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  • J LAB ch0 #ワークショップ

    • 138本

    コミュニティメンバーによるワークショップ関連の記事を投稿する場所。

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【後編】選択の自由という呪縛:「道」を見出す、「固有生」を生きる(安冨歩『生きるための経済学──〈選択の自由〉からの脱却』)【基礎教養部】

本記事の下敷きとなっている本の簡潔な推薦文(800字書評)を以下のサイトで公開しています。是非ご一読ください。 〈選択の自由〉からの脱却「固有の生」を生きるには これまでの前編、中編を通して、「エリート不幸論」を題材としつつ、それが内包するエリート的イデオロギーの本質、すなわち〈選択の自由〉の追求とその盲点について、『生きるための経済学』(以下「本書」)の議論をベースとして語ってきたつもりである。 なぜ選択の自由が問題となるのか。それは一言で言えば、「今この自分」という

    • ジェイラボワークショップ第72回『書評ふりかえり』【図書委員会】[20240701-0714]

      本記事は、ジェイラボ内で2024年7月1日から7月14日にかけて行われました、図書委員会主催の第72回ジェイラボワークショップ『書評ふりかえり』のログになります。 各見出しの★印は図書委員による各メンバーの書評振り返りの投稿であることを示します。■はその他のコメントなどです。note記事化の都合上、コメントの順序などで一部時系列が反映されていない箇所がありますがご了承ください。 Day 1■あんまん 今日から2週間、図書委員会のWSです。よろしくお願いします。 このWS

      • 【中編】選択の自由という呪縛:自由の牢獄(安冨歩『生きるための経済学──〈選択の自由〉からの脱却』)【基礎教養部】

        本記事の下敷きとなっている本の簡潔な推薦文(800字書評)を以下のサイトで公開しています。是非ご一読ください。 選択の自由という呪縛エリート不幸論の派生としての「東大<医学部」論 前回の記事で、「エリート大卒不幸論」の実質的な内容について述べた。それは、東大をはじめとする難関大を出ればたくさんの優良な「選択肢」を取れると思っていたのに、実際には必ずしもそうとは限らないし、むしろエリートの肩書きに束縛されて身動きが取れなくなってしまい、「逃げ出したいのに権力にしがみつかざる

        • 【前編】選択の自由という呪縛:エリート不幸論から始めて(安冨歩『生きるための経済学──〈選択の自由〉からの脱却』)【基礎教養部】

          本記事の下敷きとなっている本の簡潔な推薦文(800字書評)を以下のサイトで公開しています。是非ご一読ください。 東大卒不幸論?最近、「東大卒不幸論」とも言うべき主張を目にする機会が増えた気がする。あるいはもっと裾野を広げて「高学歴なのに〜」の類のあれやこれや、と言ってもいいかもしれない。〜には大体「仕事ができない」とか「低収入」などが入り、しばしば発達障害などの社会生活を営む上で不利な気質と関連づけて論じられている。実際、東大卒の人生を考える会さんの以下の記事をはじめとして

        【後編】選択の自由という呪縛:「道」を見出す、「固有生」を生きる(安冨歩『生きるための経済学──〈選択の自由〉からの脱却』)【基礎教養部】

        • ジェイラボワークショップ第72回『書評ふりかえり』【図書委員会】[20240701-0714]

        • 【中編】選択の自由という呪縛:自由の牢獄(安冨歩『生きるための経済学──〈選択の自由〉からの脱却』)【基礎教養部】

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        • J LAB ch0 #ワークショップ
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        記事

          【読書】池上英洋『西洋美術史入門』【基礎教養部】

          本記事は私が所属するコミュニティの活動の一環です。 自分の「歴史」歴 高校時代の私は理系で、受験で使う社会の選択科目は多くの理系選択者の例に漏れず地理であった。もちろん世界史の授業もあったはずだが、まともに聞いていなかった覚えがある。当時は歴史を「受験に使わないから」という理由で全く重要視していなかった。効率が求められる受験勉強においては、特に熱心な理由がない限りは習得のしやすい(≒暗記の必要性が薄い)地理選択が基本であり、「暗記科目」としての歴史は当時の自分の目には入っ

