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約束だからね。絶対だよ。キミのことを。ボクは。信じてるから。【裏切り者】

どいつもこいつも、裏切り者だ。


約束なんてもんは、信じたほうが負けである。
ヒトは、平気で嘘をつく。
何食わぬ顔で。さも当然のごとく。

そんな悲しいことを言いたくはない。

しかし、どれだけ破られてきたことだろうか。

今も、どこかで、ビリビリと破れる音が聞こえてくる。
なんと残酷な響きだ。

そこに残るのは、つぎはぎだらけの関係。
バラバラになったモノを、拾い集め、修復しようとしても、元通りにはならない。
いくらキレイごとを並べても、破れた痕は、クッキリと残っていて、目を背けたくなる。

ボクの足元にも、散らばっている。
約束の破片たちが。

もう。何も。感じない。
もう。直す気持ちも。起きない。
もう。裏切りには。慣れているのだから。


「この前、貸した本って、持ってきた?」
ボクは、尋ねる。

「やべぇ!ワリィ。ワリィ。明日こそ、持ってくるわ」
お調子者のケントが、そう答える。

「いつになったら、返ってくるのだろうな、ケントに貸したその本は」
自分探しにハマっているタケルが、『コイツは、まったく』という顔つきで、笑みを浮かべていた。

「ホント、約束をなんだと思ってるんだか」

「ごめん!ごめん!この借りは、必ず返すよ!」

「べつにいいんだけどね。そんな大したことじゃないし。」

「ワリィな。」
ケントは『テヘッ』と舌を出した。

そう。コイツは、裏切り者だ。

いったい、どれほど約束を破られたことだろうか。
いったい、どれほどコイツのおどけた顔を見たことだろうか。

でも、ボクは、そんなことは気にしない。
だって、裏切りには、慣れているから。
もう。何も。感じないから。


ピロン。

「今、何してる?」

ボクらで作成したグループ。
投稿したのは、ケントだ。

「ワタシは、今、夜風を感じているところだよ」
タケルは、夜を満喫しているらしい。

「親と話してた。テストの点数がどうとか。あなたの将来がどうとか。イヤになるよ。まったく」

「それな!テストだけで、オレたちを測ってもらっては困る!」

「ケントの言うとおりだな」

「だよね。ちょっとだけ、イライラしちゃった。色々と毒を吐きそうだから、今日は、1人で、おとなしく、散歩でもするよ。ボクのことは、気にしなくていいからね」

「夜の道は危険です!子ども一人で出歩いちゃいけません!」

「もう、ボクらが、危険視される側かもしれないけどね」

「言えてるな。」

「ありがとう。少しだけ。楽になったよ。じゃあ。ボクは。散歩してくる」

「おう!あまり歩きすぎるなよ!」

「どうして」

「だって、お前のステータスって『毒』だろ。歩くたびに、画面がガンガン揺れるわけだ」

「何を言ってるんだか。まぁ。毒ステータスなのは、あってるかもね。その毒を移さないためにも、ボクは、おいとまするよ。ボクに近づくんじゃないぞ~。絶対になぁ~。さもないと、移してしまうぞぉ~」

「オレは、大丈夫だ!毒耐性を会得してるからな。散歩中に毒消し草が生えているといいな」

「毒消し草か。。。食ったら毒だけじゃすまなくなりそうだけど、まぁ、探してみるよ」

「おう!」

ボクは、散歩に出かけた。

風が心地よくて、少しだけ、気持ちが落ち着く。

毒ステータスのせいで、少し、フラフラするけど。

『あぁ。落ちてないかな。』

『毒消し草は。』

どれぐらい。歩いただろう。

結構、足がクタクタだ。

見つかるはずがない。

毒消し草なんて。

『そろそろ、帰るか。』

きた道を、引き返そうとした時

「おぉ~い」

声が聞こえる。

ボクは、ジッと目を凝らす。

そこには、二つの明かりが見える。

夜のせいで、光以外はぼやけている。

どんどん、その輝きは大きくなって、ボクの顔を照らす。

あまりの眩しさに、ボクは手を顔にあてた。

その手に。何か。ゴツゴツした感触があった。

「はい!この前、借りた本!」


どいつもこいつも、裏切り者だ。

もう。何も。感じないし。
もう。裏切りには。慣れているし。

もう。

『もう・・・なんで今かな』

約束したんだ。
お前らに毒を移すから
1人にしてと。

なのに、どうして、こんなにも、画面がにじむのだろう。

あぁ。


ようやく

見つかったよ。

毒消し草が。


いつ貸したか分からない本を抱えながら

「約束をなんだと思ってるんだか」

少しだけ、毒をはいた。


移るだろうか。


移るといいな。


ボクの幸せが。

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