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【採用関係者注意】リファラル入社でも労働裁判が起きる!?あの外資系IT企業で起きた、リファラル注目の流れにも水を差してしまう話

リファラル採用が市民権を得て、ますます広がっています。

リファラル採用のイメージは、社員1人1人がリクルーターとなって候補者を紹介。魅力的な組織づくりをして、代表者以下社員が積極的に自己開示した発信をし、マッチング率が高く、採用コストをゼロに抑えられる。良いことづくめに見えてきます。

しかし、です。

「リファラル採用を行っている企業の中には、紹介者に報奨金を渡すケースもあるが、報奨金が高すぎると、小遣い稼ぎに、よく知らない相手に声をかけてしまうなんてこともありえるかもしれません。 」
「深い関係性でない人が入ってくるだけでなく、誘われた人は入社後にギャップや不満を感じる。やり方を間違えると目的から大きく外れる上、社内にアンチが増えることにも繋がるのです。」
(アースメディア代表 松本 淳さん)

巨大外資系IT・セールスフォースの調査報道では、発達障害者差別と事実上の退職強要(雇い止め)で提訴した元契約社員は、提訴時の会見と筆者による聞き取りから、リファラル採用で入社していたことがわかっています。紹介した社員は別の部署でした。同社では近年リファラル採用が年間採用人数の約半数を占めるようになっており、紹介した社員には旅行券を渡すというインセンティブを出すことになっていたことが、採用支援媒体による同社採用部門へのインタビュー記事からわかっています。この事案では紹介した社員がインセンティブ目的で声をかけていたとは判断できませんが…

一方で、元社員が2018年11月に入社する前の2018年6月、同社は障害者雇用率大幅未達で厚生労働省の社名公表リスクを抱えていました。元社員の配属先の上司は、障害者雇用に強硬な反対姿勢を示していました。

一般に、社名公表リスクが迫ると、社内の理解が不十分なままスケジュールに追われての採用ありきの雇用となってしまい、本人にとっても企業にとっても残念な結果となってしまうことがあります。

被告側である同社はいまなおハラスメントを認めておらず、謝罪や和解金の支払いをも拒否しており、和解は困難とみられています。

当該企業は係争中を理由に対外的に説明せず、立派な採用広告記事を多数発信し続けていますが…。

Forbes日本版広告記事で、元社員が退職強要に追い込まれた後の2021年4月に配信された、同社採用部門へのインタビューでは、「常に数字を意識しているので、まるでセールスのよう」としつつ、「採用数の目標を追うあまりに、『4つのコアバリュー』(筆者注・信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等)に共感する人材であるという軸がブレてはならない。同じ基準で面接を実施できるように面接官へのトレーニングを実施するなど、グローバルで共通のしくみ作りを進めている」と述べられていました。同社採用マネージャーはまた、提訴のニュースがあった後の同年10月に行われたForbes日本版のオンラインキャリアイベントで「採用段階で同じ志を持つ人のスクリーニングを数年前から実施しており、グローバルで共通のインタビューテンプレートを用意している。4つのコアバリューにマッチしているかどうかに基づいて評価しており、必然的に志の合わない人は採用しないということになる」と述べていました。

障害者雇用への反対姿勢を示した原告の上司は、2017年入社でした。果たして、採用されるはずのない、「平等」のコアバリューに全く相容れない言動を行う人物が紛れ込んだのはなぜでしょうか。筆者はこれを同社採用部門関係者にメールで問い合わせましたが、回答を得ることはできませんでした。

「2013年頃まではベンチャー企業の色合いが強く、確固とした企業文化も浸透していなかった」「社風や価値観にマッチングしないメンバーは退職してしまい、今よりも社員の定着率は高くなかった」「小出伸一日本法人会長兼CEOが就任した2014年以降、企業文化や価値観を浸透させ、マネジメント方法を見直し、人材育成のしくみを整えた」「選考の際に、経験やスキル要件を満たすことだけでなく、4つのコアバリューに共感する人材であるかどうかを測る評価項目を新設した」「その結果、離職率は大幅に低下した。しかし、いまだに過去のイメージが色濃く残り、“今のセールスフォース・ドットコム”を正しく理解されていないのでは?と感じる場面は少なくない」(同社採用関係者・Forbes日本版インタビュー記事)

2022年3月の採用支援媒体Wantedlyのインタビュー記事では、面接におけるスキルとバリューの質問配分は、「経験・スキルが6割、バリューが4割」と述べられていました。

同社日本法人の企業規模の推移を見ると、2009年には従業員数205人、2010年には252人、2011年には349人、2012年には443人、2013年には503人、2014年には575人、2015年には699人、2016年には957人、2017年には1109人、2018年には1329人、2019年には1676人、2021年には2946人(いずれの年も6月1日時点。東京労働局のデータより)。2021年12月31日には3551人(同社がリンクトインで発表)と、急激なペースで拡大してきました。リファラル採用は2012年頃から行われており、リファラル採用者がエージェント採用者に比べてKPIや勤続年数が良かったことから、年を追うごとにリファラル採用の割合が高まっていき、2018年の採用支援媒体のインタビュー記事では毎年採用人数の約半数を占めるようになったといいます(同社採用部門)。

セールスフォースは、リファラル採用が成功した事例の1社として伝えられてきました。しかし、「リファラル採用はマッチング率が高い」というイメージは覆ることになりました。


「リファラル採用を行う場合は、会社のことが好きな社員が、一緒に働きたいと感じる相手に声をかけること、という軸をブラさないやり方を模索する必要がある」という松本氏の言葉のとおりです。

リファラル採用が注目されるところに水を差してしまうようですが、リファラル採用でもこういうことはないとはいえない、と警鐘を鳴らします。


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