見出し画像

「表現の自由」とは何? “表現の不自由展”から考える

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の出来事、色々な意味で驚きました。慰安婦を表現する少女像作品をめぐり抗議が殺到し、75日間の予定だったのにわずか3日で幕を下ろしたそうです。

展示されたアートに関しては様々な意見があるでしょうが、両者の意見を出し合い、冷静に議論する機会だったと思います。それが、突然の停止となり、芸術監督を務める津田大介さんが「責任」を認め「謝罪」することに…。

この出来事で気になったことがいくつかあります。

1.自国を批判することは「反日」なのか?

「自国を批判することは反日』だ」というようなことを言っている人たちをツイッターなどでよく見かけます。今回の出来事に関しても、「芸術に名を借りた反日活動」などと言っている人たちもいるとか。

実は先日、アメリカでも似たようなことが起こりました。トランプ大統領が政権を批判する女性議員4人を「反米」と呼び、「もといた国へ帰れ」と言ったのです。

その議員たちは4人ともアメリカ国籍を持つアメリカ人ですが…、マイノリティーの女性達であるため人種差別だということで大きな問題となりました。

それ以来、多くの人が有名な黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンの言葉をシェアしています。

「私はアメリカを何処よりも愛している。ゆえに、いつでもこの国を批判する権利を有する」

"I love America more than any other country in this world; and, exactly for this reason, I insist on the right to criticize her perpetually."
- James Baldwin

政権を批判することは「言論の自由」であり、民主主義において重要な要素であることは言うまでもありませんが、自国を愛しているからこそ批判する、というボールドウィンの言葉が多くの人に共感を呼んでいます。


2.「表現の自由」とは何?

そもそも表現の自由とは何でしょう? 表現には様々な形があり、アート、音楽、言論などはその一部です。American Civil Liberties Union(アメリカ自由人権協会)によれば、報道の自由や集会の自由なども「表現の自由」と解釈できるそうです。

今回の展示会で展示されたアートに対して、抗議した人や反対意見を言った人がたくさんいました。中にはトンデモナイ暴言をはいている人も…。しかし、それも「表現の自由」があるからできること。にも関わらず、相手の「表現の自由」を奪うという行為はおかしいと思いませんか?

リンカーン大統領はこんな言葉を残しています。

「他人の自由を否定する者は、自らも自由になる資格はない」

"Those who deny freedom to others deserve it not for themselves."
 - Abraham Lincoln


表現の自由については、本来さまざまな議論がなされるべきです。例えば、ヘイトスピーチなどをどれだけ規制するかは複雑な問題であり、アメリカでも常に議論されているテーマです。

このような議論をしっかりとせずに、クレームが来たから展示会を中止するという対応は非常に残念なことです。

3.「少女像」を見たくない理由は?

今回の事件で、日本人にとって「慰安婦問題」がいかにセンシティブな問題であるかが明らかになりました。

中には、この問題を否定する人もいるようです。そのような方は、水木しげる氏が描いた「従軍慰安婦」が参考になると思います。

少々話はそれますが、数日前、アメリカ先住民族(ネイティブアメリカン)の居留地に行きました。

そこで博物館に行った際、私はある質問をしました。

「なぜ、アメリカ人の多くはネイティブアメリカンの歴史や文化に興味を持たないと思う?」

博物館員はこう答えました。

「ネイティブアメリカンの歴史や文化を知ることは、アメリカ人にとって気まずい過去を思い出すことになるからだよ。自分がしたことではないけど、先祖がネイティブアメリカンを殺したとか、彼らの文化や土地を奪ったなんて、考えたくないんだと思う。日本人だってそうじゃない? 中国や韓国にしたことを考えたくないでしょう?」

するどいですね。

自国が行った誇らしくない出来事を振り返るのは、楽しいことではない。それは日本人だけではなく、おそらく世界共通でしょう。

ただ、さすがにネイティブアメリカンに関する歴史を否定するアメリカ人に出会ったことはありません…。もし、アメリカ国内でネイティブアメリカンの悲劇を象徴するアートが美術館で展示されたとして、それに抗議する人が出たと想像してみてください。 おそらく、クレージー(気が狂っている)と思われるでしょう。

今回の出来事はそれほどショッキングなことだと思います。

http://www.webasta.jp/serial/Sensou-no-Uta-ga-Kikoeru/

https://yumikosato.com/





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?