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ドイツの婚活サイトに潜入し、国際結婚した話⑩

■第10章■ 戦果

彼は日本へ来る前、タイに1週間滞在する予定になっていた。タイと日本はそれほど時差が無く、ほぼ毎日ビデオ通話をしていた。

彼の便は19時30分ごろ日本に着く予定だったので、仕事帰りに空港まで迎えに行く約束をしていた。
空港までの電車の中で、私は初めて会う緊張感だけで無く、 " 33歳彼氏無し、無職の子供部屋おばさん " というネットでしか見た事の無いようなパワーワードのカウントダウンも始まっていたこともあり、本当に震えた。

何度もビデオ通話を交わしていたからか、到着ゲートで待っていた私にすぐ気付いた彼は微笑みながら近寄り、「 ハグしてもいい? 」と恥ずかしそうに聞いてきた。
(この瞬間のことは将来きっと語り合うだろうから、鮮明に覚えておこう。)
そんなことを考えながらハグを交わす間、彼の匂いをチェックした。外国人は体臭がキツイと聞いていたし、一緒に生活を考えると重要なポイントだと思ったからだ。

空港から中心地に戻る電車を待つ間、私は彼に日本土産として折畳み扇子をプレゼントした。
ホテルの近くにある居酒屋で軽く遅めの夕食をとり、その日はそこで終わった。

次の日からはお城や他の観光スポット、そしてオススメのレストランなどを二人で楽しみ始めた。
そして運命の日、京都日帰り旅行。
浴衣姿で京都の街を歩き、金閣寺で彼に「たぶん好きだと思う。」と告白された。
少なくともこれで " 33歳彼氏無し " の烙印は逃れられそうだと安堵した。物理的な距離が縮まり、手を繋いで帰った。

次は東京3日間。
ホテルはそれぞれ別々の部屋を隣同士で取っていたが、もう何が起きてもおかしくない状況だった。富士五合目でキスをして同じ部屋で夜を過ごした。

残りの日本滞在とベルリン旅行は、初々しい恋人同士にはあっというまに過ぎてしまい、帰国後からは人生で初めての遠距離 & 国際恋愛が始まった。

そして目を背けていた現実が待っていた。
迫り来る無職と実家への引越し。
付き合ってから分かる遠い結婚への道のり。
久しぶりに出来た彼氏に浮かれている暇など無く、またひたすら考えなければならないことだらけだった。


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