          【読書】池上英洋『西洋美術史入門』【基礎教養部】

          【読書】野崎幸助『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』【基礎教養部】

          書くことがないとんでもない本があった! ……と、わざわざnoteで取り上げているからには言いたいところだが、本書は単に自分が普段絶対に読まない類の書籍というだけで、実際にはよくある感じの本──ビジネスチャンスを見つけて裸一貫から成り上がる痛快自伝本──であると思われる。コンドームの訪問販売やら金を稼いでやることが美女とのあれやこれややら、中身の方は類を見ないほどに尖っているが、しかし、自分はこういう具体性をありのままに楽しめないタチである。お金を稼ぐことにも美女とあれこれす

          【読書】野崎幸助『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』【基礎教養部】

          【読書】伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』【基礎教養部】

          以下のサイトで簡潔な書評(800字書評)を公開しています。 本記事作成の背景本書は計量経済学と呼ばれる学問(の中のさらに一分野)についての入門書である。私は大学で計量経済学を専攻しているので、自分の専門の入門的内容を扱った書籍ということになる。といっても、そういった内容について自分の専門性も交えて詳しく語るため、という意図で本書を課題図書として選んだというわけではない。むしろ、自分が専門的に学んでいる分野を人に紹介してみるということを通して、自分という人間の一側面を「発見」

          【読書】伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』【基礎教養部】

          【読書】橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』【基礎教養部】

          はじめに本書は基礎教養部の活動の一環として、イスツクエさんに紹介していただいた本である。イスツクエさんはnote記事の他に800字書評も書かれているので以下のリンクから参照されたい。 人から紹介された本ではあるが、ここでは思ったこと/思っていることを素直に書く。実を言うと、本書を読み始めた時点では、述べられている内容についてそこまでの期待をしていなかった。というのも、初めの方を読んだだけでは、本書に対し「心に浮かんだことを雑に綴ったエッセイ」程度の印象しか持てなかったから

          【読書】橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』【基礎教養部】

          【読書】野口悠紀雄『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』【基礎教養部】

          800字書評は以下のリンクから読めます。 記事作成の背景と目的 本記事は基礎教養部の活動の一環として執筆しているものだが、ここで扱う野口氏の本自体は基礎教のために読んだものというよりは、大学で所属しているゼミのグループワークのテーマを選ぶ過程でなんとなく読んでみたものである。さらに言えば、テーマの案(CBDCについて)も、流行りのChat GPTに錬成してもらったものの中からピックアップしたものであった。それゆえに、自分なりに語りたい内容があったから題材にしたというよりは

          【読書】野口悠紀雄『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』【基礎教養部】

          【読書】勅使川原真衣『「能力」の生きづらさをほぐす』【基礎教養部】

          はじめに本書は基礎教養部の活動の一環として、YYさんに紹介していただいた本である。YYさんはnote記事の他に800字書評も書かれているので以下のリンクから参照されたい。 本書のメインテーマとしては、社会では当たり前のように使われている「能力」の概念について問い直すことである。しかし、そうした重たい題材にしては珍しく、母と子の対話形式というスタイルを本書はとっている。この形式を「読みやすい」と感じるか「煩わしい」と感じるかは人それぞれ分かれるところであろう(私は完全に後者

          【読書】勅使川原真衣『「能力」の生きづらさをほぐす』【基礎教養部】

          【読書】小泉信三『読書論』【基礎教養部】

          前書き本書はジェイラボ基礎教養部の活動の一環として、Takuma Kogawaさんに紹介していただいた本である。以下にKogawaさんの記事を掲載しておく。 また、先月分の記事(このときは私が本を紹介する役回りであった)でも、読書論及び教養論に関する本を扱っている。 実はこの2つの本は内容的にはほぼ対極の主張をしているため、図らずも同じ分野でかつ全く毛色の異なる本を連続して読むということとなった。せっかくなので2つの本を比べたりもしつつ、『読書論』を読んで感じたことなどを

