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2020年3月の記事一覧

小池百合子都知事の記者会見が示唆した「東京都の苦境」

本日、小池百合子都知事が記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染の拡大に対する東京都の方針を説明しました[1]。

記者会見において、小池都知事は感染症対策班の見解として、接客伴う夜間に営業している飲食店での感染が濃厚であり、こうした場への出入りの自粛を要請するとともに、若者に対してカラオケ、ライブハウス、企業の接待などで行くナイトクラブの利用を控えることを求めました。

また、小池都知事は、国に

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「長期戦の覚悟」を指摘した安倍晋三首相は記者会見を適切に活用できたか

今夜、安倍晋三首相は首相官邸で記者会見を開き、新型インフルエンザの対策などを説明しました[1]。

記者会見において、安倍首相は「(新型コロナウイルスとの)戦いは長期戦を覚悟していただく必要がある」という趣旨の発言を行いました。

安倍首相の発言はこれまでに比べれば踏み込んでいるものの、現下の状況に鑑みれば適切というよりは、むしろ遅すぎるともいえる認識の表明と言えるでしょう。

それとともに、3月

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慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ第229回定期演奏会で思ったいくつかのこと

昨日は、18時30分から20時40分まで、クラシック専門ストリーミングサービス"CURTAIN CALL"で行われた慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラの第229回定期演奏会の実況中継を鑑賞しました。

今回の会場はサントリーホール大ホールで、演奏曲目は前半がウェーバーの歌劇『魔弾の射手』序曲とリムスキー=コルサコフのスペイン奇想曲、後半がマーラーの交響曲第10番(クック版)でした。指揮

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政府に求められる「外国からの帰国者」への万全の対応

本日、参議院予算委員会において、新型コロナウイルスの感染が拡大している米国からの入国者に関し、安倍晋三首相が「検疫所長の指定する場所での14日間の待機要請、国内における公共交通機関の使用の自粛要請を政府対策本部で決定する方針だ」と表明しました[1]。

「国内における公共交通機関の使用の自粛要請」とは言うものの、もし飛行場や港から自宅に戻る際も公共交通機関の使用が自粛されるなら、問題は小さくありま

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東横線渋谷駅の地下化7年目に際し改めて「都市のあり方」を損なう「渋谷再開発」を難ずる

去る3月16日(月)、2013年3月16日(土)に東急東横線渋谷駅が地下に移設され、東京地下鉄副都心線との相互直通運転を開始してから満7年が経ちました。

東急東横線渋谷駅の地下化と東京地下鉄副都心線との相互直通運転が利用者に与える不利益については、本欄の縷説するところです[1]-[6]。

また、本欄は、東急東横線、東京地下鉄銀座線、JR埼京線の渋谷駅の移設などを中心とするいわゆる「渋谷再開発」

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地下鉄サリン事件の発声から25年目に際して--「突然の出来事」の与える影響の大きさを改めて考える

昨日、いわゆる地下鉄サリン事件が発生してから25年が経ちました。

地下鉄サリン事件が発生した直後の私自身の印象、さらに日本の鉄道史と犯罪史における地下鉄サリン事件の意味については、本欄でご紹介した通りです[1]-[3]。

ところで、地下鉄サリン事件がわれわれにおびただしい教訓を残している中で、とりわけ注意すべきは、目の前で起きている事柄をどのように捉え、いかなる意味を見出すかは容易ではない、と

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「専門家会議の現状分析と提言」が持つ意味は何か

昨夜、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が記者会見を行い、現状分析と提言を行いました[1]。

確かに、全国の感染源が未知の感染者数の分析については標本数が必ずしも十分でないと推察されるため、今後の一層の調査と分析が望まれるところです。

その一方で、今回の専門家会議の現状分析と提言そのものは、事態を詳細に捉え、順序を追って説明を行い、過剰な期待も過度の懸念も控えた、極めて抑制的な内容であると

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カントの『永遠平和のために』から考える「哲学は新型コロナウイルス問題に対していかなる役割を果たせるか」という問い

現在、新型コロナウイルスの感染の拡大により、世界各国で国境の封鎖や自国民の出国や外国人の来訪の制限などが行われています[1]。

こうした状況は、あたかもカントが1795年に著した『永遠平和のために』(Zum Ewigen Frieden)の中で指摘し、平和を維持するための手段の一つとして肯定的な理解を示した、18世紀当時の中国や日本における海禁政策が蘇ったかのようです。

しかし、実際には、現在

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「新型コロナウイルスのパンデミック宣言」終息後にWHOを待ち受けるものは何か

昨日、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの拡大について、世界的な流行の段階にあることを宣言しました[1]。

記者会見においてWHOのテドロス・アダノム事務局長は各国が緊急かつ積極的な対応策を講じることを改めて要請するとともに、複数の国で新型コロナウイルスの制御と抑制が可能であることが実証されたと指摘し、WHOとしては宣言後も従来の助言の内容を変更する意思がないことを明言しています[1]。

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東日本大震災の発生から9年を迎え再び「記憶の風化を受け入れて踏み出す第一歩」の重要さを訴える

本日、2011年3月11日(金)に起きた東北地方太平洋沖地震とその後に発生した津波の被害などを含む東日本大震災の発生から満9年が経ちました。

ヒトの記憶の保持能力の作用により、たとえ東日本大震災のような大災害であっても人々の印象が薄れることのが当然であること、あるいは、人間の記憶は保持される期間に限界がある以上、記憶の忘却が「風化させてはならない」というようにしばしば否定的に捉えられやすいことは

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「東京大空襲から75年」に際し戦災の記憶を後世に伝えることの意味を改めて考える

本日、1945年3月10日に米軍によって行われたいわゆる東京大空襲から75年が経ちました。

これまで本欄は、あらゆる記憶は風化する以上、記憶の風化を前提として取り組む必要があること、さらに総務省が全国各地で行われる年間の追悼式の開催の予定や追悼施設、全国戦災史実調査報告書や国内各都市の戦災の状況を紹介していることが実際に戦争を体験した人たちにとっても、戦争を知らない人びとにとっても、決して小さい

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「オペラやコンサートの無料配信」の持つ意味は何か

3月6日(金)から8日(日)にかけて、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、びわ湖ホール、東京交響楽団などの職業団体が管弦楽や歌劇の公演をインターネット上で無料で配信しました。

これらは、新型コロナウイルスの感染の拡大に伴い、不特定多数の来場者が会場に集まることで新たな感染者が発生することを避けるための非常の措置であり、何より望まれるのは事態が終息して通常通りの公演が再開されることです。

一方で、た

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「斎藤隆夫の衆議院からの除名」から80年を経てわれわれは何を学ぶべきか

昨日、1940(昭和15)年3月7日に立憲民政党の代議士であった斎藤隆夫が衆議院を除名されてから80年が経ちました。

斎藤の除名については、同年2月2日に斎藤が米内光政内閣の支那事変への対応を問う「支那事変処理に関する質問演説」、いわゆる反軍演説を行ったことに起因することは広く知られるところです。

演説の趣旨は、5点からなっていました[1]。

(1)1938(昭和18)年12月22日に事変処

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What Can We Learn from Japan's Efforts against COVID-2019?

Since December 2019, an outbreak of corona virus disease 2019 (COVID-19) occurred in Wuhan, is one of serious issues for the world.

In Japan, a total number of infected people is increasing despite t

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