雪水雪技(ゆきみずそそぎ)

詩人。随想など。 ▫️「週末詩集」(有料)→更新停止中。 各種活動・応募作品雑誌掲載…

雪水雪技(ゆきみずそそぎ)

詩人。随想など。 ▫️「週末詩集」(有料)→更新停止中。 各種活動・応募作品雑誌掲載歴等 → https://lit.link/yukimizusosogi

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予感

「この会社に来年勤めている自分を想像出来ない」その予感は当たる。 予感以外は大凡妄想である。 願いも私の妄想である。 妄想は妄想として、知らないうちにお焚き上げされて、私の手を離れていく。 願いにしがみついた時、願いは逃げてゆく。 ずっと夢見ていることは、夢だから美しい。 叶えば現実であって、逃れようの無いものだ。 可愛げも消えてしまう、かつての夢に、今度は幻を見て逃避して、捕まり、息詰まる箱の中でかつて愛した夢と見つめ合う。 予感めいたものは空から来るようで、畢竟、

    • 【詩集】北極では誰かが大人になる

      『遠距離という季節』 No.11 誰かの恋慕のために泣いてくれ 夕暮れから聲が出て、そう言われた 涼しい風が吹くから、誰かが泣いたとわかる そのために流すために、わたしには涙腺がある そのために、わたしは、泣けるのだろうか 夜がくる前に、わたしの、瞳は答えをださなければ 漂うだけの、曖昧な、かなしみを、ただ見ていたら 雷が追いかけてくるような気がした 【隣人の向こうのために】 No.12 夕立にて、わたしと雨は、分離されていることに 気がつくのならば、夏は遠くなっ

      • 【詩集】夜景のために死んだものたち

        『夜景のために死んだものたち』 No.1 このよるが暗いのは、わたしの正気が失せたから 冷汗をながして、よるのわたるたびに、くりかえす 電飾に死す、わたしのただしさ、わびしさ 豪華絢爛のイルミネーションの為に死んだ蛍 指先を灯した、蝋燭、いつかの街灯 このよるは、暗い、まぶしくて、暗い 消灯、わたしのまぶたのうらに、ちらつく 失せし正気 電飾に死す わたしのよる、暗く、暗く、 【夜景のために死んだものたち】 No.2 この窓に結露するのは、いつの涙だろう 天の河には

        • 【詩集】6月、ラストオーダー

          『6月、ラストオーダー』 No.201 ひるさがり、 見知らぬ子供の泣き声が響いている 団地の隅に、咲いている名前を知らない草花 せつないのは、 誰も知らないことを知ってしまうこと 何も見ないままで消えていけたのならば 正午に、ひとつひとつを知ってゆくこと それは、刻々とさみしさをつのらせること 青空を、ただ眺められていたころ 人の声を、ただ聞いていられたころ 【ラウンドスケープ正午】 No.202 遊園地に行くと、不安であった 動物園に行くと、不安であった

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          【詩集】呼び止められず蝉時雨

          『るゝのテキスト』 No.192 惜しみのないほどに瑠璃の涙を流して ただいちめんに、海のような心象をうつして 蒼風にはからめて、ひねくれたままのうたうたえ わたしが瓶の底で酸欠に苦しんでも その瓶は迷わず流してほしい 誰にも届かない手紙ほどうれしいものはない 瓶は割れた、破片は海の中に、 互いを忘れながら、ゆられていて、 だれかの瑠璃のような涙に溺れている 【るゝのテキスト】 No.193 船に積んだガラクタが、 どこかの島では宝になる 骨董にかくれた誰かの地

          【詩集】呼び止められず蝉時雨

          【詩集】汝の幸福をささげよ

          No.182 神経は擦り切れ わたしは摩耗した身体を よこたえながら 知らない人を思って、泣いている そうして、 わたしの不幸のために 皆が、幸福になれたのならば 世界はいっとう、おだやかになり わたしはきっと、成仏できる きっと天の国は、ゆるしてくれる そうじゃなければ、なにが善でなにが悪か だれも裁けないではないか 【汝の幸福をささげよ】 No.183 蝉は泣いている気がした いのちの日数をかぞえられるのなら それは偶数だろうか、奇数だろうか 偶数生まれのわたしは

          【詩集】汝の幸福をささげよ

          【詩集】傘をさして、青空を諦め

          『傘をさして、青空を諦めて』 No.169 わたしは恐怖と共に心中をはかる しかし恐怖の生命力はゆるさない とてもつよい力でわたしを抱き上げる とてもつよい力でわたしを突き飛ばす わたしを苦しめている恐怖が わたしをこの世にとどめている 今日なにも書けなくなったのなら、終わり 今日なにも書けなくなったのなら、出掛けよう 煙草を吸いながら、相合傘なんていいとおもう おまえを生んだわたしはおまえと手を繋ぐ わたしにはその権利がある おまえはわたしに付き合わねばならない 終わり

          【詩集】傘をさして、青空を諦め

          【詩集】卵を割って、世界に触れて

          『鬼火に手をかざして』 No.155 天を仰ぐとき、地に伏せるとき わたしの秤は、どちらに傾くだろうか 冥界に行くときの、肉体は置くか連れてくか なにも決めてはいないのだけど 天国、地獄、ジャック・オー・ランタン? カボチャを抱こうか、カブを抱こうか、 どちらでも、この手を引いてくれるのか? わたしの番はまだだから、静かにしている他なくて 待つのはいつも、つらいだけ 仄暗いわたしの表情にも灯りを授けてくれるなら 天使でも悪魔でも怪異でも、わたしは手を取るから 厄介者あつか

