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『光る君へ』第5話を観て ※ネタバレあり

みなさん、こんばんは。
NHK大河ドラマ『光る君へ』もう5話です。
2024年1月も、はや終わってしまいました。
第5話のタイトルは『告白』
とうとう六年間胸の内に納めていた秘密をまひろが道長に明かすという回ですね。


 平安時代の噂話について

前回の4話の最後にショックのあまりにまひろが昏倒したことから、無事に(?)上流貴族の殿方からのお手付きはなく、むしろ「鬼に憑かれた縁起の悪い舞姫」という不名誉な噂の主となってしまったまひろ。
しかし平安時代ではテレビや新聞はありませんでしたので、噂話が人々の会話の種、というほどに実に様々な噂が流布しておりました。
噂というのは伝えられるごとに尾鰭もついてゆくもので、気が付けば元の話とまったく違うものになっていたりして。。。
ともあれ今回のまひろの不名誉な噂も75日も過ぎればすっかり忘れ去られてゆくでしょう。
その程度のものなので、市井で仲良くなった散楽(町辻で風刺劇を披露する集団=実は盗賊団)の真秀から噂の君とからかわれても、まひろは呆れるだけで意にも介しません。
こういう風潮なので、何かしくじって嫌な噂をたてられても、挽回するような働きをすれば、それが上塗りされて、
「なーんだ、やっぱりただの噂だったんじゃない」
というように鷹揚なのが平安時代の好もしいところです。

 第5話 冒頭

さて、話を冒頭に戻しましょう。
面白かったのは眠り続けるまひろの噂を聞きつけたのか?
下女のいとがあえて呼んだのか?
怪しげな袈裟を着けた下賤な僧と如何にも嘘っぽい憑挫(よりまし)の老女の二人組。
何しろ平安時代は闇には鬼が潜んでいると真剣に信じられていた時代。
どこか体が痛めば呪詛を受けたのではないか、と不安になり、普段と違うことがあるだけでも何かの予兆かと心配したものです。
平安時代にはご存知、陰陽寮なる部署があり、そこに所属する陰陽博士たちが星を読んで暦を作り、貴族たちはその日の行動をまずは最初に暦を見てから決めたものでした。
貴族達には陰陽師がついておりましたが、市井の人々にはそうした専門家はおりません。
そこで我流の呪いや祈祷などをして日々の生計を得る者たちが横行したのです。冒頭の二人組はまさにそうした辻占的な、ひいては押しかけ祈祷をして食料を恵んでもらっていた輩にすぎません。
中には本当に霊力などある者もいたかもしれませんが、そうした術者には自然と優れているという噂が流れ(またもや噂)、裕福な町人や貴族からもお声がかかり、お抱えの術師として出世したのです。
この風潮を鑑みるに、今回の二人組は十中八九インチキでしょう。

私の毎回の和みの存在は、高杉真宙さんが演じるまひろ(こちらもまひろなんですよね)の弟・惟規です。
「姉上~」
と甘えて床にゴロリと寝転がってしまったり、時には姉の為に真剣に「三郎」なる人物を尋ねて歩いたりと、とても憎めない楽天家でチャーミングな弟君です。
(読み方は、おとうとぎみ、ではなく、おとうとクン、でお願いします)
「こんなに寒いのに水浴なんて姉上が死んじゃうよ」
と非常に常識的に下女のいとを阻もうとして、結局はまひろが水浸し、という一服の清涼剤的な存在で、これからも和ませてほしいところです。
次回の感想でも真宙君のことが書けますように・・・。

