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目指したのは、下町の母の味〜マミーズ風アップルパイ

2年間の地味生活@トーキョー

私は2017年に日本に帰国して以降、2年間東京で一人暮らしをしていた。

帰国が決まった時期、2017年夏に話は遡るのだが、あらたに東京暮らしを始めるにあたって、フランスにいるうちに住まいを見つけなくてはならなかった。

社会人になってから6年ほど住んだのが、調布という、ゲゲゲの鬼太郎通りのあるとてものどかな街。京王線の特急が止まるとはいえ、通勤時の満員電車に朝晩、魂を吸い取られていた。

それに、今度は一人暮らしといっても、目に入れてもいいほど可愛いおイヌ氏が私の帰りを心待ちにしてくれている。3.11のときのように、もしものときに帰れないなんてことがあっては大変だ。

ということで、今度こそは、交通の便。職場(新橋汐留近辺)へのアクセスを第一に、頑張れば徒歩でも帰れるところ。それとペット可の条件さえ満たせば、多少家賃が高くても目を瞑ろう。

フランスからインターネット経由で探しまくり、港区ボーイのソウルメイトR君に代わりに内見をしてもらって決めたのが、三田の商店街内にあるワンルームマンションだった。

商店街といっても居酒屋ばかりだし、騒音も気にならなくはなかったけれど、トータルの住み心地は最高だった。

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マンションの前の大通りからは東京タワーも見えた


住所は一応港区になるのだが、当時の私の生活といえば、平日は終日仕事。

デパートが閉まる時間あたりに終われば、銀座まで歩いて、銀座三越か松屋銀座のデパ地下で値下げ品を狙って帰宅。銀座三越のB3Fと松屋銀座のB2Fの生鮮食品売り場には大変お世話になった。

たまに飲みにいくとすれば、大体新橋。今にも天井が崩れ落ちてきそうな通称おやじビルも、瓶ビールのケースを有効活用している雑多系居酒屋も大好きだった。もう完全におっさんである。

休日は休日で、一応ランニングなどもちょこちょこしていたが、坂が多いのでランニングには向かないなとわかると、近所にある港区のスポーツセンターでひとりストイックに泳いだり。

天気の良い日は、イヌの散歩がてら築地市場まで繰り出し、場外で生牡蠣やお魚系を買って、有楽町交通会館前のマルシェに寄って野菜を仕入れて帰宅。

要は、山手線の田町〜浜松町〜新橋〜有楽町の中だけで生活が完結していたことになる。なんという世界の狭さだ。

港区○○のようなイメージと完全に正反対の、地味すぎる生活を送っていた。


私は下町が好きなんだ

そんな地味生活な私が、2年間で自発的に複数回訪れた場所といえば、浅草もしくは谷根千。ザ・東京の下町である。

浅草は外国人案内も含めしょっちゅういったけれど、一番の目的は合羽橋商店街の釜浅商店をはじめとする道具街。あの界隈は本っ当に楽しい。天国だ。

もうひとつが、谷中・根津・千駄木界隈。山手線でピュッと日暮里まで行って、商店街をブラブラ散歩するのがとても好きだった。

その際、必ず立ち寄ったのが、マミーズ・アン・スリール。

ちょっと言葉的にはちぐはぐな印象だけど、まあそれも手作り感があってよいのだろう。

ここのアップルパイは、甘いものにあまり食指がうごかない私でもなぜか買ってしまう。

パイ生地がサクサク美味しくて、りんごがごろごろしていて、甘すぎず、クリームがまた美味しくて、シナモン控えめで。

なんだろう、絶妙なバランス。なぜかまた食べたくなってしまう味で、行けば必ず買っていた。

HPを今初めてちゃんとみたけれど、

アップルパイが苦手な人でもハマってしまう“黄金のバランス”
一度知ったらまた会いたくなる母の味です。

って書いてある。まさにこれだ。黄金のバランス、母の味ってやつ。

そもそもなぜ急にマミーズを思い出したかというと、週末、ちょうど東京在住の妹がマミーズのお店を訪れたらしく、お店の外観写真を送ってくれたからだ。

一気によみがえる東京生活の記憶、ということで、ついでに東京生活を少し回想してみた。

タイミングは抜群、さあ、つくってみよう

さて、現実に戻ろう。そういえば、消費しなくてはならないパイ生地もりんごもあるし、ついでに食べどきを見失った洋梨も2つある。

そしてちょうどその日の朝届いたタルトサーバーも活躍できそうだし、タイミング抜群。

ということで、マミーズ風を目指してアップルパイを作ってみることにした。

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こちらが届いたばかりのタルトサーバー

cuisinellaというフランスのキッチン・バス周りの会社が、tarte géométrique (幾何学柄のタルト)のコンクールをInstagram上でやっていて、私の今期自信作「ルバーブのタルト」を投稿したら入賞したので、こちらを景品として頂いた。

