入国拒否
「入国できません。」そっとパスポートを返されるまで、言っている意味が理解できなかった。
これまで世界一周をしてきて2年半、14カ国を旅してきて、入国拒否をされるなんて考えたこともなく、今回もいつも通り当たり前のように国境を超えれると思っていた。
しかしトルクメニスタンでは今まで通りには、国境を越えることはできなかった。
今回はそんなトルクメニスタンの国境での話について紹介する。
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トルクメニスタンは中央アジアの北朝鮮と呼ばれているほど、中央アジアの中でも一色違う国である。トルクメニスタンに入るにはビザを取得する必要があり、そのビザを取得するには、書類を集め、旅行中の予定をこと細かく決め、大使館に申請しなければならない。
そんなトルクメニスタンのビザ申請も無事に終わり、約2週間の待ち時間も終え、ビザを手に入れた。ビザを申請してから「申請が通るだろうか?」と変な不安が頭の片隅に残っていたが、その不安も拭い取ることができ、後は国境を越えるだけだ。
ウズベキスタンとトルクメニスタンの国境付近に「ヒヴァ」という町がある。このヒヴァには城壁都市と呼ばれる世界遺産「イチャン・カラ」という観光地が有名で、この場所の観光が終わればウズベキスタンの観光も終わる。そしてトルクメニスタンの旅がすぐに始まるのだ。
ヒヴァからトルクメニスタンに行くには、バスを乗り継ぎ2時間程かけてウズベキスタンとトルクメニスタンの国境まで行くことができる。
国境では「ジャパニーズ?」と、空港の無機質な税関とは違い陸路の警備員は明るく話しかけてくる。警備員だけじゃない、荷物検査をする係員もパスポートを確認する税関もみんな同じ感じだ。空港ではストレスを覚える税関とのやりとりも、陸路では楽しみを味わえる旅の一つになる。
ウズベキスタンの国境は出国ということもあり、スーパーのレジに並ぶようなスピードで人が流れていく。そして問題なく税関を抜け、建物を出た目の前にはトルクメニスタンの国境が待ち構えている。
「さぁ、いよいよだ。」念願の地獄の門まで後少し、トルクメニスタンの国境が近づくにつれて気持ちが高ぶっていくのを感じていた。
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トルクメニスタンの国境を越えると、すぐに警備員が待ち構えている。
警備員にパスポートを渡すと、目の前にポツンと置いてあるベンチに座って待機するように言われた。
どうやらトルクメニスタンは国境から税関まで距離があり、この間をバスを使って移動するシステムのようだ。そのためバスが来るまで、国境付近で待機しなければいけない。
待つこと10分。国境付近にバスがやってきてみんなバスに乗り込んでいく。みんなといっても、乗り込むのは僕と旅行者2人、そして警備員の2人、計6人。
インドとネパールの国境やキルギスとカザフスタンの国境を超えたときは、訳のわからない人の量が税関に押し寄せていたが、ここは全くもって人がいない。
「これがトルクメニスタンか。中央アジアの北朝鮮と呼ばれるだけはある。」閉鎖的な国なんだと改めて思わされた瞬間だった。
国境から税関までの距離はバスで5分ほど。「これならバスを待っている間に歩いて行けるだろう」と思ったのだが、監視とかそういう意味で、好き勝手に移動はできないのであろう。
そしてバスが税関に到着したので降りようとしたら、まさかの運転手から1ドをル請求された。正直ここでお金を請求するのは反則だろと思ったのだが、相手は軍人だ。本当に移動費なのかどうかわからないが払うしかない。
税関に入り、パスポートを渡すや否や税関が「チャイニーズ?」と聞いてきた。
私
「ジャパニーズだよ。」
税関
「そこに立って、指をそこに置いて」
カメラで写真を撮り、指紋を取られたところで、税関が「それじゃあちょっと確認するからそこで待ってて」と指示された。
「こういうときは質問とかするんじゃないの?」と思ったのだが、これがトルクメニスタンのやり方なのだろう、とりあえず言われるがまま待機していた。
