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文科省も後押しする国際共同学位プログラムは 「ジョイント・ディグリー」へ…

「ダブル・ディグリー」を含めた、海外大学との「国際共同学位プログラム」については、政府や文科省も、かなり以前から積極的に推し進めてきた経緯があります。

中央教育審議会の大学分科会では、平成20年(2008年)9月11日文部科学大臣からの諮問を受け、「中長期的な大学教育の在り方」について検討した折、「第二次報告」のなかで、国際的な展開を意識すべき、との指摘がなされました。

「大学制度は国際的なものであり、その検討に際しては国際的な動向に留意しなければならない。ヨーロッパにおける今日までのエラスムス計画やボローニャ・プロセス、また、アメリカの大学の教育研究上の優位性を背景とした国際的な活動など、教育研究活動が国を越えて展開される中、我が国の大学行政にも、アジア域内をはじめとする国際的な展開を意識した検討と対応が求められる」

中長期的な大学教育の在り方に関する第二次報告
平成21年(2009年)8月26日 中央教育審議会大学分科会

さらに、同報告のなかで、「ダブル・ディグリー」が「組織的・継続的な教育連携関係の強化」に資するとされ、学生にとっても短期間で複数の学位を取得するメリットに言及しています。

単位互換制度の活用により、我が国の大学が、国外の大学とともに、それぞれ学位を授与する、いわゆるダブル・ディグリーを授与することが可能となっているが、これにより、大学にとっては、組織的・継続的な教育連携関係を強化し、魅力的な教育プログラムの構築に資することが考えられる。
学生にとっては、我が国と海外の大学の複数の学位を取得する際、それぞれの大学の学位プログラムを履修するよりも短い期間内で、両方の学位を取得することが期待できるなどのメリットが考えられる。

中長期的な大学教育の在り方に関する第二次報告(抜粋)
平成21年(2009年)8月25日 中央教育審議会大学分科会

国際共同学位プログラムに関する調査研究 (令和2年(2020年)3月、公益財団法人未来工学研究所)によると、平成28年(2016年)の段階では、国内でダブル・ディグリーを導入している大学は、国立大学 50 大学、私立大学 117 大学にも上っていることが判明しています。私立大学の数がとても多いのがわかります)

さて、中央教育審議会は、平成30年(2018 年) 11 月の『2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(中教審第 211 号)』のなかで、
「明確な人材養成目的に基づく学位プログラムとしての大学院教育の確立に向けて、分野横断的なコースワークや海外大学とのジョイント・ディグリー、ダブル・ディグリーの充実などに取り組むべきである」
と、指摘し、「ダブル・ディグリー」のみならず「ジョイント・ディグリー」も推進すべき対象として挙げています。


ジョイント・ディグリーの新たな展開

そこで、現在、徐々に増えつつある「ジョイント・ディグリー」に目を移してみましょう。

ジョイント・ディグリーはダブル・ディグリーと、どこが違うのでしょうか?

中教審の大学分科会が示したガイドラインでは次のように定義されています。

<ジョイント・ディグリー(JD)>
連携する大学間で開設された単一の共同の教育プログラムを学生が修了した際に、当該連携する複数の大学が共同で単一の学位を授与するもの。
<ダブル・ディグリー(DD)>
複数の連携する大学間において、各大学が開設した同じ学位レベルの教育プログラムを、学生が修了し、各大学の卒業要件を満たした際に、各大学がそれぞれ当該学生に対し学位を授与するもの。

「我が国の大学と外国の大学間におけるジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリー等国際共同学位プログラム構築に関するガイドライン」
平成26年(2014年)11月14日中央教育審議会大学分科会
大学のグローバル化に関するワーキング・グループ

文科省は、平成26年(2014年)11月に大学設置基準等を改正し、日本と海外の大学間における国際共同学位プログラムについて、我が国の大学(短期大学を含む)と外国の大学が共同で教育課程を編成する制度である国際連携教育課程制度を施行し、これによって、外国の大学と共同で単一の学位記を授与するジョイント・ディグリープログラムの設置が可能となりました。

前述の「国際共同学位プログラムに関する調査研究」では、導入第1号となった名古屋大学をはじめとする国立大学や、私立大学では立命館大学においてジョイント・ディグリー制度が設けられていることを明らかにしています。

ジョイント・ディグリーは、大学院を中心に導入されていることがわかります。

 そのようななか、立命館大学(京都府)の「ジョイント・ディグリー・プログラム」は、珍しい学部レベルの国際共同学位プログラムとして、注目です。

立命館大学・国際関係学部がアメリカン大学と協力し、日・米の大学で初、学部レベルは日本で初めてとなるジョイント・ディグリー・プログラムで、2つの大学が1つのカリキュラムを編成し、共同で学位を授与するという、新しい国際連携プログラムです。

学科名称は「立命館大学・アメリカン大学国際連携学科」。

卒業時には両大学が共同で1つの学位「学士(グローバル国際関係学)(BA in Global International Relations)」を授与するとのこと。

学生は、アメリカン大学で2年間、立命館大学で2年間学ぶことになり、
「キャンパスを移動しても一貫した1つのカリキュラムを両大学で体系的に学ぶ」ことになります。


コロナで一転、開店休業状態に

ここまで、学位についての新しい取り組みについて、見てまいりました。 
しかし、ご存知の通り、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、こうして盛り上がりを見せていた海外大学との共同学位プログラムは、一転窮地に追い込まれることになったわけです。
多くの大学・大学院に設けられた海外大学との連携制度は、いわば開店休業状態に陥ってしまいました。

現在、いまだ新型コロナウイルスの感染は続いているものの、出入国の規制緩和により海外渡航が徐々にはじまり、留学に向けてスタンバイしていた学生たちの留学が再開されはじめました。

立命館大学・国際関係学部のジョイント・ディグリー・プログラムも、例外ではなく、甚大な影響がでました。

 千葉大学では、海外大学留学が一部再開され、久しぶりに学生たちが海外の大学に向かったとのことです。

ようやく、学生たちの往来ができるようになったようです。
よかったですね。


大学の未来像にも影響が

「ダブル・ディグリー」、「パラレル・ディグリー」、「ジョイント・ディグリー」・・・
こうした国際共同学位プログラムがとりもつ海外大学との連携

コロナ禍によって一度は水を差された形にはなりましたが、
今後、大学間の垣根を超越し、連携を強めるだけでなく、
新しい大学のカタチが生まれるきっかけになるのかも
しれませんね。

そして、もう一つ、忘れてはいけないのは、
これから大学進学を考える受験生や、保護者にとっても、
大学間の連携や授与される学位の状況は、大学選択の重要なポイント
なり得る、ということも、付け加えておきましょう。

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