「おじいちゃん、おばあちゃんがいないカンボジア」青年海外協力隊になる前、2か月間1人旅した話⑰
↓前回(ベトナムのホーチミン・シティからカンボジアのシェムリアップへ)
シェムリアップに滞在している間は、ほとんど毎日雨が降っていた。
だから、雨が止んでいる隙をねらって遺跡巡りをした。
カンボジアのシェムリアップといえば、世界文化遺産にも登録されているアンコール遺跡!
シェムリアップには、クメール王朝(9世紀~15世紀まで存在していた王朝。今のカンボジアの元になった)時代の遺跡がたくさんある。
遺跡の宝庫だ。
シェムリアップで泊まっていたユースホステルの近くには、アンコール遺跡を巡るツアーを提供するツアー会社が軒を連ねていた。
その中から良さげなツアー会社のお店を探して、店に入った。
店に入ると、中学生くらいの女の子が店番をしていた。
「いらっしゃい。私はツアーのことよくわからないから、お父さんが戻るまで待ってて。もうすぐ帰ってくるはずだから」
どうやら、このお店はこの女の子のお父さんがやっているらしい。
女の子に言われた通り、しばらくお店で待っていた。すると、10分くらいしてからお父さんが戻ってきた。
・・・お父さん、想像してたよりも若いな・・・30代後半くらいでは・・・?
いや、むしろ少子高齢化の日本で生まれ育った私の感覚がおかしいのかも?
なんてことを思いつつ、とりあえず明日のアンコール遺跡巡りツアーに申し込んだ。
次の日は、色々な国から来たツアー参加者と一緒にアンコール遺跡巡りを楽しんだ。
アンコール遺跡の建築物は独特だ。
ベトナムや中国の遺跡は中華圏のデザインが感じられたけれど、カンボジアに来るとその「中華圏」感が一気になくなる。
どこの国にも例えられない、中国とも、ベトナムとも、タイとも違う感じ。
そして、いたるところにレリーフが施されてある。
こんな精巧なレリーフが彫れるなんて、遺跡が造られた当時の技術力の高さに驚くばかりだ。
そして遺跡を1つ見終わるごとにやってくる、カンボジアの子供たちによる「お土産買って!」の嵐。
小学校低学年から高学年くらいの子供たちが、
「お土産買って!1つ1ドルだよ!だめ?じゃあ2つで1ドル!3つで1ドル!」
という具合にものすごい勢いでお土産を勧めてくる。
添乗員さんの話によると、今日は土曜日で学校が休みだから、家族の商売を手伝っている子供が多いそうだ。
シェムリアップを観光していて思ったことがある。
レストランや土産屋の店員さん、ツアー会社で働く人、ナイトマーケットで客引きをする人・・・みんな若い。
私はカンボジアにいる間、「おじいちゃん」「おばあちゃん」を1人も見なかった。
調べたところ、カンボジア国民の平均年齢は24歳だそうだ。
ちなみに日本国民の平均年齢は49歳(2020年時点)。
私は旅行していた当時23歳だった。
日本で23歳っていうと「若いね」と言われる年齢なはずだけど、カンボジアでは平均だなんて・・・。
どうしてカンボジアでは若い人が多いのか?
その理由の1つは、1975年から1979年にかけてカンボジアを支配していた政党「クメール・ルージュ」のポル・ポト政権が大量虐殺を行ったことにあるそうだ。
「人間らしい原始時代の生活が良いものだ」という「原始共産主義」のもと、今まで人間が築いてきた文明や技術を否定した。
その「原始共産主義」に基づき、知識がある人(医者や教師、留学生など)から知識があるように見える人(文字が読める、眼鏡をかけている)まで、次々に虐殺していった。
1975年から1979年の4年間の間に、200万~300万人が虐殺されたそうだ。当時のカンボジアの総人口は約800万人だった。
「カンボジアで大量虐殺があった」ということは聞いたことがあったけれど、まさかカンボジアに数日滞在しただけで「年配の人がいない」と肌感覚で分かるほどの規模であることに驚いた。
中学生や高校生のとき、私は「社会」とか「歴史」の授業が一番苦手だった。
暗記ばっかりでつまらないし、「将来何の役に立つの?」と思っていた。笑
でも、「歴史を学ぶって大事だ」と旅をしていてよく思う。
歴史から学ばないと、人は同じ歴史を何度も繰り返し、同じ過ちをしてしまう。
もしポル・ポト政権のような恐怖政治が再び生まれてしまったらと思うとゾッとする。