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全部、音楽ストリーミングのせいだ!


最近、音楽聴かなくなった。



おはようございます。

大阪在住のソロミュージシャン、toyono in the eveningです。

スタイルはlivelooping artist。

ジャンルはhiphopからアフロビーツまで幅広くやっております。


楽器を弾いたり、作曲したり、機材をいじるのも好きだけど、

もとより音楽を聴いて踊ったり、仲間と共有したり、

1人で音楽に浸る時間が大好きだ。


でも、最近音楽を聴かなくなった。


僕らは、CDからデジタルストリーミングへ移行していった時代に生きていた。

小学校の頃はオレンジレンジのCDを

教室にあったオーディオでかけてみんなで歌い、

中学校はipodやウォークマンでBUMP OF CHICKENを聴き

高校はみんなでiPhoneのyoutubeでAKB48を見て踊る。


そんな世代。


僕が人生初めて、自分の意思で欲しいと言って買ってもらったCDは、

「僕たちの洋楽ヒットvol.12」というオムニバスCDだった。



なぜこのCDをねだったのかは忘れてしまったが、このアルバムの中でも

「クリストファークロスのニューヨークシティーセレナーデ」が一番好きだった。



ニューヨークになんか行ったことないが、

小学生ながらニューヨークシティーを連想させる美しい曲で感動した。


小学校の4年生ぐらいの時、僕は異様にウォークマンに憧れがあった。

音楽を自由に外で聴きたいという欲望から

ニンテンドーDSのゲーム内にあるサントラコーナーをイヤフォンで聴き、

自転車を走らせていた。

それでもお気に入りのCDを外で聴きたいが為に、

親におねだりして3000円のCDウォークマンを買ってもらったが

安い物なので音飛びがひどく、すぐに壊れてしまった。


小6の卒業記念でようやくソニーのウォークマンを買ってもらった。

本当はiPod nanoが欲しかったが

当時はパソコンを持っていなかった為

CDコンポから録音して入れることのできるソニーのウォークマンにした。

それでも自分にとって、

ポケットに入るサイズというのは革命的で、

とにかく音楽を入れまくった。

そしてすぐに容量が埋まってしまった。
(当時おそらく32GBぐらい)


