令和源氏物語 宇治の恋華 第百四十四話
第百四十四話 浮舟(八)
万事が順調かと思われておりましたが、宿縁とは突然に残酷な顔を見せることもあるようです。
正月元旦の祝いが終わり、匂宮が若君の顔を見たくて二条院に戻っていると、折悪く浮舟からの手紙が中君あてに届けられました。
仕えはじめたばかりの小さな女童が自分の手柄のように小松とそれに結び付けられた髭籠(ひげこ=竹で編んだ籠)を手にして浮舟からの藍色の薄様の包み文と改まった立て文(右近の君からの手紙)を手にして走って来ました。
「中君さま、お手紙でございます」