見出し画像

火山ハザードマップを見てみよう!:富山県東部高山地域 弥陀ヶ原(立山)火山【御当地ハザードマップvol.2】

みなさんは旅先のハザードマップを事前に確認したことはありますか?
自宅周辺のハザードマップですら、まだまだ普及途中だと考えれば、旅行先のハザードマップを見る人は限られていると思います。
かく言う私も、見たことはありません。

ということで、今回は火山ハザードマップを見てみよう!です。

噴火警戒レベル

そもそも火山の場合は気象庁が設置したセンサーの観測データなどに基づき、噴火警戒レベルが設定されています。(※詳細は今後別記事にて)

しかし噴火警戒レベルが低くても、噴火する危険はあります。
ですので、観光や登山、スキーなどのレジャーで火山の近くへ行く場合、事前に噴火警戒レベルハザードマップを確認しておくことは非常に重要です。

噴火警戒レベル

噴火警戒レベル:気象庁より


弥陀ヶ原(立山)火山のハザードマップ

富山県シリーズでとりあげた立山火山、火山としての正式名称は弥陀ヶ原(みだがはら)でした。
弥陀ヶ原の現在の噴火警戒レベルは「1」です。

さっそくハザードマップを見てみましょう。

弥陀ヶ原ハザードマップ_小規模噴火

弥陀ヶ原火山ハザードマップ(小規模噴火):富山県ホームページより

弥陀ヶ原火山のこれまでの調査・研究結果に基づいてマップがつくられているようです。

弥陀ヶ原火山は過去1万年以内に繰り返し水蒸気噴火を起こしており、その事例と他の火山の事例をもとに、噴火の規模を以下の2パターンで想定しています。

〇小規模噴火
噴出(噴石や火山灰)量:5万m3
〇大規模噴火
噴出(噴石や火山灰)量:500万m3

弥陀ヶ原火山の直近の噴火は以下の通り。

・約1500年前の小規模噴火で約3.2万m3が噴出
・約2500年前の大規模噴火で約260万m3が噴出

では小規模噴火の場合と大規模噴火の場合でマップを詳しく見てみましょう。


小規模噴火の場合

さきほどのハザードマップをもう1度。

弥陀ヶ原ハザードマップ_小規模噴火

赤線想定火口で過去1万年で噴火した場所
赤点線:現在でも噴気がある範囲。有毒火山ガスのため立ち入り禁止区域があります。
茶色線:直径50cm以上の大きな噴石の影響範囲。非常に危険です。
黒点線:火山灰が1cm積もると想定される範囲。

自動車では立山有料道路でしかアクセスできない範囲ですが、宿泊施設や学校の施設もあります。それらを利用予定の人は要チェックですね。

ちなみに火山灰が1cmも積もると、自動車のブレーキが利くまでの距離は約1.5倍になるようです。しかも20km/hの速度でです。(※坂本ほか2016)
さらに水を含むともっと止まりにくくなります。
車で避難したくなりますが、火山灰の積もり具合によっては思うように運転できない可能性が高そうです。


大規模噴火の場合

大規模噴火の場合のハザードマップです。

弥陀ヶ原ハザードマップ_大規模噴火

弥陀ヶ原火山ハザードマップ(大規模噴火):富山県ホームページより

弥陀ヶ原ハザードマップ_大規模噴火_拡大01

上のマップを拡大しました。
赤線・赤点線は小規模噴火と同じです。
茶色線の大きな噴石の影響範囲は広くなっていますね。火山灰の範囲はもっと広いので別マップになっています。

〇太いピンク色
火砕流の到達範囲です。火口付近と称名川沿いへの到達が予想されています。
有名な滝(称名滝)までの到達は想定されていないようですが、距離は2kmも離れていませんので、念のため避難するのが得策でしょう。

〇細いピンク色
火災サージの到達範囲です。
火災サージとは、火砕流よりもガス成分の割合が高いものです。ガスが多い分速く、最大で100km/hに達すると言われています。
建物や車が吹き飛ばされるような現象ですので、逃げようがないですよね。可能な限り火山から離れるしかないとしか言えません・・。

〇黄土色のベタ塗り
降り積もった火山灰が土石流となって流下する範囲。
道路2か所被災する想定になっていますので、その場所は特に要チェックですね。


弥陀ヶ原ハザードマップ_大規模噴火_拡大02

左下のマップです。
これは融雪型火山泥流の影響範囲です。
積雪がある時に噴火した場合、噴出した熱水が雪を溶かし、火山灰などと一緒に土石流になって流れます。
称名川に沿って、かなりの下流まで達すると想定されています。県道35号線立山橋まで達する想定です。

弥陀ヶ原ハザードマップ_大規模噴火_拡大03

右下のマップの拡大です。
太い青線:降灰厚30cmの想定範囲。有料道路の範囲内。
青点線:降灰厚10cmの想定範囲。称名滝付近までの範囲。
黒点線:降灰厚1cmの想定範囲。立山町だけでなく、長野県も含めた周辺市町村まで及びます。交通に影響しますので、事前にしっかり把握することをお勧めします。


いかがでしたか?
火山がひとたび大噴火を起こせば「どうしようもない」と考えてしまいがちです。
しかしハザードマップを確認し「助かるための行動」を事前に考えておくことは非常に重要だと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。


参考文献

坂井佑介・永吉修平・國友 優(2016)火山灰堆積地での現地調査における自動車走行上の留意点~土砂災害防止法に基づく緊急調査の実施を想定した現地試験結果より~.土木技術資料、58-9、pp.8-13.

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?