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【料理小説】ゆりこさん、今日のごはんは?#3塩麹鶏のフォー

「自分を大切にする」ために、まずは昼ごはんを大事にすることにしたゆりこさん。
今回は塩麹鶏のフォーを作ります。
第一話は
こちら

#3 塩麹鶏のフォー

パクチーを好きになったきっかけは、ベトナムで山盛りのパクチーを食べたことだ。
それまではあんまり好きじゃなかったのに、たくさん食べているうちに、ないと物足りなくなった。

土っぽい空気。
街全体からなんとなく感じる活気。
癖が強くて、だけど温かくてどこか懐かしい屋台のごはん。

行ったのはもう10年も前だから今はもう全然変わっているだろうけれど。

1人旅が好きで、いろんなところに1人で出かけた。
言葉も文化も違う街に1人で立つと、冒険にワクワクして、けれど心細くて。
何が入っているのか想像もつかない料理。
親切にしてもらえたり、ちょっと怖い思いをしたり。
予想外のハプニングがたまらなく人生を感じさせた。
あのなんとも言えないドキドキが恋しい。

ベトナム観光の途中で財布を盗まれた。
クレジットカードが盗られて、そこからは残りの現金を数えながらの貧乏旅。
けれど、最後に空港に向かう途中で小銭の処分にと買ったスクラッチくじが当たって、盗まれた以上のお金が手元に残った。

お金は、
なくすこともあるけど、
得ることもある。
人生は、
いいことも、悪いことも起きる。
嫌な人に出会うこともあるけれど、優しい人に助けてもらえることもある。
悪いことが起きるたびに、あのベトナムの日々を思い出す。
きっと次はいいことが起きると信じられる。

簡単には海外旅行に行けない日々が続くから、せめて海外の味を楽しもう。
今日はちょっと寒いし、フォーが食べたい。 

冷蔵庫から鶏むね肉を取り出す。
塩麹をまんべんなく塗り、冷蔵庫に入れておく。
20分ほどたったら、鶏肉とネギの青い部分、生姜と一緒に鍋に入れ、かぶる程度の水を入れる。
火にかけて、沸騰したら火を弱めて弱めの中火で5分。
火を止めて余熱で10分。
中の具材を取り出す。鶏肉は細かく手で割き、ネギも一口サイズにする。
スープにナンプラーを足したら、急にアジアの匂いがしてきた。

別の鍋で麺を茹でて、丼へ。
スープを入れて、ほぐした鶏肉をのせ、山盛りにパクチーをのせたら、フォーの完成。

レモン汁をドバッと足して熱々を食べれば、優しいスープが心に染みる。
シンプルな食材なのに、ナンプラーが複雑な味わい。
パクチーをたっぷりのせながら食べると、香が口いっぱいに広がる。
優しい味だから、どんどん食べすすむ。
スープまで飲み干せば、お腹からぽかぽかになった。

今はつらいけれど、人生だもの。
いいことも悪いことも起きる。
空港で宝くじが当たったみたいに、
苦しい分のラッキーがどこかできっと巡ってくる。

今はまだ、この苦しみに何の意味があるのかはわからないけど。
いつかこの日々を思い出すときは、おいしいご飯の記憶と一緒がいい。

次回は、あの日のプリン

この物語はフィクションです。

塩麹鶏のフォーのレシピ

鶏胸肉 … 1枚
塩麹 … 大さじ1.5
水 … 適量(500ml程度)
ナンプラー … 小さじ1(様子を見て加減して下さい)
ねぎ … 青い部分1本
生姜 … 1かけ
パクチー … 好きなだけ
フォー … お好みの分量
レモン汁 … お好みの分量

  1. 鶏胸肉に塩麹をまんべんなく塗る(大さじ1.5で足りなければ足してもOK)

  2. 1の肉を冷蔵庫に入れ20分ほど置く

  3. 2の肉、ねぎ、スライスした生姜を鍋に入れ、水を入れる。

  4. 鍋を火にかけ、沸騰させる。沸騰したら、弱めの中火にし、5分煮る。

  5. 5分たったら、火を止めて、蓋をして10分放置する。

  6. 別の鍋にたっぷり湯を沸かす。

  7. フォーを袋の指示通りに茹でる。

  8. 7の麺を丼に移す。

  9. 5の鶏肉に火が入ったことが確認できたら、取り出して細かく割く。ねぎは取り出して一口サイズに切る。生姜は取り出す。

  10. スープにナンプラーを入れ、味を調整する。

  11. パクチーをざく切りにする。

  12. 8の丼にスープを入れ、鶏肉、ねぎ、ざく切りにしたパクチーを盛り付ける。お好みでレモン汁を入れて、召し上がれ!

※ナンプラー、塩麹は商品によって塩加減が違うので、レシピの分量にこだわらずスープの味付けの際にお好みで調整してください。

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