「死んでいて、生きている」複雑なグリーフ:『帰還:父と息子を分かつ国』
アメリカのホスピスで音楽療法のインターンシップを始めた頃、グリーフカウンセラーから最初に学んだことのひとつが、グリーフ(悲嘆)は「曖昧さ」があればあるほど複雑になる、ということだった。亡くなった人との関係性が曖昧だった場合や、死を取り巻く状況が不明確な場合など、遺族のグリーフは複雑になることがある。
リビア人の両親の間に生まれたヒシャーム・マタールもそのような特殊なグリーフを経験した。カダフィの反体制運動のリーダーだったヒシャームの父親は、1990年に姿を消した。その後、ヒ