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小説

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ちょっとしたお話。
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『ストップ』

『ストップ』

海に来ています。

雪が降っています。

海に吸い込まれていく、雪たち。

静かだ。

人生が止まったみたいに静かだ。

生きたくなるまで、ここにいよう。

『いつまでもいっしょよ』

楽しいことを考えてすごそう。

楽しいことがないときは、美しいものを考えてすごそう。

美しいものはすごい。

私の心に光を灯し、それでいて威張らないのだ。

花を見る。

花を見ていると、花はどんどん大きくなる。

私よりずっと大きくなる。

私は花の中に入る。

概念としての花の中に入る。

そので昼寝する。

花びらは柔らかく、良い香りがする。

花びらを食べる。

ショリショリ食べる。

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『 こちとら夢なもんで』

『 こちとら夢なもんで』

眠い。

とても眠い。

とてつもなく眠い。

昨夜珍しく息子たちが夜中に何度も起きてきたから、ほとんど眠れなかった。

今日一日を忙しく過ごし、そして今、夜の9時。

猛烈に眠い。

眠気に引っ張られる。

ベッドに、引っ張られる。

ベッドに落ちてゆく。

ベッドの下の床に落ちてゆく。

床がパカと開いて、その中の暗闇の中に落ちてゆく。

暗闇の中は、あたたかい。

轟々と川の流れる音がする。

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『街灯と夜道を歩く』

『街灯と夜道を歩く』

夜道を街灯と歩く。

私の隣を街灯が歩く。
だから私の道はいつも明るい。

街灯に話しかける。
私の人生のルールを、願いを、祈りを。

街灯は黙って聞く。
たまに
「ははあっ」
と笑う。

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なんだか嫌な気持ち。

でもそれは誰のせいでもない。

とても頭にくる。

でもそれも誰のせいでもない。

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『スイカ』

『スイカ』

うちには男の子の座敷わらしがいた。
私が子どもの時からずっといた。
スイカが好きでよく盗み食べてた。

3年前にその子はいなくなった。
どこにいるかわかる。

我が子がスイカを志村食べしてる。

30年前に亡くなった私の弟もスイカが好きだった。

弟が交通事故で亡くなったとき、スイカを持っていた。

近所のおばさんからもらった小玉スイカだった。重くて私から随分と遅れて歩いていた。大きな音に振り返っ

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『にーの意味』

『にーの意味』

白猫を飼っていた。
私にしか懐かなかった。
私にだけ擦り寄り、私の膝にだけ乗った。
尻尾の付け根を撫でると気持ち良さそうに震えてた。
死ぬときに、私をそっと見て
「にー」
と鳴いた。
私の結婚式の直前だった。

もし、私が死んだら天国で
「にー」
の意味を知るのが怖い。

でも会いたい。

『私の可愛い看守さん』

牢獄にいる。
つれぇ。
マジでつれぇ。
牢獄なのに外出可。
でも出てったらもっとしんどいから、中にいる。

看守は可愛くて残忍。
寝させてもらえないし、飯も風呂も時間との競争、ピアスごと耳引っ張られる。
そんで毎日すごい怒られる。
何言ってるかわからん。

看守さん、私の可愛い赤ちゃん。