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書評 #28|わたしはオオカミ 仲間と手をつなぎ、やりたいことをやり、なりたい自分になる

 文字の一つ一つに独立した力が凝縮している。女子サッカーにおいて一時代を築いたアビー・ワンバックの気高い意志に最初から最後まで圧倒された。それは彼女の雄姿とプレースタイルにも重なる。

 その力強さと同等かそれ以上に、一般的にアメリカという国に住むアメリカ人の強さを僕は再認識させられた。人間が自らの幸福を核とし、それを突き詰めることで周囲にも幸福を芽吹かせる意識のようなものが血に流れている。そう感じた。

 それは歴史や宗教に裏打ちされているのかもしれない。自分自身を芽に例えれば、それを一生で満開にしようとすることが本能的に培われている。大袈裟かもしれない。しかし、その旅はどこまでも正しく、勇敢で魅力的だと思わずにはいられない。

 優劣の話ではない。しかし、「感謝しよう。だが、そこで終わってはいけない」と口にできる日本人はどれだけいるだろう。感謝の光を周囲に放つだけではなく、自らの全身にも浴びせる。それは意識の微差なのかもしれないが、日々を積み重ねるとクオリティ・オブ・ライフに違いが生まれるのではないだろうか。

 “Don’t Be Silent”というフレーズが世間で波打った。ジェンダーに関する音量が大きくなった昨今の日本を意識しながら読み進めた。本作でもジェンダーの平等は叫ばれている。

 しかし、日本での扱われ方と異なるのは、前提として人間一人一人の自己表現、自己実現の尊さが語られている点だ。力強さとはまた別の、視点や認識の違いを感じずにはいられない。


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