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更年期障害と診断されて

僕は性別を変えた。LGBTのT。FTMトランスジェンダー。女で生まれて男に戸籍を変えた。

42歳。仕事は昼夜逆転の水商売。地元名古屋の錦三丁目で飲食店を経営して16年目を迎えた。
経営者といっても毎日現場に立つ。

身体の状態は以前の記事「トランスジェンダーの更年期障害」で書いた通り、戸籍だけは男になったが、身体は女としても男としても足りないものが多い状態であり、それを3週間に1度の男性ホルモン注射で補っている。

心だけ男の気持ちなだけで、生まれた性別の女としては五体満足の身体で産んでもらった。

その五体満足な身体にメスを入れた。性別を変える為、子宮卵巣を摘出した。その為、生理が無くなるというメリットを得たが、僕の身体はそれを機に女としての更年期障害状態になった。

ホットフラッシュはすぐに症状が出た。
イライラすることも出ていたかもしれないが、まだなんとかコントロール出来ていたと思う。
ホルモンというものは目には見えない。だからこそ、身体に起こる不具合をすべてそのせいにすることが嫌で意地を張っていた。

どうにもできないしんどさ。

今までの様にコントロールできなくなった。油断したら全て飲み込まれてしまうような不安感。身体がしんどいと心も沈む。

闇の中でもがく日々。

太陽を浴びるようにと言われても、僕は人が寝ている時間に働くことで生計を立てている。この、やっと確立した「自分らしく生きる」軸であるライフスタイルを変えなければいけないのか?という悩みもまた不安感に苛まれるスピードを加速させる。

それに合わせて42歳という歳相応の人生の悩みが拍車をかける。
親の事。家族の事。病気。仕事での立場。

セクシャリティが関係ない所でも悩みはかさんでいく。

20代で子宮卵巣を摘出した後、不具合が出だしたころから「更年期状態」とは言われていたが、先日ホルモン治療をしていたただいている名古屋大学付属病院で血液検査を受けて、先生に
「脳が動いてない。しんどかったね」と異常に高い数値のグラフを見て多血症で後回しにしていたホルモンの増量を決めてもらった。

ハッキリと診断されて、ショック・・・ではなく、僕は安心した気持ちになった。

漠然とした体の不調。心の不調。誰にどう伝えることも理解されることもない現実、気合と根性も通用しない、自分でコントロールができない怖さ。

それは性同一性障害だと診断された時の安心感に似ていた。

誰の目にも見えないけど、自分だけはハッキリと感じる不安。不調。
僕だけじゃない。病名がつく安心感。

そしてそれに対しての治療があるという希望。

僕は救われた気がした。

そして、自分が感じていた脳が停止している感じ。は気のせいでなかったこと。それがホルモン量の不足からきているというハッキリとした原因が分かった事。「これは辛かったね」と自分以外の人にわかってもらえたことが何より一番嬉しかった。

真っ暗な闇に覆われかけていた僕の心に少しの希望が見えた瞬間。
これからもこの更年期障害という病には長く悩まされるかもしれないけども、その都度その都度自分が出来ることをやっていこうと思う。

調子が良い時にやれる事をやっておこう。


そう思って今は毎日を生きている。悪くなることに怯えるんじゃなくて、調子が悪い時には休めれるように、出来るうちにやっておくことを意識している。

朝起きてどこも痛くない幸せ。気力がある幸せ。
当たり前だった毎日が当たり前じゃないことを知ったから、感謝できる。
調子が良い時は誰とでも良いけど、そうじゃない時に助けてくれた人。会いたくなる人。声をかけてくれた人を僕は忘れないだろう。

更年期障害の怖さは計り知れない。もしかしたらまだ入り口なのかもしれない。

でもそれは誰にもわからない。毎日に、そして傍に居てくれる人に感謝しながら、とにかく僕は今を生きる。

2022.7.19(火)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第10回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!

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