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「翻訳者で選ぶ」「翻訳の質で選ぶ」というインディーゲームの選び方もアリだと思う、という話

特にインディーゲームを遊んでいると、「これ…機械翻訳をそのままコピペしたのか…?」と思われるような翻訳のゲームに遭遇することってありますよね。

ビジュアルや音楽を体験する限り、かなり感動出来そうな物語だったり、とても情熱を感じるゲームシステムだったり。
でも、(具体的なタイトル名は出しませんが)そんなゲームの翻訳が機械的で人間の言葉と思えなかったり、選択肢の意味が分からなかったり、急に性別が変わったような話し方だったり。そしてときには文字化けしていたり。
そうなると、もうゲームを楽しむという次元の話では無くなってくるんですよね。それこそ英検3級レベルの私でも、英語のままプレイした方がまだマシな体験が出来るのではないか…? と思うこともあります。
特に、「日本語への翻訳」は難しいと思いますが、とはいえ変な翻訳では没入感を削ぐ結果になるのは間違いありません。

そもそも、恥ずかしながら日本語しかわからない身としては、日本語以外の言語をベースとして作られたゲームは遊ぶことが出来ない・または遊ぶハードルが高くなるわけです。
特にインディーゲーム、そして物語に重点を置いたゲームでは、開発者の思いが非常に強く出ていることもしばしばあります。それはきっと、各開発者が、個人なりチームなりでゲームに命を吹き込むようなものであり、そしてその中でもその「表現したい物語」は、「言葉」で表現されることがほとんどだと思います。

言ってみれば、私はその「開発者の思うありのままのゲーム」を楽しむことは出来ません。なぜなら、「開発者が思いの丈を自らが最も表現できると考えた『言語』で表現したゲーム」がオリジナルであり、このゲームが日本語訳されるということは、そこには翻訳というワンアクション、変数が介入され、オリジナルそのもののニュアンスではなくなるのです。

翻訳という作業が介するというのは、いわば格ゲーの2Pカラーのようなもので。性能(根本的な部分)は同じだけど、でも少し見た目、印象が違う。そんなものであると思っています。
素晴らしい翻訳は、白いカラーがオリジナルの言語とすれば翻訳後がまた別の白色になるくらいの違いしか生みませんが、前述の機械翻訳のような変化では、まったく違うカラー、むしろ別キャラになってしまうようなものです。これは、ゲームおよび物語の印象に変化を生んでしまいます。

まあ、スト2でリュウがケンになるくらいの印象の変化なら許容できるかもしれませんが(人によりますが)、リュウがダルシムやブランカになってしまうくらいの印象の変化だともう物語に破綻を来たしますし、ゲームに集中できません。翻訳による変化は、ある意味そのくらいの威力を持つのです。

つまるところ何らかの翻訳を経てプレイするということは、開発者のオリジナル、純度100%のゲームはプレイできないということとなります。
言語(単語)の違いによる言葉の印象の違い、翻訳者の意図などが入ることで、当然ながらオリジナルの開発者が考えた「言葉を使った旨味」のようなもの、そのものは失われます。

いや、失われるまではいかなくても、料理に何らかの調味料が入るような感じでしょうか。味が変わることで、当然オリジナル以下の味になることもあります。そしてもちろん、オリジナル以上の味になることもあると思います。素晴らしい翻訳であれば、味は全くと言っていいほど変わりません。もちろん英語が理解できないとオリジナルと翻訳後の味の違いはわかりませんが、元々の味というものは味わえない。個人的にはそう思っています。

しかも、印象というものは最初に体験したものから変わることは難しいものです。それこそ断片的にでも演出や物語、特にセリフの意図なんかを知ってしまうと、その印象から抜け出すのは困難です。
極端な話、翻訳が不十分であれば、オリジナル版がどれほど優れた演出や物語の「言葉の意味がちぐはぐなよくわからないゲーム」という感想で固まってしまうのです。

