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キミと共に。歩みたい。どこまでも。ずっと。キミの温もりを。感じていたい。【崩壊】

完璧に見えたボクらは、いとも簡単に、崩れ去ってしまった。


人間関係というものは、すぐにボロが出るものである。
とっさの出来事が起きた時、その人の本性が現れる。

そんなことを言っているボクも、その内の1人。
表面上は良い人を装って、危機が迫ったら、我先に逃げてしまう臆病者である。
相手のためと言って、本当は自分を守りたいだけの卑怯者だ。

口では、いくらでもキレイごとを言える。
身なりだけは、いくらでも整えることが出来る。
笑顔だけは、いくらでも作ることが出来る。

だから、すぐに、崩れ去ってしまうんだ。
足元から。一瞬にして。


「おぉ~い。こっち!こっち!」
お調子者のケントが、大きく手を振っている。

「はらゆう。急ごう。みんな集まっているようだ。」
自分探しにハマっているタケルが、少し早足になる。

「よぉ~し。みんな集まったな。それでは、これから始めていきたいと思うので、各人、準備をすること。何か、分からないことがあったら、先生に聞くこと。以上。」

「いよいよだな。」
ケントは、真剣なまなざしだ。

「今までのワタシたちのままでは、ダメだろうな。ワタシたちに求められるのは、一体なんであろうか。これまで色々なことを共に分かち合ってきた。つらいこともあっただろう。苦しいこともあっただろう。そんなワタシたちだから・・・」
自分探しのタケルは、これまでの過去を振り返っていた。

「たしかに、オレたちのこれまでが試されるってわけだ」

「ボクたちのこれまでか・・・なんか、ロクな記憶がないんだけど」

「ワタシも、あまり良い記憶が思い出せずにいるよ。」

「お前ら!思い出すんだ!あの日の夜を!!」

「あの日の夜??」

「ぬ~すんだ バイクで走り出す~行き~先も~解らぬまま~」

「お前は、盗んではいけないモノを盗んでいるよ。バイクよりも重罪だわ」

「とにかく!いろいろあったんだ!オレたちには」

「まぁ。いろいろはあったな。」

「だろ!それを、今、見せる時なんだ。オレたち3人の絆を」

「絆とか言うと、ちょっと恥ずいな」

「恥ずかしがるな!友よ。そして、一緒に歩もうではないか!」

「分かったよ」

ボクらの絆。

3人。肩を合わせる。
なんともデコボコで
なんともアンバランスな組み合わせだ。

こうやって並んでみて、改めて実感する。

ぼくらは、本当にバラバラなんだってことが。

「ぼさっとするなよ」
ケントが、最終チェックをしているようだ。

「ごめん。ごめん。」
ボクも、慌てて確認する。

「これぐらいでよいだろう。」
タケルは、確認が終わったようだ。

「ちょっと、きつくない?」

「まぁ。ちょうどいいんじゃないか。少しきついぐらいが。」

「それもそうだね」

「よぉ~し。準備はできたか?」
先生の声がする。

「はぁ~い」
「こっちも大丈夫です。」

あちこちから、返事が聞こえる。

そして、ボクらも

「オレたちも、大丈夫で~す」

「OK。それなら。始めるぞ!」

ボクらは、互いの顔を見る。

試される時だ。
これまでのことが。
本当かどうか。

「緊張してるのか」
ケントが、優しく声をかけてくる。

「ちょっとね」

「ワタシも少しだけ」

「実を言うと。オレもなんだ」

「なんだ。お前もか。」

「だって、そうだろ。オレたちが、肩を合わせて、一緒にいるなんて。」

「たしかに、なんか変だね」

「でも、大丈夫さ。オレたちなら。」

「そうだといいけどね」

少しだけ、緊張が和らいだ気がした。

「『せぇ~の』で、合わせよう。慌てずに。一歩ずつ。声に出して」

「うん」

息を整える。

コイツらの体温を、ボクは感じていた。
コイツらの呼吸を、ボクは感じていた。
コイツらの鼓動を、ボクは感じていた。

コイツらと、1つになった気がした。

『いける。コイツらとなら!』

パン!

「せぇ~の!」

ボクらは、踏み出した。

「うぉっと。ちょいまち。やべぇ~」

そして、ボクらは、一斉に崩れ去った。

「痛ってぇ~」

ボクらはみな、地面に転がる。

「足首、チョー痛いんだけど」

「きつく結びすぎたな」

1つになんかなれやしなかった。

ボクらは

バラバラで

息も

全然合わなくて

性格も

まるっきり違くて

何もかもが

ボクと異なって

何もかもが

今までのボクを

変えてくれていた

ボクは

初めて

守りたいモノが出来たのかもしれない。

コイツらの笑顔を

逃げ出しそうになっても

ボクに出来るなら

守りたい

臆病は消えてないけど


強く結ばれた紐をさすりながら、ぽつりと呟いた。

「固く結びすぎじゃない」

ボクらの絆には、少し劣るかな。

そんなことを。思ったり。思わなかったり。


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