 告白

これはもう、前述した通りですが、まひろが道長に兄・道兼の六年前の凶行を糾弾することです。
道長はあれほど、「俺に歌はいらない、手紙はいらない」という姿勢でしたが、まひろに自分の本当の身分が知れたことで、衝撃を受けて倒れたのではないかと心配して手紙をしたためした。
あまり上手な手蹟(て)ではありませんでしたが、劇中の道長らしく、柄本さんの素を活かされたのでしょう。ニクイです。。。
しかし、視聴者のみなさんも知っての通り、話はそう単純なものではありません。なにしろ道長の兄が人殺しであることを告げるのですから。
父の為時には知られたくないと、まひろは場所を破れた無人の邸に移して道長を呼び出してもらいます。
この邸をふと見て、夕顔が源氏に連れ出されて亡くなった廃屋を思い出したのは私だけでしょうか・・・?
(六条の邸、でしたしね)
脱線しましたが、真実を告げられ、一族の非道を謝る道長ですが、
「道長に謝ってほしいんじゃない。道長を恨んではいない。道兼を絶対許さない、恨んでやる、呪ってやる」
というまひろに、道長は、
「(兄を)恨んでいい、呪っていい」
と慰めます。
あれだけ兄に虐げられた道長ならば、さもあらん、ですね。
その後道兼を「お前が虫ケラだ」と殴り倒した道長に胸のすくような思いでしたが、
(体も大きくなったんだし、もうやられるか、よくやった道長!)
老獪な父・兼家は道長の男気を見て取って喜んでいます。
思えば、柳が風をいなすようにのらりくらりとした処世術を身に着けた道長には、それを覆すところを見せてしまったので、これから先、父にどのように利用されるのかが心配になりました。

さて、ここでひとつの可能性を考えずにはいられません。
もしも道長が手紙の通りに為時の邸にまひろを訪れていたら、どうなっていたのだろう???
という筋の可能性です。
今は花山天皇の側近となった為時ですが、道長のほうがはるかに身分が高いのです。
しかも人気の右大臣家三人ご子息の一人!
道長は身分と名前を偽っていたことを詫びるつもりだったといいますが、何も嘘はついていないのです。
まひろに真実を告げようとしたところ、宣孝に邪魔されただけなのです。
単なる誤解なので、為時は道長を丁重にもてなし、娘も差し出す、というようなことになったのではないでしょうか。
むしろ息子(惟規=真宙くん)の強い後ろ盾になると、「でかした、まひろ!」とドーンと道長の側室になる背を押したに違いありません。
まぁ、話が変わってしまうのでこれは避けるべき事態で、六条の破れ邸に緊急退避、ということになったのでしょう。

 今週の花山天皇ともろもろ

なんだか毎週のコーナーになりそうな花山天皇の在り様・・・。
あいかわらずお盛んで、弘徽殿女御の体がもたないという、恐ろしいお話でしたが、改革を独断で進める姿に反発する公卿たちが殺気立っていましたね。しまいには弘徽殿女御腹にできる御子を呪詛で呪い殺せと命じられる安倍晴明。。。 不穏です。
関白を始め、左大臣、右大臣の結束で、左大臣の姫の倫子と右大臣の息子の道長の婚姻同盟が見えてきました。
倫子さまも道長の噂に関心をもたれた様子。
父には逆らえない道長が倫子を娶るという構図が見えました。

話は変わりますが、散楽の真秀(毎熊克哉さん)が徐々に存在感を増しておりますね。
その身の軽さから最初はどこぞの間者か、零落した武士の子孫だろうか、などと考えておりましたが、その思想も行動もフリーダムです。
どこか達観したところがあり、常に俯瞰して世の中を見ております。
まひろに風刺劇をしていることを指摘されても、そんなことでは世の中が変わらないことぐらいわかっているのだ、と冷静です。
平安時代では毎日の食べることに必死な民草にあれば、上つ方々の政治の話や国のあり方などを考える余裕などありません。
それでも義憤を持った気概のある者もいたでしょう。
真秀はそうした代表のように思われます。
最初はなんとなくまひろと道長と関わりを持ち、たまに助けてくれたりもしましたが、散楽を面白がり、貴族としてからかい半分に近寄った二人の純粋で誠実な姿に真秀の様子も変わってくるのかもしれませんね。
もしかして盗賊とバレて捕えられ、何かの展開があるのかもしれません。

栓子の動きも気になりますし、次週は清少納言も登場するようです。
『二人の才女』、ってもちろんその二人でしょう。
では、また来週☆


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