東横線渋谷駅の地下化7年目に際し改めて「都市のあり方」を損なう「渋谷再開発」を難ずる

去る3月16日(月)、2013年3月16日(土)に東急東横線渋谷駅が地下に移設され、東京地下鉄副都心線との相互直通運転を開始してから満7年が経ちました。

東急東横線渋谷駅の地下化と東京地下鉄副都心線との相互直通運転が利用者に与える不利益については、本欄の縷説するところです[1]-[6]。

また、本欄は、東急東横線、東京地下鉄銀座線、JR埼京線の渋谷駅の移設などを中心とするいわゆる「渋谷再開発」について、最終的には渋谷駅が単なる通過駅となり、渋谷という地域そのものの存在価値を低下させることも、指摘してきました[7],[8]。

ところで、今年1月3日(金)から銀座線渋谷駅の移動と開設が行われ、今年6月1日(月)にはJR埼京線渋谷駅も移設される予定です。

JR埼京線渋谷駅については、従来に比べてJR山手線や東急線からの移動が容易になることが推察されるものの、銀座線渋谷駅についてはプラットフォームが移設前の渋谷駅と同じ地上3階に設置されているため、地下5階に位置する東急東横線からの移動に時間を要することは以前と異なりません。

さらに、主たる改札口が下り線については表参道駅側とプラットフォーム中央、上り線については京王線神泉駅側とプラットフォーム中央に設置されていた旧銀座線渋谷駅に比べ、新しい銀座線渋谷駅は上り線と下り線の主たる改札口が表参道駅側に集中しているため、通勤・通学の混雑時の乗客の往来が滞留しがちであることは、設計上の欠陥であり、駅舎の移設を行った意義が問われるところです。

いずれにせよ、神南側からは見えるものの宮益坂上からは目にすることが出来ない渋谷スクランブルスクエアを「新しい渋谷の象徴」とすることが示すように、現在の渋谷地区における各種の開発事業は、一面において保留床を重視するだけで「街のあり方」を俯瞰的に捉えきれず、他面においては既存の小さな店舗が撤退し、世界中のどこにでもある店舗しか入らないような地域となることで、「都市のあり方」を根本から崩していると言えます。

それだけに、本欄は、東急東横線渋谷駅の地下化に端を発する、都市の特徴を活かしきれていない「渋谷再開発」を改めて憂うのです。

[1]鈴村裕輔, 憂慮すべき東急東横線と副都心線の「相互直通運転開始」. 2013年3月2日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/439b6ec1852f2c5023592617c8dc8e52?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 「渋谷の衰亡」を暗示する「新しい東横のれん街」の開設. 2013年4月4日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/66d960e33393f8b2b004bf6c4b91b36e?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[3]鈴村裕輔, 東横線渋谷駅の空調設備の撤去は何を意味するか. 2014年3月6日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/b7c8ec44982f3f85375c6d0558363fc4?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[4]鈴村裕輔, 地下化1周年に際し再び東横線渋谷駅の改善を求める. 2014年3月16日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/7bb9fcb238b568d3ea6dbbe0ceacc397?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[5]鈴村裕輔, 地下化4年目に際し改めて東横線渋谷駅の不便さを批判する. 2017年3月17日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/edfa2845a859f1c6d4091f94cc122e31?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[6]鈴村裕輔, 地下化6年目に際し改めて東横線渋谷駅が利用者に与える不利益を難じ「渋谷再開発」の「暗澹たる将来」を予測する. 2019年3月16日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/c1037c35d8af6cfd711cc2301d61ce5b?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[7]鈴村裕輔, 改めて渋谷駅の「再開発」の問題を批判する. 2015年7月3日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/d25f213655045c92a00d05b790eadc55?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).
[8]鈴村裕輔, 「渋谷ストリームの開業」は「渋谷の衰亡」の進展を象徴する. 2018年9月13日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/472a934e414ae380e10ace74356bd7a2?frame_id=435622 (2020年3月22日閲覧).

<Executive Summary>
New Shibuya Station Shall Be Improved Its Functions and Facilities (7) (Yusuke Suzumura)


The 16th March 2020 is the 6th anniversary of the opening of new Shibuya Station of the Tokyu Toyoko Line. In the Occasion we demand again that Tokyu Corporation and other companies shall improve functions and facilities of Shibuya Station and surrounding area.

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