなく、選り好みの強い人間です。

また、自分自身およ

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ニーチェ「流転と破壊の哲学」

ニーチェ「流転と破壊の哲学」

ニーチェの哲学は、不変や不動ではなく、変化と運動の哲学です。

彼は氷のように冷たく静止しているものではなく、むしろ太陽のように熱く、自らの力で動く存在を重視しています。

彼は、ヘラクレイトスの流転と破壊を肯定する哲学、そして生成の哲学に最も共感していました。

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唯一なもの、豊かなるもの、動かないもの、満ち足りたもの、移ろいゆかざるものについての目眩病の如き教えの総てを

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