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アイドル映画と文芸映画の融合。是枝裕和監督「海街diary」を鑑賞。

この映画、是枝監督のベストワークではないかしら。是枝裕和版「細雪」といってもいいほど、面白くて、よく出来た映画です。

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■原作は、吉田秋生のマンガ

吉田秋生という人は、コロコロと路線を変える人でして。一時期は、大友克洋の影響をモロに受けたタッチで「バナナフィッシュ」などを描いていました。映画化された作品で有名なのは「櫻の園」でしょうか。1990年バージョンは傑作でしたが、2008年バージョンは某芸能プロダクションのプロモーション映画みたいになってしまい、ありゃ失敗作でした。

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つみきみほ、良かったですねえ。後輩のポニーテールの女の子が一番好きなタイプなのですが。

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吉田秋生は、角川アニメの「ボビーに首ったけ」のキャラクターデザインも良い仕事だと思います。

この作品を映画化するに当たって、原作者の吉田秋生から是枝監督への注文は「四季を大切に映画いてください」。是枝監督は、「梅酒」「桜並木」などを画面に登場させ、日本の四季の移り変わりを丁寧に描き、吉田の注文に応えた。

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■アイドル映画としての評価

物語の中心となる“四姉妹”を、綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すずが演じます。テレビでは実現できない豪華な4人の競演に、公開当時、私は期待に胸ふくらませました。

綾瀬はるかは見事に長女。彼女がここまで「しっかりもの」を演じる作品は少ないのでないでしょうか。いつも、どこかズッコケている役が多いのですが。この4姉妹の母親的な役柄を見事に演じきっています。

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長澤まさみは完全に次女。妹でもあり姉でもあるというまさに中間子って感じ。酒飲みで奔放な性格。オープニングは長澤の肢体からはじまるのですが、こういう「肉体派」を演じられる役者さん、いなくなりました。むかしなら、京マチ子さんとか若尾文子とか、いっぱいいたんですが。

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夏帆も末っ子っぽくて。みんな演技上手いですなぁ。

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広瀬すずは、はじめは「来訪者」なのですが、知らない間にお話の中心になっていきます。この頃から存在感があります。透明感もあります。姉妹を捨てた今はなき父親からの「大切なプレゼント」。この映画のキャッチフレーズの「家族を捨てた父が、のこしてくれた家族。」を体現しています。

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広瀬すずはあえて台本を読まずにその場で演技の仕方を固めたそうであり、ほぼアドリブでコケたらおしまいという環境であったが、広瀬は当時「今まででいちばん楽しい現場でした!」。スゴイなあ。

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■文芸作品としての評価

作家で映画評論家の小林信彦が、この映画を高く評価しています。

「なによりも強く感じられたのは、<古き良き日本映画の香り>である」「ある部分は小津安二郎、成瀬巳喜男、清水宏といった具合で」小林信彦「映画狂乱日記」より引用

言い得て妙である。是枝裕和監督が熱心に往年の黄金時代の日本映画を研究していることは有名であるが、この作品で、過去の名作邦画を充分に咀嚼し、再構築させています。

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話は変わるが、是枝監督と切通理作って似ているなあ、と思うのですが、いかがなもんでしょうか。

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⇧切通理作さん

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■脇役の素晴らしさ

とくに樹木希林が素晴らしい。樹木希林が出るだけで画面が締まるというかいい映画感が倍増する気がします。「嗚呼、人間って、こういうところイヤだよな」という演技ができるのは樹木希林さんが最後だったのかなあ。

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リリー・フランキーもいい味を出しています。山猫亭の亭主の役だが、この人の飄々とした演技は、役者を本業としている人には出せない「なにか」がある。バラエティ番組なんかで、タモリと下ネタを喋っているときと、同じテンションで芝居をするのがいいところである。

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あと、大竹しのぶね。母親役なんですけど、観ていて、やっかいなおばはんやなあ、とイライラさせる。うまいねえ。いつもながら。

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まだ、ご覧になっておられないかたに胸をはっておすすめできる一本です。

■おまけ

是枝監督が演出し、長澤まさみが出演した「キンチョー」のTVCMを、どうぞ。

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