政府に求められる「外国からの帰国者」への万全の対応

本日、参議院予算委員会において、新型コロナウイルスの感染が拡大している米国からの入国者に関し、安倍晋三首相が「検疫所長の指定する場所での14日間の待機要請、国内における公共交通機関の使用の自粛要請を政府対策本部で決定する方針だ」と表明しました[1]。

「国内における公共交通機関の使用の自粛要請」とは言うものの、もし飛行場や港から自宅に戻る際も公共交通機関の使用が自粛されるなら、問題は小さくありません。

例えば、羽田空港や成田空港に到着した地方都市の在住者や地方の港に到着した首都圏在住者が自宅まで戻るために新幹線や在来線を利用することは自粛の対象となるのか否か、都内在住者でも自家用車を持たなければ帰宅できないのか否か、といった点は、極めて現実的な問題です。

また、公共交通機関を利用する以外に帰宅する方途のない者は宿泊施設で待機することになる場合、14日間という待機期間中の費用を自弁することは金銭的にも大きな負担となるのは明らかです。

もちろん、企業や団体などから派遣された出張や駐在であれば、宿泊施設で待機する場合も費用の補填や負担がある可能性が高まります。あるいは、自発的に米国に旅行したり留学したのであれば、自らの行動に伴う結果を引き受けるのが当然であるという意見が呈されることもあるでしょう。

その一方で、旅行客や留学生などの場合、金銭的な補助がないとすれば、たとえ「公共交通機関の使用の自粛要請」があるとしても、支出との比較によって遵守する意欲が失われかねないことは容易に推察されます。

それだけに、政府の要請による措置であることに鑑み、「機動的な水際対策をちゅうちょなく講じていく」だけでなく、帰国者が不利益を被ることがないよう、「必要な対策をちゅうちょなく講じる」ことも不可欠ですし、米国以外の国や地域からの帰国者についても、遡及的な対応を含めて策を施すことが求められると言えるでしょう。

ゆめゆめ、「政府の要請に従ったら損をした」という事態を招いてはならないのです。

[1]米から入国規制表明. 日本経済新聞, 2020年3月23日夕刊3面.

<Executive Summary>
The Government Authorities Shall Take Measures to Treat People Who Will Come Back from the USA and Other Countries and Areas (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Shinzo Abe says that people who will come back from the USA shall stay a designated place and refrain from using public transportation on 23rd March 2020. The Government Authorities shall take careful measures to treat them, since they only obey an order by the government.

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