MADE IN DAGASHIYA【10円の体】
「相変わらず、うめぇ」
今日も、ボクらは、河原に寝転がる。
いつも悩みは尽きないけれど
いつも不安は消えないけれど
ここに来れば、少しだけ気持ちが楽になる。
コイツらと、10円の駄菓子があれば。
「今回のテスト。赤点だったヤツは補修だからな。あと、再テストが合格するまで、ずっと補修なので、早く合格するように。以上。」
ボクは自分の答案用紙を、改めて確認する。
補修だ。
「いやぁ~。今回はイケると思ったんだけどなぁ」
お調子者のケントが、やってきた。
「ワタシに、補修をしている時間などありはしない」
自分探しにハマっているタケルも、現れた。
「マジで今回はイケると思ったんだ。降りて来たんだよ。テストの神様が!『答えはこれだ』って。くそぉ~、こんなことなら、最初から正答率67%の、39代目鉛筆丸に任せるべきだったわ」
どうやら、コイツには、勉強をするという考えが欠如しているらしい。
まぁ、補修のボクが言うのもなんだけど。
「お前らはそれで良いのか。ワタシたちの時間はこうしているうちにも、刻一刻と過ぎていくんだぞ。ムダなテストを受ける時間が、残されているのだろうか。そもそも、このテストは何を・・・」
人生やらテストやら、タケルは自分の考えに迷走中だ。
「無限補修になっちゃうよぉ」
「さすがに、それはイヤだな。まぁ、次のテストで受かればいいんだし、復習すれば、大丈夫でしょ。とにかく、間違った箇所を見直して、勉強するか」
「それもそうだな。まぁ、間違った箇所がほとんどだけどな。」
なぜだか得意げな表情のケント。
そうして放課後、ボクたちは勉強することになった。
「ダメだぁ。集中切れたぁ~」
早くも、ケントがギブアップのようだ。
勉強を始めて、30分も経っていないというのに。
「ちょっと息抜きが必要じゃね?」
「いやぁ、息抜きも何も、まだ30分も経ってないぞ」
「大切なのは時間じゃない!質だ!」
「お前の場合、その質も問題なのだが」
「エネルギーが足りない!燃料タンクが空っぽなんだ!」
「その燃料は、どこで手に入るんだよ」
「駄菓子屋に行こうぜ!」
「またか。。。しゃーない、行くか。」
勉強を中断し、いつもの駄菓子屋へ行くことにした。
ボクは、ここが大好きだ。
どこか懐かしくて、何だか落ち着く場所。
色とりどりの駄菓子たち。
どの駄菓子も、思わずハマってしまう味。
そしてなにより、10円というとんでもない値段。
こんなに安くて、本当に大丈夫なのだろうか?
何度そう思ったことか。
そして、何度尋ねただろう。
「これ、本当に10円ですか?」
「10円だよ」
こんなやり取りを何回もした。
今では、行きつけになっている。
そして今日も、好きな駄菓子を買って、近くの河原で一休み。
もしかすると、学校の次に、駄菓子屋に通っているかもしれない。
そして、この河原は、ボクらの憩いの場所になっている。
そんなことを思いながら、駄菓子の袋を開ける。
何てたまらない香りなんだ。
1つ口にいれる。
本当に美味い。
「エネルギー補給!エネルギー補給!10円チャージ」
どうやら、ケントのエネルギーは補給されたらしい。
たしかに、コイツの言うことも、あながち間違っていない。
「いやぁ~。やっぱりここに来てよかったわ~。おかげで、エネルギーも補給できた!」
「確かに、そうだな。」
「いやぁ~。駄菓子って偉大だよな。」
「何が?」
「だってさぁ、駄菓子食うと、元気出るじゃん。」
「だな」
「しかも、10円なんだぜ」
「すごいよな」
「オレたちって、10円で出来てるんだな!フフッ」
面白いことを言うもんだ。
コイツの言うことは、たまに考えさせられる。
この河原に何度寝そべったことだろう。
それは、イライラした時だったかもしれない。
それは、ムカムカした時だったかもしれない。
それは、ウキウキした時だったかもしれない。
その時、隣にいたのは、コイツらだった。
そして、ボクの右手には、10円の駄菓子。
たったそれだけで、その日が楽しいものになっていた。
ボクのエネルギーもここにあったんだ。
それは、体だけでは、ないのかもしれない。
もしかすると、心のエネルギーも、一緒に補給されていたのかもしれない。
そう、ボクの体は、10円で出来ている。
今日も、ボクらは駄菓子を片手に、河原に寝転がる。
足りなくなったエネルギーを補給するために。
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