“一番大事な「教材」はキャンパス”。コロナ禍で中退する大学生が増えているなか、大学も人と人の触れ合いの大切さを改めて認識し、動きだす。
コロナで中退者は増加
3月はじめに文部科学省が発表した「学生の修学状況(中退者・休学者)に関する調査」では、コロナ禍を理由に中退してしまった大学生が増えていることが報告されています。
「学生等の修学状況(中退者・休学者)に関する調査」【令和3年12月末時点】
文科省は、「引き続き状況を注視するとともに、大学等と連携して学生へのきめ細かな支援を継続して実施」とコメントしていますが、
ご注目いただきたいのは、増えている中退の理由です。
「経済的困窮」という理由は国の支援の効果があったのか、意外にも減少しています。
増えているのは、「学生生活不適応・修学意欲低下」です。
言い換えれば、大学生活やキャンパスライフになじむことができず、勉学の意欲を失って中退してしまった、ということです。
大学に対する魅力を見出すことができなかった、と結論付けられるかもしれません。
精神的なダメージが大きかった、といえるでしょう。
本来であれば、キャンパスには、友人や先輩との楽しい語らいや交流がたくさんあり、悩みや愚痴も言いあえるような機会がいっぱいあったはずです。
もしかすると、“人と人”の出会いがもっとあれば、こうした悲劇はもっと防げたのでは・・・そのようなことを思ってしまいます。
雑談からイノベーションが生まれる
コロナ禍によって、全国のキャンパスが閉鎖となったり、入構規制がかけられたりするなか、大学はオンラインを駆使して、なんとかカリキュラムを走らせることに躍起になってきました。
しかし、そこに、何か大事なことを忘れてはいないか。
東京工業大学(東京都)の益一哉学長は、雑誌のインタビュー記事のなかで、コロナ禍で一斉にはじまったオンライン教育の効用やメリットに言及しつつも、次のように語っています。
益学長は、対面での授業のあとの“雑談”の大切さにも触れています。
「雑談がきかっけとなって、共同研究が生まれることもあるんですが、その機会を失ってしまった」
イノベーションは何気ない雑談から生まれるんですね!
いま一番必要な教材とは
先日、このような広告に目が留まりました。
明治大学(東京都)はこの春、和泉(いずみ)キャンパスに「和泉ラーニングスクエア」を開設。そこには、さまざまなルームやスペースが設けられ、同級生や先輩とがいろいろなスタイルで学び合え、あるいはリモート授業に没頭できたり、さらにはキャンパスにいながら安らげるような空間が提供される、ということです。
ここで私が注目したいのは、このキャッチコピーです。
「いま、一番必要な教材は、キャンパスだと思う。」
キャンパスが教材——目からうろこが落ちるようなコピーですね。
人と人が出会い、イノベーションが誕生するキャンパスそのものが、
学びを生み出す。
大学自身がリアルなキャンパスの大切さに気づき、
メッセージ化した表現である、と言えましょう。
スマホアプリで接触機会をなくす
2021年春に誕生した神奈川大学(神奈川県)のみなとみらいキャンパスの図書館では、日本の大学図書館で初めてとなるスマートフォンアプリを使用した図書の貸出サービスを開始しました。
スマートフォンアプリ導入によって、貸出手続きのためにカウンターに立ち寄ることなく、人と人との接触の機会を減らすことで、新型コロナウィルスの感染予防策としての効果が期待されるとのことです。
感染対策は講じながらも、キャンパスや施設をなんとか使えるようにする。
一時は、閉鎖や入構規制が相次いだキャンパスでしたが、ようやく、
キャンパス本来の機能である“人と人”が集う空間を、着実に復活させる兆しが見えてきたといえるでしょう。
感染対策は忘れてはいけませんが、キャンパスに集う意義、集まることができるありがたさを改めて噛みしめたいですね。
再び、キャンパスのあちこちで、新たな出会いがたくさん生まれ、雑談の花が咲き、イノベーションが誕生する・・・
そのような風景がよみがえることに期待しましょう。
次回は、コロナ下における、大学生たちのバーチャルなつながりへの
取り組みを見てまいります。
#大学 #大学生 #大学生活 #キャンパスライフ #コラム #コロナ禍 #スマホアプリ #大学教育 #教育 #大学図書館 #東京工業大学 #明治大学 #神奈川大学 #リモート授業 #代々木ゼミナール #代ゼミ教育総研