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昨日と今日の詩 5

昨日疲れ切って詩ひとつだけしか投稿出来なかったけれど、今日は通常運転?かと。あと日記。

【創作詩朗読】君へ
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長めの詩を朗読しました。

#6

謎解きする夢の中
数多のヒントたち
真実が遠のいて
私には解けないまま
朝を迎えた

隣の席の子は解けていた
ヒントばかりがちらばり

それでも答えは導けず
謎は謎のまま
皆わかっていると言うのに

夢から覚めても
迷宮に取り残されて


#7

もうそこにはいない
どこをさがしても
ありえないものは
ありえないまま

かなしみよりも
それが過去になること

そういうことかと
ひとつ納得していて

哀れみも同情も
私は向けたものでは
なくなっていった

あの日綺麗に笑った私
綺麗なひとつの幕引き

それでよかった


#8

あふれてしまったもの
こぼれてしまったもの
もう水槽にもどることは無い

あの日の完璧な環境にいて
それは幸福であったこと

それ以上はなくて
それ以下もなくて

わたしのうしろのものたちが
ただ、影になって切り離されて

いま、
わたしはひとりで立っている


#9

こわれたものが
自動的に戻るのを
待ち焦がれる季節は
もう来やしない

頬杖ついて
いつも同じ場面を
再生して巻き戻し

フィルムはすっかり傷んでしまった

ノイズまみれの記憶が
本当と嘘で補完される

エンボス加工された
記憶の表紙を撫でて

素敵な一冊にため息をついて


#10

臓器ひとつひとつに名前がついて
それから私と呼ぶものに名前がついて
固有名詞で覆われて世間に立っていた

誰から生まれて
誰かと友達
誰かと喧嘩
輪の中にいて
輪の外にいて

輪郭以外の形を鏡以外で知っていく

そうしているうちに名前は停止する

ある人は長かったと
ある人は短かったと


#11

湿った空気が吹いている
背中を冷やして嗤ってる

何を言ってやればいいというのか
わたしたちは自我の向こうで
互いを待ちわびているというのか

それは御伽噺だろうか
それは夢物語だろうか

私はわらうことはないが
真剣に聞くこともなくて

冷ややかな風とすれ違い


面接に出掛けた。必要書類が増えて一時間ほどサボりながらやったがその後二時間で作り終えた。

経歴が並ぶ。昔は経歴がなくて色々引っ張り出していた。ここ数年、色々やった、資格も取った。だから履歴書なんて簡単に埋められた。

面接で緊張することは無い。ただしマスク越しの面接は表情が伝わりづらいのと声がこもるので結構頑張って話すと早口になっていた。

切ったばかりの髪の毛の髪質は変わり果て、ストレートだった髪の毛にクセがつくようになり、会社に入る前には前髪も整えてやらねばならなかった。

変わった。けど、繰り返しそうな私に気付いている。いい子、良い子、理解ある、頑張る、一所懸命、私は出来ます。問題ありません。差し支えありません。承知いたしました。かしこまりました。

私は変わった。でも人を前にすると戻る。詩情は隠れて、社会性のために生きた私が全面で高らかに宣誓している。

在宅で働くにも、仕事はどれもやりたいものではなかった。書きたいことしか書きたくないのなら、ニーズは満たせない。詩は、どうなるんだ。書くよ。きっと。変わらずに。だって、結局私が本音を吐いた時それらは詩にしかならなかったから。きっと書くよ。書き続けるよ。

私は詩人だと私が一番わかっている。詩人のままで生きていたら認められなかったから、社会的な私を作って生き延びた。生きることは何よりも優先されるだろう。そして同時に命を投げ出したくもなっていた。社会的な私が悲鳴をあげていた。

繰り返さないためにはどうすればいい。

わからない。

詩を人生の中心に置きたいのに、金を作るのは社会的な私でなければ出来ない。

明日から詩集を販売する。私は気に入っている一冊となっている。気に入らないものを売ったりなどしない。

社会的ニーズ、実用的で、わかりやすくて、役に立つ。それは私の芸術には無い。人間国宝の星が私にあるのか無いのか、ホロスコープの読み方なんてわからない。占いのアカデミックな部分が苦手だったから、占い師になるのは諦めた。プロの占い師に鑑定してもらった時に、その自信に満ちた声や話し方、占いの技術を見て、自分にはなれないとわかった。

過去は過去になってゆく。お金は必要。また詩集を作るのにもお金は必要。だから働く。そう、創作のためにとりあえず働く。だから働く。そう、想い続けられるのか?私は雇用関係の上ではとても重い女だから、雇用されるというのは結婚と同義なんですよ、前職とは泣く泣く別れたのですよ、あんなに愛していたのに、いえ、愛し合っていたのに、別れるほかなかったんですよ…なんて言えやしないけど。振り返れば、恋人、家族に求めるものを全て仕事に求めていた。だから破滅した。

アットホームじゃなくていいよ。ちゃんと仕事教えてくれるなら。残業無しとか書かなくていいよ、問題は残業代が発生するかどうかだよ。プライベートの時間も充実するかどうかなんて会社が気にすることじゃ無いよ。

仕事内容がいかに簡単かとか、スキルアップとか、そんなのどうだっていいよ。似たような社名が何件もヒットするから貴社が何の事業しているのかがまるでわかりません。何売ってるのかとか、誰に何のサービスしているのか、何で利益得ているのか、志望動機カスカスなるから情報ください。

なんて、求人情報に書いてあることなんてあてにならないのは知っている。正社員採用したいのに自社の情報とかHPとか一切載せないのはいかがなものか。社会的私がぷんすかしている。詩を書いて、生きていたい。

命を賭けて?人生を賭けて?そんなこと私は軽々しくは言わない。死体に詩が書けるのか?

結論の出ないことに結論をつけて、人に話している。立板に水。よく喋る口。面接は存外得意だ。聞かれたことに即答できる。その場で考え答えを出せる。プレゼンの類も得意だったから。そうして社会的な私が身を乗り出すほど、私との分離を感じている。

ここに吐き出せばマシになるだろうか?詩を書き続ければ、私は私を保てるのだろうか?もう破滅には身は持たない。物言わぬ何かにならないように。

追い詰めてやらないで。追い込んでやらないで。頼むからと、私に言っても、気が立つ私がいる。怒りに近いエネルギーが世間を渡るには必要だった。しかし怒りは押し殺される。常に笑顔で和を大事にして、何を言われても傷つくことを許さない私が、かつて私を潰したというのに。

時間をかけて取り戻した私をもう手放してはならないと警笛が鳴っている。警笛が聞こえるうちはいいだろう。それらの叫びもアラートも、黙殺するほど私が現実を生き出したのなら、もうこれらのことも過去にされてしまうのだろう。

私はどうなる。どうなりたい。答えは出ない。私は止まらない。



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