いただけるものはなんでもうれしい、やったね。

マミーズ風を目指すアップルパイの材料

直径16cmの底一体型を使用。底取れタイプでももちろん。

【パイ部分】
・パイ生地;市販のもの。週末アペロールで使ったものと同様。日本では、普通のスーパーで売っている日清製粉とかのパイシートで。
・卵黄:1つ分。これに水大さじ1強を加えたものを照り出しとして使用。

具のりんごは、通常シナモンが入っているけれど、私のOtto氏もシナモンがあまり得意でないので、あえて省くことに。

【りんごのフィリング】
・りんご:4から5個くらい。前述のとおり、今回は熟れすぎたポワール(洋梨)を使う。
・グラニュー糖:250gくらい
・レモン汁:大さじ1
・水:りんごが半分つかるくらい。私は全部つかるくらい水を入れたら入れすぎてしまったので…。

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下に敷くクリームは、週末アペロールで作ったクリームチーズが少し余っていたので、カスタードクリームと合わせてみることにした。

【チーズカスタードクリーム】
・卵:1つ
・グラニュー糖:60g
・コーンスターチ:大さじ2
・クリームチーズ:40g
・牛乳:200cc
・バニラパウダー:あれば少々

マミーズ風を目指すアップルパイの作り方

1、りんごのフィリングを作る。りんごの皮を剥き、種部分をくりぬく。

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2、りんごを気持ち大きめにスライスして、鍋に入れ、グラニュー糖と水とレモン汁とともに中火→沸騰したら弱火でアルミホイルで落とし蓋をしながら煮込む(20分くらい)。

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出来上がったら、ザルにとって冷ましておく。

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3、チーズカスタードクリームを作る。卵、砂糖、クリームチーズをすり混ぜ、混ざったらコーンスターチを入れる。バニラパウダーも少々加えて、さらに混ぜる。

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バニラパウダーはこちら。バニラエッセンスでもよいと思う。

4、鍋に牛乳を入れて、弱火で沸騰しないように温める。人肌くらいに温まったら、3のボウルに牛乳を少しずつ加え泡立て器で混ぜる。その後、ザルでこしながらボウルの液を鍋に戻す。

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5、弱火にかけ、ゴムベラでたえずかき混ぜる。しばらくするとだんだん固まってくるので、ひたすらかき混ぜて、ちょうどいい硬さになったら鍋かボウルかバットにあげて粗熱をとる(かたまりができてしまった場合はまたザルでこせばいいと思っている←油断してかたまりができた人)

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美味しすぎて味見が進む

6、クッキングシートをしかない場合、型にバターを塗っておく。
市販のパイ生地を型にしき、周りのはみ出した部分をカットして、フォークなどで底部分にピケをする。

重石があればのせて、あらかじめ余熱しておいた170度のオーブンで15分くらい空焼きする。ちなみに私は、今回うっかり空焼きをしなかったので、出来上がりが生焼けっぽくなってしまった。ということでここ重要。

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7、空焼きした生地にクリームをまんべんなくしき、その上にりんごを並べる。マミーズ風に、中央を盛り上げるように並べていく。

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8、余った部分のパイ生地を帯状にカットして、表面に交互にかける。中身が見えないくらい帯で覆うのが本場だけど、そこまでの量は余っていないので、控えめに。側面部分の生地を織り込んで、中途半端に余った生地でさらに縁をぐるっと巻いて、ナイフで切り込みをいれてこんなふうにした。

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9、パイ生地表面に、卵黄に水大さじ1強を加えて混ぜた卵液を刷毛で塗り、180度で40分から50分くらい様子を見ながら焼く。表面がこげてきたら、アルミホイルで上だけ覆う。

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表面がこんがり焼けたら、できあがり。

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失敗に、学ぶ

生き急いで空焼きをしなかったせいで、一切れ食べてみたら底が生焼けだった。

あああああこれで食べられないなんてショックすぎる。

なんとか回復策はないものかと、型から出した状態で、オーブンの下部分だけ熱が入るようにして10分くらい焼いてみた。

今度は完璧だった。

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そして、冷めたものよりも、ちょっと温かいほうがパイが生き生きして、美味しい。

具はそのままでも食べられるようにしてあるから、要はパイ生地にいかにちゃんと火を通すかがポイントなのだな、と、失敗から学んだ。

下町の母の味、なんとも奥深い。
次回の帰国時、いつになるかまったくわからないけど、また食べに行こう。



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