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【映画レビュー】「あんのこと」

こんにちは。Yuriです。
企業からの業務委託で、プロジェクト推進やトレーニングコンテンツ制作などをしています。

今日は週末。恒例の映画レビューです。

先日、映画「あんのこと」がAmazon Primeで観れるようになったので、早速見てみました。今日は「あんのこと」のレビューをします。


映画「あんのこと」とは

映画「あんのこと」(2024年公開)は、虐待や薬物依存に苦しんだ主人公・香川杏の壮絶な人生を描いた作品です。母子家庭で育ち、21歳の杏が刑事や更生施設、記者との出会いを通じて希望を見出そうとするも、コロナ禍や家族との複雑な関係に苦しむ姿が描かれます。

実話をもとに作られた映画で、以下の朝日新聞の記事が元となっているようです。

コロナが奪った25歳の中学生活 路上で倒れていたハナ:朝日新聞デジタル (asahi.com)

主演は河合優実さん。有名な作品ですと、大ヒットドラマ『不適切にもほどがある』の純子役を演じた俳優さんで、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。共演は、佐藤二朗さん、稲垣吾郎さんです。3人とも素晴らしい演技をされており、こうした俳優陣の演技もこの映画のみどころのひとつです。特に河合優実さんの演技には目を奪われてしまいました。


感想 たくさんの人に見てほしい、だけど、心が穏やかでないときは避けて!

今年観た映画の中で、一番衝撃を受け、かつ、考えさせられる映画でした。
多くの人に事実として起こっている社会問題について考えるきっかけになると思うので、たくさんの人に観ていただきたいです。

一方、やはり映像というのはインパクトが強いコンテンツです。「あんのこと」では、終始辛い現実を目の当たりにします。特に共感性が強い方は映画を観るタイミングを選んだ方がいいです。心がぐらついているタイミングで観てしまうと辛くなってしまうと思うので、心が穏やかなときに鑑賞することをおすすめします。

以下、「あんのこと」を鑑賞して私が特に印象に残ったことをご紹介します。※一部ネタバレあり

「あんのこと」印象に残ったこと①依存症の難しさ

主人公の杏は薬物依存症です。母親から虐待を受けており、母親の指示で水商売をさせられ、その流れで薬物と出会い、依存症になってしまいました。依存症を克服するためのコミュニティに参加し、少しずつ依存症から抜け出す努力をするも、またつい薬物に手を出してしまいます。そしてそんな自分が嫌になり・・・という負のループに陥ってしまう様子が映画では描かれていました。

一度薬物依存症になると、抜け出すのは容易ではないということがよくわかる描写です。

私自身は薬物依存になったことはないですが、それでも、ストレスの多い生活を続けていると、コーヒーを常時飲んでいる、スマホをずっと見ている、などいわゆる依存行為を続けてしまうことが多々あります。そしてよくないとはわかっているのに抜け出せません。読者の皆さんも、ひとつやふたつこうした依存行為のループにはまってしまったことはあるのではないでしょうか。

薬物が容易に手に入ってしまう環境で、自分が何かに絶望している状況だったらどうでしょうか。絶対薬物はやりません、と言い切れるでしょうか。

薬物依存症は他人事ではないのだという現実を突きつけられる映画でした。

「あんのこと」印象に残ったこと②虐待を受ける子どもの心理

次に印象に残ったのは、虐待を受ける子どもの心理についてです。

主人公の杏は母子家庭で虐待を受けて育っています。ゴミだらけのアパートに、母、祖母と3人で暮らしています。そこで起こっている虐待は、母からの暴力、暴言、ネグレクト、水商売でお金を稼ぐことの強要など多岐に渡ります。

杏はある日その家庭から抜け出し、保護施設で暮らすことを決意します。安心して寝られる清潔な部屋での一人暮らし。ところが、その後とある経緯で母親がその保護施設に訪ねてきて、杏を自宅へ連れ戻してしまいます。映画を観ているこちらとしては「え、自宅戻っちゃうの?逃げて!」とつい思ってしまうんですが、杏は「帰って!」と母へ拒否反応をやや示すものの、結局母と一緒に自宅に戻ってしまうのです。

親子の虐待って本当に難しいものなのだなと痛感してしまいました。結局最後は親に従ってしまう。

私は今子育てをしている最中です。親から子に与えるプレッシャー、子が結局親に従ってしまう心理について、ハッとさせられます。息子たちは親に対してしっかり意思表示をできているだろうか、と。

また、杏は母と祖母との3人暮らしですが「おばあちゃんは守ってくれる存在で好きだ」といったことを発言するシーンがありますが、本当の意味でおばあちゃんは守ってくれる存在なのでしょうか。そのおばあちゃんとその娘である杏の母と親子関係には、何があったんでしょうか。

明確に描かれていないだけに、親子問題や虐待の連鎖について心がざわついてしまいます。

「あんのこと」印象に残ったこと③2020年コロナパンデミックの空気

映画「あんのこと」では、新型コロナウィルスが騒がれ始めた2020年2月~4月頃の空気が如実に描かれています。最初はなんだか中国の感染症かな?という雰囲気だったのが、世界中に危機として広まり、日本でも学校や施設などが一斉に閉鎖されたあのとき。たった4年前くらいの出来事ですが、ずいぶん昔のことのように感じます。あくまでも私の想像ですが、監督は、この映画で風化されてきた当時の空気も記録したかったんだろうなと思います。

あのパンデミック初期の頃、私自身もいろんなことを抱えていました。
次男の出産を終えて育休から復帰しようとした矢先のコロナであり、かつ、長男は小学校入学直前でした。喘息の持病を抱える長男のことが心配で、生活の変化で考えることがただでさえ山積みなのに、コロナで更に考えることが増え、じわじわと追い詰められているような感覚で過ごしていたように思います。

ただ、孤独だったかと言われると、私の場合は全然孤独ではありませんでした。そもそも出産と子育ては心理的に孤独です。そこと比べたら、ネットで知人友人と繋がれる状態のコロナパンデミックは、孤独を感じるほどではなかったわけです。むしろ、パンデミックをきっかけに「オンラインで話そう」みたいな機会も増えて、家族以外の友人知人とのコミュニケーションが増えたくらいです。外出制限もあり物理的には孤独ですが、精神的にはむしろ孤独から解放されたと言える状態でした。

一方、「あんのこと」では、杏はコロナパンデミックで絶望の淵に立たされてしまいます。精神的にも物理的にも、完全に孤独な状態になってしまうのです。そもそも友人がいない。介護施設で一時的に自宅待機となり職場を失った。唯一信頼していた刑事がとある事件で逮捕されてしまい、LINEで連絡しても返信が来ない(できない)状態。

コロナのパンデミックの中で完全孤独に追いやられた人たちの姿をつきつけられ、当時の様子を思い出すとやるせない気持ちになります。

まとめ

映画「あんのこと」のレビューを書きましたが、いかがでしたでしょうか。
とても見どころが多い作品ですが、冒頭でも書いたように、特に共感性が高めの方は、気持ちが落ち着いているときにこの映画を観るのがおすすめです。

既にご覧になった方、これから観てみたい方など、よかったらコメントなどで教えてください。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。


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