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詩 短編

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心情を詩に表わしました。 辛い気持ちを抱える方に。 勇気と笑いを持ちたい方に。
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#日記

たのしいかめむしの会

たのしいかめむしの会

私は人間で唯一、「たのしいかめむしの会」に入会している。

入会者特典として、ときどき「香り(臭い)セット」が届けられる。

先日のテーマは「冬の山、木の葉に隠れての寝屁」だった。

通販のお知らせもあるが、人間が購入できるものは少なくて、大体

「極寒における冬眠用クヌギの葉」とか、「クワガタから逃れる香り」とかだ。

クワガタはかめむしを狙わないにも関わらず、彼らはかぶとむしではなく、クワガタ

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銀の雨

銀の雨

これはむかし、むかしのお話です。

あるところに背徳者がおりました。

たった一つの禁忌を二人で犯してしまいました。

それから彼らはかつての友人や師に追われ始めます。

窓の外は銀の雨

魔物にとっては致命傷

夜があければ狩人たちが、

押し寄せて来る山小屋のなか、

私たちは抱き合って眠っておりました

窓の外は銀の雨

魔物と化した私たちには致命傷

彼は何度も目を覚まし、

夢でなかった

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紅蓮

紅蓮

美しく白い鳥が遊ぶのを見ました。

鳥は白い羽を大きく広げ
天女のように舞い踊り、美しい声でさえずります。

皆が喜び、その姿と声を称えて外に出ます。

私の背中に生えるのは

紅蓮であって羽ではない

焔の如く身体に絡みついても、

凍てつく心は焼かれずに

弾け飛んで引き裂かれる

窓辺に別の鳥が来ました。
寒そうに身体を震わせています。
茶色く小さな羽は
空を飛べないようでした。
ご飯粒を少

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紬(と苦笑)

紬(と苦笑)

「今日旦那様はあの方とご一緒にあの呉服店に行かれたそうですよ。」

「そうなのですね。」

「ついで、だそうでございます。」

「そう。」

私の面倒を見てくれているタネさんが、着物を拡げる。

「ずいぶんはしゃいでおられたようです。」

「そうでしょうね。」

「そうでしょうとも。」

何枚も反物を拡げて大はしゃぎする姿が目に浮かぶ。
あの人は本当に子供のような人だ。旦那様に甘えて、何枚も美しい

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