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自由律俳句(その5)

(掲題の画像は、2020年1月末のニース海岸の朝焼け。冬の地中海は暖かく、穏やかだ。)

〇2023年4月10日、葉桜の季節になったが、空は快晴。私の好きな雲はまったくない。公園の散歩が心地よい。

排気ガス 木ひとつへだてて 鳥の声

どこに行ったと雲に聞けば 自分の心に聞けという声が聞こえる

草花が話しかける この道は終わりなし

〇2023年4月20日、スギ花粉が終わり、ヒノキ花粉も少しとなる。さらに、有害物質入りの中国からの黄砂攻撃も終わったようで、マスクを外した後の空気が新鮮だ。

地下鉄を出て マスクを外す 肺が喜んでいる

前に汗をかいた日を忘れていた 4月の暑い夕暮れ

肌に感じる高温と湿気 これでビールが旨くなる

〇2023年4月23日、日曜の夕方。息子がビール販売の出店をしている天王洲アイルのイベントに行き、遠路訪ねてきたブログ仲間と痛飲する。

赤子指さす空の先 轟音追いかけておおきな機影

体操着の舞台衣装 騒々しい稚拙な音 踊る人々の不思議さよ

群衆の中の孤独 ならぬ騒音の中 電話の向こうが聞こえない

柴犬の瞑想 通りすがりの犬の匂いに しばし覚醒す

小さなカップのどぶろく一杯 残る米粒らに 命が満ちている

ビール飲む青空の下 賑わう人々の話し声 生きることが戻ってきた

ビールとワイン 酩酊また酩酊 饒舌と放言をひとり自省する

〇 2023年5月16日、真夏のような気温の中、立ち食いそばを喰う。

ぬるい汁に ふやけた麺 早食いできるうれしさよ

〇 2023年5月16日、ホームセンターの芝で幼稚園児が遊ぶ。

かくれんぼしようよ 隠れる先はあの世かな

蝶を追いかけ 幸せを探したのか 我が終わりし昔

〇 2023年5月23日、元職場の知人たちは皆再雇用、再就職など、金を稼いで健全だ。しかし、不健全で不健康な私は、適当な仕事すら就けないでいる。

比べるな 比べれば より哀しくなると慰める

この自由 なにと引き換えたのか 薫風に訊く

けっきょく なにものでもない自分 それがなんだろう

霞で生きられるなら 心配不要と ただ願うだけ

酒は飲む飯は食う これぞほんとの山頭火かな

〇 5月27日、ラグビーを見に秩父宮へ行く。銀座一丁目と外苑前の出口が、いつの間にか変わっている。銀座も神宮外苑も、多くの見知らぬ内外の人たちがあふれ、足元がおぼつかない老人である私は、邪魔者であり、部外者にされている。

人並にもまれ 違和感にもまれ 私の知る東京はない

人の目がみな猛獣にみえる わが身の狭さよ

変わるから東京なのだ それでも変わらぬ銀座通り

こちらが場外です という声が聞こえて 明日はダービーか

外苑前 はつらつと歩くは早慶戦 よちよち歩きはラグビー場

もう年下ばかりに囲まれて 秩父宮ラグビー場

大音量の音楽とアナウンス 私の知るラグビー場はもう消えた

ビールの売り子 いつの間にか楽しげに仕事している

花園みたいなヤジを聞きたい そんな気がする 秩父宮

〇 5月29日、月曜と雨、洗濯ものが乾かない。

雨の日と月曜には カーペンターズだったな この気分

湿度が暑さに比例して 梅雨が近い この肌に見える汗


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