          【詩集】卵を割って、世界に触れて

          【詩集】供養のためには呟きが必要だった

          『まつりのあと』 No.138 スズメは瓦の屋根の上 飛び跳ねながら鳴いている 今日は子どもがひとり 瓦の屋根を見上げては ちいさな手をたたいている 夏になった屋根は光っている スズメは相変わらず飛び跳ねて かわいい声で鳴いている 子どもは今日もひとりのまま シャベルを持って外に出た 熱くなった屋根の上 スズメは飽きたように飛び立って 子どもはとうとうひとりになって バケツを持ってぽつねんと たったのひとりで立っている 【ひとりぼっちの空にはスズメ】 No.139

          【詩集】供養のためには呟きが必要だった

          【ご連絡】note投稿について

          Xの方でもご連絡いたしましたが、今後について、下記画像の通りとさせて頂きます。 作品数については、自分でもナンバリングしておりますが、全ての作品を公開しているかどうかの自身の確認の為であります。 長々とすみません。 重ね重ねどうぞよろしくお願い申し上げます。

          【ご連絡】note投稿について

          【詩集】蝶をちぎる獣

          『蝶をちぎる獣』 #113 桜色した酒を飲む人は 血管ひとつがからむことが 信頼であるとのたまっていた ぶちぶち、ぶちぶち、 絡みつこうとする血管をちぎりながら 桜色の酒をすすめて、麻酔がわりにしている 神経回路に花の種を落として 蔦にからめてしまえばいい、 ぶちぶち、ぶちぶち、 雑な剪定だけで十分で、絆と呼ぶには滑稽だ たくさんの花が咲くように、わたしはそそぐ 桜色の酒を、呑気に、飲みながら、眠る人間、 麻酔が切れる頃には、 名もなき草花になれるだろう そのとき

          【詩集】蝶をちぎる獣

          【詩集】鎮痛のために紡がれて

          #91 夜はふけてゆくこと 朝はやってくること いったい誰が決定したのだろう カーテンさえ、開けなければ、 夜も朝もないではないか それはゆるされない カーテンの向こうを確認しない 罪と罰になりますよ、と メッセージの通知に起こされる 知らない誰かからの知らない文字列で 毎日、知らない言語がおくられてくる 僕は、國語は苦手でもパズルは得意だ だから、毎日解読をつづけている 端末に、ドアを蹴破り石板ごと、 在る時は、洞窟にとばされて、 このメッセージを解きつづけている そうし

          【詩集】鎮痛のために紡がれて

          【詩】ここはいずこか、なんどきか

          ボートをひとり漕ぐひとを 橋の上からながめてる 遠くからどこぞの店主が叫んでる おーい、おーい、おきゃくさーん、 ボートをひとり漕ぐひとの 心をなにと推しはかろう わたしにわかるものなどない 橋の上から眺める景色に 郷愁はなく、感想もなく ただ、ながめているわたしという、真実 店主の声は遠のきつづける おーい、おーい、おきゃくさーん 必死さのない、抑揚のない、単調なトーン そのままで叫びつづけるどこぞの店主 ボートは見えなくなってしまい 店主の声も聞こえなくなり

          【詩】ここはいずこか、なんどきか

          【詩】初夏、白紙に戻し

          名前のない木から飛ぶ鳥に 横縞に張り付く花粉たち あてどもなく、初夏に飛ぶ 風はどうして音を立てるのか たまにやかましいという声もする ひとつひとつに名前をつけても 誰もその名を呼ばなかったのなら 花粉は落ちてゆく 鳥は孤独に飛びつづける あの木の名前、あの鳥の名前、 誰も知らずに、行先知れずに、 風の音はやかましく 誰ぞの名刺が飛んでゆく その名前を何百という人々が空に見た それでも、誰ぞの名前を呼ぶ者はいなかった 名刺と鳥はすれ違い、誰もその瞬間を見なかった

          【詩】初夏、白紙に戻し

          【詩集】A study

          真四角の緋色を見つめて わたしの声色は染め上げられて よく届く、よく通る、 よく当たる、よく気付く、 あずけられた、真四角の緋色 誰かのために、毒薬を飲む運命 ひとつの水鏡、確定しえない出来事 いらぬ勘ばかり冴えてゆき わたしの、未熟な推理にて、 遺体は、午前0時、天に召された 真四角の緋色をあけわたされて 戸惑いすらも、顔に出さずに 皮肉の一つも、声に出さずに 虫メガネを持った少年たちの見せ物とした それの価値を、わたしは、思うことはない 輝く瞳に、緋色は、彩度

          【詩集】まだら月夜

          桜花は雨と共に、季節にあやつられ 散乱するように、わたしにはちらかされ 部屋の中ではあたまをかかえて 花の季節に目玉をうごかして ひとひら、ひとひら、 写実にとらえて ふるえあがる 夜更けには、雨に濡れた月に、花びらがひたりと まだらなままの満月を見上げた そのとき、逃げてしまった、わたしの理性 踊れよと、呼ぶ、月影からのあやかし、 こうして、わたしの理知は、ふきとばされ、 呼び込まれた、あやかしの手をとり、 あやうい足つきで、バレエを踊る、 まだ散る、ひとひら、ひとひら