[77] 名もなき花のメロディー
むくりと起きあがると、さわさわささやく草むらのうえ、まじまじと見つめた両手は少女でした。こそばゆい指先には冬越しのナミテントウが遊んでいました。ためらいを残して、ゆっくりと飛び立ちます。目で追えば、暗闇の先には満天の星空。
どうしてこんなところにいるのかしら。まるで思い出せない不思議さ、それさえも忘れてしまうほどに、少女のこころはぽっかり。やさしい風の口笛に、まぶたを閉じます。
目を開くと、か細い茎をにぎっていました。先端に垂れるつぼみ。かつて愛でた記憶が、少女の全身によみ