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ボクが。キミを。好きになったワケ。それはね。えぇっと。あれっ。何だっけ。【謎】

ボクは、なぜ、好きになったのだろう。


誰かを好きになる。
いつの間にか、その人を目で追っている。

誰にでも分け隔てなく接してくれる、キミの優しさ。
ちょっと照れくさそうにハニカム、キミの笑顔。
歩いた廊下にかすかに残る、甘く華やかな、キミの香り。

あぁ。愛おしい。
キミのことばかりを想ってしまう。

ボクも。
そんな。
恋を・・・

うぅっ。

キミの臭いがするよ。

そう。

歩いた廊下にしっかり残る、汗と制汗剤が混ざった、異臭だ。


「いやぁ~。夏も終わったっていうのに、まだまだ暑いですな」
お調子者のケントが、下敷きを扇いでいた。

「たしかに、暑いな。」
自分探しにはまっているタケルが、袖をまくっていた。

「ちょっと前までは、涼しかったんだけど、急に暑くなったね。」

「それな!」

「健康管理には気を付けなければならないな。季節の変わり目というのは、体調を崩しやすくなってしまうものだ。そもそも、なぜ体調を崩すのか。それは、過ごしやすいがゆえに、我々の心に、少なからず、油断をもたらしてしまうのではないだろうか。そして、その油断に・・・」
自分探しのタケルは、季節の移り変わりと、体調について語っていた。

「それもそうかもね。」

「健康管理と言ったら!栄養と睡眠だ!っと言うワケで、弁当でも食おうぜ」

「そうだね。もうお昼休みだしね。」

「それもそうだな」

ボクらは弁当を広げる。

「相変わらず、お前の弁当は美味そうだな。」

「ケントの弁当も美味しいそうだよ。」

「だろ!これがうめぇんだ!」

「タケルのも、シンプルで美味しそうだね。」

「ありがとう。」

ボクらは、互いの弁当を見合う。

どれも、美味しそうだ。

「それじゃあ!食うか!」

「うん」

「そうしよう」

「合掌!いただきます!」

「うるさいよ」

「ワリィ。ワリィ。ついテンションが上がってしまって。」

「どうして」

「テンション。アゲ。アゲ。なんだん・・・アゲアゲなんばん。」

「アゲアゲなんばん?」

「そう。オレの弁当に、チキン南蛮が入っているんだ。」

「ごめん。ダメだわ。それは。」

「いけると思ったんだけどなぁ」

「お前の『いける』の基準を、見直す必要があるな」

「オレの『いける』の基準はない。」

「ないだと」

「思ったことを言う。そして、お前に判断してもらう。そこで、始めて基準が生まれる」

「人任せだな。」

「お前というタルタルソースが、オレを最高の一品にしてくれるのさ。」

「お前と混じったところで、最低の一品になりそうだけどね」

「まだまだ、名古屋コーチンには到底及ばないが、なるよ。オレ。立派なコーチンに。」

「まぁ。がんばれ。お前が立派なコーチンになるころには、タルタルソースの酸味は、計り知れないものになっているだろうけどね」

「ガハハ!それな!腹減った。とりあえず、実食!」

「だね。」

「うめぇ!まじで、うめぇわ!」

「口に含んだまま、しゃべるなよ。飛んでくるだろう。コーチンが」

「ゴホッ。ゴホッ。ワリィ。あまりにも美味くて」

「机に飛んでるよ。」


なんて汚い食べ方だ。

何度も言った、口いっぱい含んだまましゃべるなと。
何度も言った、それはいけないわと。
何度も見た、ガハハと笑う下品でうるさい顔を。

そこに、

ちょっと照れ臭そうにハニカム姿もなければ
腹を抱えて笑わせてくれるギャグもなければ
優しさに満ち溢れた慈悲深さがあるわけでもない。

いつも適当なことを言って、
品のない笑い声で、
どこまでも滑っていきそうなギャグばかり。

分からない。

なぜ。こいつと一緒にいるんだろう。

好きとは。

難しいものだな。

だけど。

好きなんだろな。

言葉ではうまく言えないけど。

コイツの品のない笑いが、ボクのモヤモヤをガハハと一緒に吹き飛ばすように
コイツの適当さが、深く落ち込みそうになるボクを軽くするように
コイツのスベリが、、、

まだ

言葉ではうまく言えないけど。

それでも

好きなんだ。


口にタルタルソースをつけたコーチン。

「名古屋はほど遠いな。」

ちょっとすっぱくて

ちょっと甘い香りがした。

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