しかし5分、10分経っても呼びにこないんだ。
「パスポートの確認だけでこんなにかかるか?質問とかするならまだしも・・・」と思い、受付にもどって、どれくらいかかるか聞いてみたら、「あと5分ぐらい」とそっけない返事が返ってきた。
こういうときの5分は信用できないのだが、待つしかないので再び待機していた。
結局待つこと15分。係員がやってきて、私に質問をしてきた。
係員
「中国に行ったことある?」
私
「行ったことないよ。」
係員
「日本人が中国に行った時ってスタンプって押されなかったりする?」
私
「中国に行ったとことないから知らん」
係員
「わかった。」
再びここで待機するように言われ、待つこと数十分。
いつまで経ってもやってこないから、様子を伺いにいくと、どうやら私のパスポートを見て、何処の国にいつ行ったのかを一つ一つ確認していた。
そしてさらにまつこと数十分。
気づいたら係員が全員いなくなっていた。
どうやら彼らは昼飯を食べに行っているようだ。
「ふざけんじゃねーよ、人一人通すのにどんだけかかるんだよ!昼飯を食べにいくなら俺をどうにかしてから行けよ!」と怒りを覚えたが、人がいないだけあって誰かにこの怒りをぶつけることもできない。
そしてさらに待つこと2時間。ようやく係員たちが帰ってきた。
流石に苛立ちを覚えたので、後どれくらいかかるのかを聞いてみると、もう少しかかるから待つとのこと。
「一体何をやってるんだ!!事前にビザを取っていんだから、パスポートを確認して通すだけだろ!!」と係員に言いたいとこだが、ここで下手に騒いで印象を悪くして良いことは一つもない。
とりあえず我慢してまつことさらに数十分。
全然係員が呼びに来ないから、どうなっているかを聞きにいくと、
係員
「入国できません。」
俺
「はぁ!?」
全く意味がわからなかった。
「ビザは事前に取っているし、変な国にも行ってない。入国できないようなことなんて一つもないだろう!!」
流石にこれは納得できないので、「何で、理由は?」と聞いてみると、
係員
「コロナウイルスが流行っているせいで、旅行者は誰もいれないとの連絡が来ました。」
俺
「いやいや、俺中国行ってないし。というか東アジアにいたの2年半前だよ。それでもダメなの?」
係員
「そういう連絡をもらったので。こちらでは何とも言えません。」
俺
「いやいやいやいや・・・」
と色々言ってみたところで、係りの人も連絡通りに動いているだけなので、全く意味がない。
結局4時間税関で待たされて、入国できないということになった。
その理由が新型コロナのせい。
僕にはどうしようも出来ません。
2年前から「地獄の門」に行くと決めており、それがようやく叶うと思った矢先、この仕打ち。
気持ちが高ぶっていた分、行けないとわかったときのテンションの下がりようが半端なかった。
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新型コロナが流行るこの頃、旅行中にアジア人差別を受けることがよくある。
差別というと少し大げさかもしれないが、周りの目線がこの数日間で一気にキツくなった。
旅行をしているとよく「チャイニーズ?」と声をかけられることはよくある。しかし最近はそれに加えて、キツイ目をしながら「チャイニーズ?」と声をかけられるようになった。
その際に「ジャパニーズだよ」というと、向こうは悪いような感じをして、表情が和らぎ親しみをもって話しかけてくるのだが、こういうものが差別の始まりなんだと実感している。
だがそんなやりとりも私は慣れてきて、「チャイニーズ?」と聞かれた後に、「ジャパニーズ!ノーコロナウイルス!」と軽い冗談を言うと、これが面白いようにうける。
だが、アジアでコロナウイルスが徐々に広がっているように、日本でもコロナウイルスが満映すると本格的なアジア人差別が広がるかもしれない。
特にこれから西に行けば行くほど、差別文化が色濃くなるので、気楽だった私の世界一周もそろそろ緊張感を持たなければいけないのかなと、感じた出来事でした。
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