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詩まとめ

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noteに公開した詩をまとめています! 作風は変わりますが、抒情を大切にして書いてます。
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記事一覧

【詩】砂糖は溶けて、無情は蔓延る

【詩】砂糖は溶けて、無情は蔓延る

友情は砕かれた氷砂糖のように
寝かしつけられた果物酒の中に

(私の寂寞は、日の出に明け渡した)

いつの光を浴びて
氷の中にそそがれる
その味に何を思い出す

僅かながらの心残りも
今夜のひとくちに消えて

薄情な心は明日に向かう

今年の果物酒も深く眠る

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【詩】あぶく回想

【詩】あぶく回想

来た道を悔やみ
行く道を憂いて
いつまでも進めない背中を
追い詰めながら慰めている
時間の流れにもがいて
選択の数に溺れている

泡沫の希望たち
揺蕩う暦を
川底から
眺めて

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【詩】緑の霧雨の

【詩】緑の霧雨の

雑踏は歌であった
背中の悲哀を追いかける
世相へのセンチメンタル

モスグリーンの背広たちは、
霧雨のコンクリートジャングルに、
浮かんでは消えてゆく、
浮かんでは消えてゆく、

朽ち果てた歌の
苔の生えた初心の

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【詩】夕暮れに消えた息

【詩】夕暮れに消えた息

震える指で動かすスマホ
突き刺す寒さと夕暮れが
こわくてこわくてバスを待つ

なにもなにも追っては来ない
それをゆるさない自分の手は
背中にナイフを突き立てて
早く進めと唸っている

安寧に近いところで
危機をつくりだして
脅しながら生きている

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【詩】木枯らしの嘆息

【詩】木枯らしの嘆息

かつての激情は大地に降り
もう空を覆うことすら出来なくなり
私の言葉の意味は空気と変わりなく
それを空虚と言うだけの熱情も失せ
ただ、濡れた大地と晴々とした天幕
さみしい、その四つの音に
さみしい、その意味がのらない
さみしい、真実であるのに透明
私は一人になる、それを許さない世間と
もう何も交わす言葉も持たないまま、
許されたい気持ちを引きずりながら、

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【詩】流れて沈んで

【詩】流れて沈んで

目を細めてつくる朧月
涙が天の川になれたのなら
私の霊魂の行く末を知れた
綺麗に泣けたことなど
今世にあっただろうか
こめかみの痛みの続く真夜中
私を置いて鳴いていて秋の虫
私が消えてしまえるのならば
早まる日没すらもありがたかった

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【詩】とめどなく継がれて

【詩】とめどなく継がれて

今朝、
張り替えた壁の奥に
とおいとおい脈拍に
涙は、繰り返される
生きながらえるから、
生きながらえるから、
壁を濡らしても

今夜、
とおいとおい脈拍に
嗚咽を繰り返しても
生きながらえ、
生きながらえ、
かすかに残る脈拍に
絶えず動けと心臓に
張り替えた壁の奥に

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【詩】銀杏並木に遊んで

【詩】銀杏並木に遊んで

秋の空へ向かう
靴音は、高く、高く、

銀杏並木には思い出が
枯れ果てる頃には郷愁が
高く高く天高く山々を眺めて

深い深い口笛の音が
後ろに見る濡れ落ち葉を這う

秋風は吹く、地に伏せながらの
冷たい空気を、鳴らして、鳴らして、

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【詩】雨天汽笛が鳴る日には

【詩】雨天汽笛が鳴る日には

遠くで汽笛が鳴るから明日は雨です

呆然と青い駅に佇む私です
車窓に女の影が見えています

何処へ行くのですか
心のゆくところです

俯いておられますが
ただの影絵ですから

霧雨に走り出す汽車
呆然の青年は私です

遠くで汽笛が鳴るから明日は雨です

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【詩】不確定フィルム上映

【詩】不確定フィルム上映

踏切を待ちながら、
暑くなった、サドルを撫でて
何気ない言葉たちは、
蒼天へと消えていく。

大事なことも、他愛のないことも、
同じ時間をかけて、消えていく。

のこされた、熱、ふぞろいな、秋風。

過ぎた夏、
虫の聲はどうして優しかったのだろう。
大切なものが、
遠ざかってゆくことに、抗うとき、
どうして、
ひぐらしだけが鳴いているのだろう。

瞼、次の、カット。

目を閉じて、開いて、
相変わ

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【詩】誰の目をうたう

【詩】誰の目をうたう

祖母の平家に似た
打ち壊され障子も襖も
全てを張り替えていた
もう誰も
そこにいないのに
生活の痕跡を見る
何を見ている
私の目はどこにある
思い出を夢に見ている
秋の夜長に
何処にも
そんな思い出はないのに
伽藍堂に、何を見ている
私の目はどこにある
感傷を風景に見ている

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【詩】焦燥はいつの季節

【詩】焦燥はいつの季節

寒いゆうべの、心細さは
春光をもとめはじめる
冬の発芽のようなもの
私は俯き、日光は辿々しい
求めているのはいつの陽光?
相変わらず、影ばかり見つめて
冷たい朝方も、埋もれたままに迎え
辿々しく話す言葉で守る心の頼りなさ
なぜもっと、泣き出さなかったのだろう

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【詩】紅くなる言の葉、焼却の秋

【詩】紅くなる言の葉、焼却の秋

生き延びて、今年の秋を吸う
寂寥と焦燥と命がひりついて
とりとめもない、感情に撃たれ
荒野の上に倒れては、這いつくばり
生き延びて、
仰向けになり秋空を眺めている
煙たい空気に安堵する心を持ち
泣きながら、
生んだ言の葉が、紅葉している
生き延びる道を選び、秋を吸う
今だ。

【詩】こうこうと情念

【詩】こうこうと情念

雪がふるころには
何処にいても、
故郷があらわれる

吹雪の向こうには、
弱い私が立っている
それから、
故郷を愛せるかを問う
「わるいことが大きかった」
「うれしいことも大きかった」
もはや、愛も憎しみも持っていない
故郷は故郷の冬に埋もれて
私は私の冬に立って