![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60979469/rectangle_large_type_2_d4f9248820aaeb8cb69c8f14556cf7f6.png?width=800)
約束だからね。絶対だよ。キミのことを。ボクは。信じてるから。【裏切り者】
どいつもこいつも、裏切り者だ。
約束なんてもんは、信じたほうが負けである。
ヒトは、平気で嘘をつく。
何食わぬ顔で。さも当然のごとく。
そんな悲しいことを言いたくはない。
しかし、どれだけ破られてきたことだろうか。
今も、どこかで、ビリビリと破れる音が聞こえてくる。
なんと残酷な響きだ。
そこに残るのは、つぎはぎだらけの関係。
バラバラになったモノを、拾い集め、修復しようとしても、元通りにはならない。
いくらキレイごとを並べても、破れた痕は、クッキリと残っていて、目を背けたくなる。
ボクの足元にも、散らばっている。
約束の破片たちが。
もう。何も。感じない。
もう。直す気持ちも。起きない。
もう。裏切りには。慣れているのだから。
「この前、貸した本って、持ってきた?」
ボクは、尋ねる。
「やべぇ!ワリィ。ワリィ。明日こそ、持ってくるわ」
お調子者のケントが、そう答える。
「いつになったら、返ってくるのだろうな、ケントに貸したその本は」
自分探しにハマっているタケルが、『コイツは、まったく』という顔つきで、笑みを浮かべていた。
「ホント、約束をなんだと思ってるんだか」
「ごめん!ごめん!この借りは、必ず返すよ!」
「べつにいいんだけどね。そんな大したことじゃないし。」
「ワリィな。」
ケントは『テヘッ』と舌を出した。
そう。コイツは、裏切り者だ。
いったい、どれほど約束を破られたことだろうか。
いったい、どれほどコイツのおどけた顔を見たことだろうか。
でも、ボクは、そんなことは気にしない。
だって、裏切りには、慣れているから。
もう。何も。感じないから。
ピロン。
「今、何してる?」
ボクらで作成したグループ。
投稿したのは、ケントだ。
「ワタシは、今、夜風を感じているところだよ」
タケルは、夜を満喫しているらしい。
「親と話してた。テストの点数がどうとか。あなたの将来がどうとか。イヤになるよ。まったく」
「それな!テストだけで、オレたちを測ってもらっては困る!」
「ケントの言うとおりだな」
「だよね。ちょっとだけ、イライラしちゃった。色々と毒を吐きそうだから、今日は、1人で、おとなしく、散歩でもするよ。ボクのことは、気にしなくていいからね」
「夜の道は危険です!子ども一人で出歩いちゃいけません!」
「もう、ボクらが、危険視される側かもしれないけどね」
「言えてるな。」
「ありがとう。少しだけ。楽になったよ。じゃあ。ボクは。散歩してくる」
「おう!あまり歩きすぎるなよ!」
「どうして」
「だって、お前のステータスって『毒』だろ。歩くたびに、画面がガンガン揺れるわけだ」
「何を言ってるんだか。まぁ。毒ステータスなのは、あってるかもね。その毒を移さないためにも、ボクは、おいとまするよ。ボクに近づくんじゃないぞ~。絶対になぁ~。さもないと、移してしまうぞぉ~」
「オレは、大丈夫だ!毒耐性を会得してるからな。散歩中に毒消し草が生えているといいな」
「毒消し草か。。。食ったら毒だけじゃすまなくなりそうだけど、まぁ、探してみるよ」
「おう!」
ボクは、散歩に出かけた。
風が心地よくて、少しだけ、気持ちが落ち着く。
毒ステータスのせいで、少し、フラフラするけど。
『あぁ。落ちてないかな。』
『毒消し草は。』
どれぐらい。歩いただろう。
結構、足がクタクタだ。
見つかるはずがない。
毒消し草なんて。
『そろそろ、帰るか。』
きた道を、引き返そうとした時
「おぉ~い」
声が聞こえる。
ボクは、ジッと目を凝らす。
そこには、二つの明かりが見える。
夜のせいで、光以外はぼやけている。
どんどん、その輝きは大きくなって、ボクの顔を照らす。
あまりの眩しさに、ボクは手を顔にあてた。
その手に。何か。ゴツゴツした感触があった。
「はい!この前、借りた本!」
どいつもこいつも、裏切り者だ。
もう。何も。感じないし。
もう。裏切りには。慣れているし。
もう。
『もう・・・なんで今かな』
約束したんだ。
お前らに毒を移すから
1人にしてと。
なのに、どうして、こんなにも、画面がにじむのだろう。
あぁ。
ようやく
見つかったよ。
毒消し草が。
いつ貸したか分からない本を抱えながら
「約束をなんだと思ってるんだか」
少しだけ、毒をはいた。
移るだろうか。
移るといいな。
ボクの幸せが。
あなたの「クスリ」が見たい。 はい。自己満足です。 頂いたサポートは、ニヤニヤしながら喜びます。 そして、「クスリ」を探すために使います。