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泣けた、夜

不安になることが増えた。わたしだけは、わたしを好きでいないといけない。誰かに否定されたとしても、愛を感じられなかったとしても、カッコつけて素を出せなかったとしても、上手く結果が出なかったとしても、感謝されなかったとしても、わたしだけは、わたしを信じてあげないといけない。

お金がない。がむしゃらに生きていたら、いつの間にか貯金残高が底を尽きてしまって、その場しのぎで毎日をなんとか乗り越えている。でもプライドは捨てきれず、まだ大丈夫なフリをして、親にも連絡できないまま年を越した。友人の誘いを適当に断って、都合のいいように解釈されることを祈りながら、必死に体裁を保つだけで必死だ。新しい友人、恋人にはどこか気を遣っていて、ボロボロのわたしを見せることはできず、いつのまにか抱えていたストレスが行き場をなくしていた。体調を崩し、仕事も趣味も人に会うこともできず、気がついたら泣いていた。泣いたのは久しぶりで、泣き方が分からなくなっていた。毎日のように泣いていた日々、忘れてしまっていたけれどあの頃の自分はまだ確かにここにいる。心の奥に追いやったわたしが帰ってきた。不安だ。こわい。苦しい。悔しい。前に進めない。社会人になってからすんなりと受け流していた言葉にいきなり襲われる。わたしは、本当はまた、立ち止まってしまうことが怖いだけだった。

わたしの存在が不必要であることを認識してしまうのがこわくて、自分を愛するための本をたくさん読んだ。たくさんの言葉を吸収してきたのに、自己愛についての言葉はどれも納得できず、何度も何度も受け入れようと努力しながら読んだ。言葉を努力して受け入れたのは初めてだった。それでもなお、まだわたしは、わたしを愛することを義務のように感じている。

自信を持てることが限りなく少ない性格からか、仕事をしている最中も自分の価値についてよく考えてしまう。自分がどう思われているかを気にしているというよりは、自分が社会や組織においてどういう位置付けであるか、をどうしても追求しようとしてしまう。
仕事のほとんどは代替可能だ。わたしと同じことをしている人は無限にいて、その中でたまたま巡り合った目の前の人があっさりお客様になって、感謝されると初めてお金が発生する。目の前のお客様は、わたしでないといけない理由を持っていなくて、その理由を生み出すのがわたしのお仕事。これを意識しながら仕事をしていると、自分のことを愛していないわたしが、この人に提供できている価値はなにか、という問いにぶつかる。そうして無理やり決めた自分の価値を、武器として振りかざし続けるものの、組織の方針でわたしの武器はあっさりと切り替えられ、本当にわたしの持つ武器と組織におけるわたしの存在の価値が見えづらくなる、そして、承認されたいわたしは、いつまでも不安なまま、です。

こうなりたい、という欲が強く無限に浮かぶため、その欲のままに生きていると自分がボロボロになってしまう。背伸びをしすぎて、足がずっと治らない。いつの間にか悪い癖がついて、もう元のようには歩けない。体は1つしかなくて、わたしも1人しかいなくて、壊れてしまったら終わってしまうのに、そんな単純なことが分からなくなってしまうほど、わたしを愛するということを、まだわたしはすこしも理解できていない。

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