あれから何日経っただろうか。 私は1人、車を運転して移動しながら そういえば と、大夫の事を思い出していた。 あの、レイさんが見せてくれた石の煌めきを脳裏に浮かべたり、 大夫はどうしているかな、などと、1人考えていた。 すると。 急に口の辺りに力が入り、モゴモゴとする。 これは…何者かが、私の口を使おうとしている感覚だ。 私は大夫の事を考えるのを止め、その何者かに口を動かす許可を出す。 途端に、 『オレはすごく良いよ』 と動いた。 すごく良
誰かに危害を加えるのには それなりの理由がある事が多い。 そしてその理由が “寂しさ”だったり“哀しみ”だったり“怒り”だったりする。 それを人は、“負の感情”と呼んだり “マイナスエネルギー”と呼んだりするのだが しかし結局は そういう想いを抱えるだけの、何らかの出来事が過去にあったのだ。 そこを見ずして、ただ相手を非難する事など、誰でも出来る容易いこと。 しかし、裏側の成り立ち(理由)があることを識ってしまったからには そこから目を背ける事
会話を重ねているうちに、大夫(たゆう)は少しずつ心を開いてきているようだった。 「俺がね、その石の持ち主に何かを言ったりすることは出来ないんだけど レイさんには、君のお願いを伝えることは出来るよ」 と、話すアキの言葉を静かに聞いて、 『本当…?』 と、小さい声で言った。 アキは、うん、と返事をして、 「君が、安心してあそこに居られるように、レイさんが何か出来ることはあるかな?」 と言うと、大夫の中に、少しばかりの喜びの感情が芽生えたようだった。 …し
「大夫(たゆう)が、安心してそこに居られるようになる為には、どうしたら良いのかな?」 アキのその言葉を聞いて… ぽかん、と開けた私の口がしばらくして、ようやく あ、あ、あう、あう、 と何かを言いたそうに動いた。 私の胸の中には、寂しさと哀しみがいっぱいに溢れ出して 目から涙が溢れてきた。 これは、私の感情ではないし 泣いているのも、私ではない。 分かっているからこそ、私はあえてそのままにして、大夫に口を貸し続ける。 『と…とっても、小さい…頃には…
「ねぇ、十花(とうか)を呼んでも良い?」 横開きの扉がガラガラと開いたかと思うと、アキが私の方を見てそう言った。 「別に良いけど…どうしたの?」 私が尋ねると、 「聞きたい事があるんだよ」 と、言いながら部屋に入ってきて、私の向かいに胡座をかいて座った。 “十花(とうか)”は、エネルギー体で存在しているモノ…いわゆる私たち人間の“目には見えない存在”である。 私のこの、特殊能力である“口貸し”が発現してから後に、私たちのところに来て、私たちと一緒にいたい
私はYouTubeを愛用している。 あれには、無償で様々な情報がギッシリ詰まっている。 内容は、ピンキリ。 数多の動画の中から、“本物”を見つけるのはとても楽しい。 動画の中に込められている“モノ(エネルギー)”を、感じ取るのも楽しい。 だからといって、私が発見したものや、私が受け取ったモノを公に発信することに、私はあまり興味がない。 いや、昔はあった。 私の受け取ったものや、私が感じたもの、そして発見したもの。 数年前までの長い間、そういったものをSNSに
不意に 目が覚める。 そして私の口が動き出し、 …まただ。 と私は思う。 その口の動きはとても滑らかで、ハッキリと話すけれども、何を言っていたのか、私はすぐに忘れてしまう。 ここ最近、この存在はこうやって、毎朝のようにやって来ては何かを少しだけ話して、居なくなる。 それで私は、目が覚めてしまう。 部屋の中は薄っすらと明るい。 外はもう、太陽が登り始めているのだろう。 隣ではアキが、寝息を立てているので、まだ時間が早いのだと分かる。 この存在はとても
目の前にある小さい滝が、音を立てて水飛沫を激しくあげている。 前日まで雨が降り続いたため、ずいぶんと勢いよく水が流れ落ちてくるせいだ。 何日ぶりの晴天。 木々が風で揺れるたび、漏れてくる陽の光が滝の水に反射して、綺麗な小さい虹を作り出していた。 「気持ち良いねぇ」 それを見ながら、私は無意識にそんな言葉を口にしていた。 空気が、寒くもなく、暑くもない。 こんな気温がずっと続けば良いのに…。 もう1ヶ月も経てばくるであろう、真夏の暑さを予想して、つい、そんな
2016年11月。私はスピリチュアル活動をされている、とある方のセッションを受けました。 その際に「アメノミナカヌシ」様(日本の神様)が、◯◯神社へ行って、祝詞をあげて欲しいって」と言われました。 私はスピリチュアルが好きですし、性格も単純なので、ハイハイ良いですよ、と、面白半分に言われた神社へ行き、言われた祝詞をあげました。 するとその夜から、急に奇妙な能力が、発現したんです。 その能力とは、まるでイタコのように口が勝手に動いて喋る、というもの。(口を、見えない
そしてその夜 私は夢を見た。 小さな光る人型の者たちが、横に幾人か並んでいる。 それらは両腕を、前にいっぱいに伸ばしていて、その手の先からは光が溢れ出ていた。 まるでみんなでそうやって、光の壁を作っているようだ。 それを見て 私は思っていた。 ああ、これは、我が家に来るあの子たち(エネルギー体たち)が アキのお腹の穴を塞いでくれているのだ と。 これで塞がったー。 これで、大丈夫ー。 夢の中で、そんな言葉が響いていた。 * 「生き霊、どうやらあの
その日。 私はアキと2人で、パソコンの前に並んで座っていた。 目の前の画面には、映像が3カットに分かれていて、上下にバランス良く、きちんと並んで映し出されている。 そのうちの1つは、私とアキだ。 「それで?お腹具合は治ったの?」 画面の向こうの女性が話しかけた。 「一応…あの後、すぐ治ったんだけど…」 アキはその女性に、そう答えた。 先日の、アキに憑いていた“生き霊”の話だ。 「それ、誰だろうねぇ? 話からすると、 私たちの知ってる人みたいだけど…
今日もとにかく賑やかである。 アキと一緒にいる時間になると、アイツらは次から次へと話しかけてくる。 もちろん、アイツらは私の口を使って喋るし、その相手をするのは私のパートナーのアキだ。 まともに話があるヤツはほとんどいない。 ただ、私たちと“関わりたい”とやって来るヤツばかりだから 私たちにとってはどうでもよい情報ばかり話しては、『じゃあねー』と言って、さっさといなくなってしまう。 だが、そんな中 『知らない人がいるー』 急に、そう言い出した者がいた。
ふ と、うたた寝から目覚める。 威圧されるほどの、大きな気配を感じた。 何か、来た。 私がそう思った途端に みしり と、部屋の東西の壁が軋み、音を立てた。 気圧が変わって、耳鳴りが始まる。 『なんとまあ、狭い所に住んでるな』 その耳鳴りが次第に治ってくると、今度は私の口が動き、声を発する。 …これは私の意思では、無い。 5年前ほど前 ある神社で祝詞を挙げた後に、急に身についた能力だ。 まるで“イタコ”のようなこの能力で 目に見えない存在…意思を持ったエネルギー体、というの