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銀の雨

これはむかし、むかしのお話です。

あるところに背徳者がおりました。

たった一つの禁忌を二人で犯してしまいました。

それから彼らはかつての友人や師に追われ始めます。


窓の外は銀の雨

魔物にとっては致命傷

夜があければ狩人たちが、

押し寄せて来る山小屋のなか、

私たちは抱き合って眠っておりました

窓の外は銀の雨

魔物と化した私たちには致命傷

彼は何度も目を覚まし、

夢でなかったと私を抱きしめる。

でもこのつかの間の

逢瀬も夜が明ければ終わるだけ

神の目からは逃れられぬ

いつまで逃げても追われる身

神にも祈れぬ背徳者

夜が明けないことだけが私たちの望み

窓の外は銀の雨

背徳者にも致命傷

朝が来れば処刑人が

この戸を開けて入ってくる。


結局私たちは自分たちの足で長い長い時間をかけて線路わきを歩いて

自分たちの処刑場に向かいました。

列車が走っていたのなら、

私たちはもしかしたら、一つの肉塊になれたかもしれません。

ですが、始発が走る前に私たちは処刑場につきました。

驚くべき話ですが、
私たちに唯一無二の味方がいました。

それは彼の妻でした。
人の心には自由がある。
その自由は神が与えたものでしょう。
無理やり引き裂くことに何の意味がある、

そう語ったそうです。

その後のことは知りませんが、おそらく彼は妻の元にもどり

私は追放されて、今に至ります。

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