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ゆりいかの文学住散歩

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日本住宅新聞にて連載されていた書評を一部加筆修正した上で公開していきます。今後、連載内容に沿う新たな記事も出していく予定です。
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記事一覧

居場所のない私たちの安らげる場所とは:角田光代「東京ゲスト・ハウス」から考える

地方在住の友人が、上京するときには「ゲスト・ハウス」を利用しているという。彼によれば、若い旅行者用の宿泊施設としては一般的なホテルよりもリーズナブル。その上、世界中から集まったさまざまな宿泊客たちと交流できるため、新たな出会いや文化的な刺激を求めて利用しているのだそうだ。

「ゲストハウス」というと、かつては公私がごちゃごちゃの混沌とした空間というイメージだったが、最近は内装などにこだわったオシャ

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購入時のお礼メッセージを記事、マガジン、サポートで出し分けできるようになりました

購入時のお礼メッセージを記事、マガジン、サポートで出し分けできるようになりました

・購入時のお礼メッセージを種類ごとに出し分けできるようにしました
・お礼メッセージは5つ設定することができるようになりました

本日11月13日より、購入されたときのお礼メッセージを、記事、マガジンの購入とサポートをしてくれたときの3種類で出し分けができるようになりました。また、それぞれ5つずつメッセージを設定することができるようになりました。

今までは1種類のお礼メッセージを表示しておりました

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今週のおすすめノートをご紹介!#2018/11/15

今週のおすすめノートをご紹介!#2018/11/15

いつもたくさんのノートを投稿いただき、ありがとうございます!
今週のnote運営事務局のおすすめノートをご紹介します。

■漫画 好きな人の好きな人/すこ@コミティアでますさん

いつも石膏像ばかり描いている、美術部の"あたらし"さんに恋をしている男の子。ある日の放課後、誰もいない美術室で彼女に告白しようと様子を伺うと、彼の目に映ったのは…!

■「花屋日記」9. 美しいのは花じゃなかった。 /

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生活のあらゆる場所は“庭園”になるかもしれない :いとうせいこう『ボタニカル・ライフー植物生活ー』から考える

取材で「東京おもちゃショー」に参加したときの話。会場にはVR機器やスマホアプリと連動するロボットなど最先端技術が搭載されたおもちゃが並んでいて、それはそれで興味深かったのだが、どうにも大人向けな印象が強く、正直あまり心惹かれなかった。

ただ、その中でとても目を引いたものがある。植物育成キット「PETOMATO SERIES」だ。種や肥料などの入ったノズルと、水の入ったペットボトルを組み合わせると

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平成以降の光と影(比喩ではなく)について:谷崎潤一郎『陰翳礼讃』から考える

平成になって変わったことのひとつに、"灯かり”があるだろう。街灯や家庭にLED照明が普及し、街は以前よりも確実に明るくなっている。蛍光灯よりも寿命が長く、従来品よりも電気代コストを安く抑えられる。普及が早かったのは当然だ。

出始めの頃は「青白い光に包まれた部屋が不気味」「光が全体的にのっぺりとしすぎ」といった感想も耳にしたが、現在は光の色や明るさを自在に調整できるタイプが発売されている。つまり、

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不動産の”サンドイッチマン”が怖い:新庄耕『狭小邸宅』から考える

2013年から2017年までの間に、自分の住んでいた世田谷区・上北沢の景色はガラリと変わった。

以前は、敷地の広い邸宅郡の密集した富裕層の住む町だったが、次第に家々が解体され始め、だだっ広い空き地が散見。しばらくすると、モデルハウスのようなデザインのこじまりとした家が建ち並んだ。いわゆる”建売住宅”が増えたのである。

それに伴い、住宅の玄関前で不動産の営業マンたちをよく見るようになった。大きな

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町田康が頭を抱えた「永久リフォーム理論」とは?:町田康『リフォームの爆発』から考える

2002年から2016年まで放映されていた『大改造!!劇的ビフォーアフター』を覚えているだろうか? 「匠」とよばれる建築士・大工が、問題を抱えた物件を改装していくという内容で、物件の見事な変貌ぶりを楽しめた。これをきっかけに「リフォーム」という言葉を覚えたという人も多いだろう。

住宅の新聞広告で「ビフォー」と「アフター」という言葉がよく使われるようになったり、悪徳リフォーム業者が社会問題として取

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生活の跡からつながるそれぞれの人生

生活の跡からつながるそれぞれの人生

※この文章は、株式会社 NJS日本住宅新聞社で発刊されている業界紙「日本住宅新聞」にて連載されていた書評『ゆりいかの文学住散歩』(2016年12月~2018年3月)の記事を元にしています。できる限り掲載当時の文章の雰囲気を崩さないように心がけながら、一部に加筆修正しています。あらかじめご了承ください。

第一回「生活の跡からつながるそれぞれの人生」長嶋有『三の次は五号室』(中央公論社)

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