せっかくお金を出して買ったゲーム。面白い面白くない、自分に合う合わないはもちろんあります。でもそれは、ゲームそのもの…メカニクスやストーリーやビジュアルなど、本質を構成する要素で判断したいですよね。そもそも翻訳というのはそのスタート地点であり、ここで躓くというのはプレイヤーとしては想像していないわけです。

だからこそ、そのスタートで躓くのを防ぐために何をするか。
可能な限り「誰が翻訳しているか」「翻訳の質は高いか」を調べてみるというのが、一つの解であると考えます。信頼できる翻訳者や翻訳の質が担保された情報を入手することで、躓くことを防ぎます。

翻訳者の調べ方としては、一番確実なのがゲームメディアの記事。興味あるゲームのニュース記事等に、「日本語翻訳は〇〇によって行われている」といった記述があれば間違いなし。
もちろん、その記事で「日本語翻訳はバッチリ」なんて記載があれば、翻訳者が分からなくても、言葉によって躓く心配は無いですね。
また、発売からしばらく経ったゲームであれば各種レビュー、もしくはTwitterで「(ゲームタイトル)+翻訳」で検索すると、翻訳に対する感想が現れるので、そういったユーザー目線の声を調べるといいと思います。
どうしてもsteamなどのストアページのみではわからないので、ひと手間かける必要がありますが、それもまた、ゲームを買って失敗する確率を減らすひとつの方法なんじゃないかなと思います。

個人的に、翻訳者を調べていて「ここが翻訳しているのであれば間違いないな~!」と思っているのは「架け橋ゲームズ」さん。

あの名作「Inscryption」や、翻訳が大変であったであろう「完全爆弾解除マニュアル:Keep Talking and Nobody Explodes」、パーティーゲームの「Overcooked」や、ある意味で言葉に重きを置かれている「Say No! More」、翻訳はもちろん日本語CVも素晴らしかった「Trek to Yomi」など、外れなしの印象です。

架け橋ゲームズさんに注目したきっかけは、名作「A Short Hike」を遊んだこと。とても味のあるキャラクターたちの言葉が、ただ言語を変えただけではない、気持ちの入った言葉であり、心を温かくしてくれました。

このゲームの翻訳がきっかけで、翻訳者が気になるように。例えば、「Death's Door」なんかも、買おうかどうか迷っていたときの最後の一押しが、架け橋ゲームズさんが翻訳を行っている、というところでした。実際、素晴らしい翻訳で、ゲームそのものの面白さを全く阻害していませんでした。
その他、細かくチェックはできていないですが、他の企業や個人で翻訳を対応している方にも感謝です。このあたりはゲームをもっと沢山プレイすると、きっと安心できる翻訳者さんが自然とわかってくるのかな、と思います。

この翻訳は素晴らしい! と思ったときは、誰が(どの企業が)翻訳したかを覚えておいて、以降のゲーム購入(特にインディーゲーム)のひとつの尺度にしてみてはいかがでしょうか。AAAタイトルは翻訳にも潤沢な資金を使っている(と思われる)のであまり大きなハズレにあたることはないかもしれませんが、インディーはそこまででもないと思うので。ゲームのメカニクスなどではない部分でNot for meではもったいないですよね、時間もお金も。

今後インディーが世界中でどんどん増えていくにつれ、翻訳の必要性、重要性、何より翻訳されたゲームの数も増えていくと思います。実はいくつかのインディーゲームを購入したとき、中身は本当に楽しみだったのに翻訳が不十分で楽しめず後悔した経験があり、面白い・面白くない以前のスタート地点のチェックに、翻訳の質がどうなっているかをチェックするのも必要だよなあと思ったのでした。

まあ、英語を勉強すればこんなこと思案しなくてもいい、って話なので、勉強しなきゃな…と思いつつ早幾年。ゲーム翻訳にも興味があるので、どうにか勉強したいと思います。


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