          【読書】小泉信三『読書論』【基礎教養部】

          【読書】ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』【基礎教養部】

          以下のサイトで簡潔な書評(800字書評)を公開しています。 はじめに本書のタイトルを見て、皆さんはどのような内容を想像するだろうか。私はこのタイトルと「ちくま学芸文庫」というレーベルのアンバランスさが逆に印象に残り、つい気になって買ってしまったクチであるが、表題だけを見れば一種の自己啓発本のように感じられるかもしれない。もちろん、本書には方法論の指南書としての側面がある(むしろそれがないとタイトル詐欺である)が、それ以上に、読書に対する極めて深い洞察に基づいた、著者自身の「

          【読書】ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』【基礎教養部】

          【読書】中島らも『永遠も半ばを過ぎて』【基礎教養部】

          前書き本記事で扱う『永遠も半ばを過ぎて』は、同じコミュニティーのメンバーであるコバさんに紹介していただいた小説である。書評や関連するnote記事も公開されているので参照されたい。「コミュニケーション」という概念をメインテーマとして、関連する本書の記述とともに語っていただいている: 本作は強いていうならエンタメ小説であるが、プロットや伏線はメインではなく、さまざまなバックグラウンドを持つ登場人物たちの掛け合いによって物語の大部分が構成されている。そうした設定以外の要素で読者を

          【読書】中島らも『永遠も半ばを過ぎて』【基礎教養部】

          【読書】鈴木宏昭『私たちはどう学んでいるのか:創発から見る認知の変化』【基礎教養部】

          本記事は「ジェイラボ 基礎教養部」の活動の一環です。 簡潔な書評(800字書評)は以下のリンクからご覧ください。 本書は「学び」について認知科学の知見を交えながら検討していく入門書であるが、以前にもそうした本を紹介している: この今井氏による著作(以下『学びとは何か』)では「スキーマ」という概念をキーワードとして学習のプロセスを説明している。その議論から学べることも多々あるのだが、今見直してみると、いかんせんこの概念だけでは多様な認知的変化(発達やひらめきなど)を統一的に

          【読書】鈴木宏昭『私たちはどう学んでいるのか:創発から見る認知の変化』【基礎教養部】

          【読書】「教養」とは何か──レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』【基礎教養部】

          本記事は「ジェイラボ 基礎教養部」の活動の一環です。 簡潔な書評(800字書評)は以下のサイトからご覧ください。 はじめに「教養」とは何か。構造としてはシンプルな問いである。しかしこれを自分の言葉で語るというのは相当に難しいのではないだろうか。実際、「教養」という言葉の意味合いが非常に曖昧であることは、タイトルにも付した書籍の記述を引くまでもなく多くの人から同意が得られるはずだ。曖昧であるからこそ、教養は「明日からすぐに使える教養(=ファスト教養)」として、ビジネス書やソー

          【読書】「教養」とは何か──レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』【基礎教養部】

          【読書】自由な言葉に触れる──外山滋比古『知的創造のヒント』【基礎教養部】

          本記事は「ジェイラボ 基礎教養部」の活動の一環です。 簡潔な書評(800字書評)は以下のリンクからご覧ください。 本書の旧版は40年以上前に出たものであり、文庫版も内容に関してはそこまで変わってはいないそうなので、第一印象として抱いた「古い本」というイメージはあまり間違っていなかったようである。それでも本書を手に取ってみたのは、目次をチラリと見てその内容に興味をそそられたからに他ならない。本書に準えば、創造的な仕事には人を「酔わせる」効果があるが、本書も、度数は弱いながらも

          【読書】自由な言葉に触れる──外山滋比古『知的創造のヒント』【基礎教養部】