当時の僕の音楽の楽しみ方は、とにかく「妄想する」ことだった。

例えば「この曲はこのアニメのオープニングでこんな感じだな、、、」

のように、音楽を聴いて妄想で脳内MVを作る。

一人っ子なので、みんなで聞いて楽しむというより、

音楽で自分の世界に浸るのが好きだった。


それと、音楽は僕にとって「旅のお供」だ。

「この曲聴いたら、あの頃思い出すな〜」という人は少なくないだろう。

僕はその逆で

「この曲を思い出の曲にしたいから、

旅行のこのタイミングで絶対この曲聴くぞ!」という事をしていた。


例えば、旅行で早朝に出る時は必ず

「Def Techのインスト曲」を聴いていた。



朝焼け、街の人がまだ外に出てない特別な時間に、

コンビニで朝ご飯を買って旅に出る時に

この曲を聴くのが堪らなく好きだった.。


また、都会の夕暮れ時、電車から眺める夕焼けの街、

このタイミングでは一番自分が今季一推しの曲を聴くようにしていた。

ある意味「夕方の豊野」の所以でもある。


それぐらい、「音楽を聴く」ということが自分にとって重要であり、大切な儀式であった。


また、音楽は僕にたくさんの勇気をくれた。


高校の時の大学受験はほんとうに気が滅入っていて、

やりたくもない受験勉強が本当に苦痛だった。

でも人生が決まるこの時期は、ほとんどの娯楽を我慢していたが唯一、

音楽だけが僕の娯楽だった。

そしてやる気を鼓舞する為にいつもこのアルバムを聴いていた。



そして僕は
無事に大学に落ちた。


普通の大学は諦めて音響の専門学校に行った時は初めての一人暮らし、

孤独も音楽がカバーしてくれた。

そんなこんなで就職した一年目に

ついに音楽ストリーミングサイトが出てきた。


僕が最初に使っていたのは「AWA」というアプリで

その時に流行っていたEDMを聴きまくっていた。



ストリーミングサイトの登場は僕のライフスタイルを変えた。


まず、レンタルショップやCDショップに行かなくなった。

近所のTSUTAYAを重宝していたがサッパリ行かなくなった。

無論、CDを買わなくなった。

CDを利用しないからあのゆっくりと歌詞カードを見るというのもなくなった。

音楽雑誌も読まなくなった。

音楽雑誌を見て良さげなアーティストをメモしていたがそれも無くなった。

音楽プレイリストも作らなくなった。

かつてはこれを作るのが楽しかったが、

次から次へと新しくダウンロードするので、

プレイリストにまとめる以前に追いつかなくなった。


ミュージシャンとしてのやり方も大きく変わった。

tunecoreの登場だ。


音楽レーベルに入っていなくても、パソコン一つで登録すれば

全世界にSpotifyやApple musicなどに配信可能になる。

僕は早速、自分のアルバムを登録した。


著名なアーティスト達と肩を並べてるようで、ちょっと誇らしかった。

しかしそれは、音楽ストリーミングというインターネットの大海に

釣竿一本垂らしたことにすぎなかったのである。


聴くところによると現在ストリーミングサイトに登録されている楽曲は一億曲、

そのうちの半分以上が0再生の状態だという。

僕も正直、ストリーミングサイトでの戦略は苦戦を強いられている。

ストリーミングで成功しているアーティストは、

元々著名なアーティストかもしくはリスナーに飽きられないよう

ひっきりなしに曲をリリースしてsnsで宣伝してインスタ配信してファンと交流して現場でもライブしてsnsで宣伝してまた曲リリースして、、、


という、従来の倍以上のスピード感で活動している。


もちろん僕もこれに習ってやってみようとしたが、

1人でやるのはものすごい疲弊する。

ひたすら壁打ちしている気分だった。


高校の時はsnsなんてしなくても、友達誘ったらみんなライブに来てくれたし、

CDもリリースしたらたくさん買ってくれた。

ライブに普通に20人くらい集めれたのに今は20人集まれば奇跡だ。

それでも宣伝してライブしてリリースして宣伝して、、、。


他のアーティストのやり方を見ると、まるでアイドルのようなやり方をしていた。

バンドマンがチェキを500円で売って活動費にしているのを見て僕は絶句した。


youtuberのやり方を真似てるアーティストもたくさんいる。

いや君たちはアーティストであって配信者じゃないじゃん、、、。

でもなんだかんだ楽しそうなので、真似てみるが、そう簡単には行かない。

そうこうしているうちに、音楽の本質を忘れてしまいそうで、疲弊して

結局、私は音楽シーンから距離を置いたのだった。

音楽との向き合い方を少し、考え直したかった。



そんなあるとき、須磨にある展望台公園に遊びに行った時、

ジュークボックスに出会った。



まだ現役で使えて、50円で一曲レコードを再生してくれる。

月額980円で数百万曲聴き放題のこの時代に

一曲50円で聴くというのは割高に思うかもしれないし、

ジュークボックスはレコードが中に入っているので

だいたい30曲ぐらいだけ聴ける、

というのはいささかオールドスタイルに思えるだろう。


へぇ〜と眺めていると

知らないおじいさんがやってきて

「これでなんか曲かけて」と100円渡してくれた。

そして僕がかけたのはあの、

「クリストファークロスのニューヨークシティーセレナーデ」だった。

初めてレコード盤で聴くこの曲は本当に美しく、

レコードなので音に厚みがあり、とても生々しい。

レコードが唯一無二のサウンドである理由がよくわかる。

そこに興味を持ったいろんな人達が集まってくる。

子供も大人も、同じ空間で一つの音楽を楽しんでいる。


これは、なんて贅沢な時間なんだと思った。

僕はその時、初めてCDを買ってもらい、

部屋のコンポでじっくり

「ニューヨークシティーセレナーデ」を聴いていた頃を思い出した。



ストリーミングサイトは確かに便利だし、世界中のいろんな音楽を聴けて、

世界中の人々に自分の音楽も聴いてもらえるチャンスがある利点がある。


しかしそれは大量消費と大量生産によって、

音楽というものをインスタントなものにしてしまった。


利用している我々が自ら、音楽を価値の薄いものにしてしまったのかもしれない。


僕は常に考えている。



どうすれば自分の音楽の価値を高めることができるのか。


世の中の流れやシステムは、もう元には戻らない。


今更CDはもう売れない。

ただ、”音楽の価値を信じる”ことは出来る。

自ら。


それをあのジュークボックスが教えてくれた。


僕はそれを信じて、音楽を作り続ける。



僕の曲はきっと、この想いがあなたにも伝わるはずだ。



Toyono in the evening  
new album 「wa!!」



おわり

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