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ロマンスグレー着陸計画

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書きあげた拙い詩を詩集のようにまとめたもの。秋色。【消えかける浪漫(前編)】【灯しなおす浪漫(後編)】
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記事一覧

[41] 幻惑の暗闇で

招かれることに 抵抗を示さなくなった意志は 息絶えたかのように なめらかに 吸いこまれた …

牙皎耀介
1年前
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[42] 有限と無限

有限に頬をつねられ 目を覚ます 陥没したねぐらの 寝心地は悪くない こめかみに小石が埋まっ…

牙皎耀介
1年前
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[43] 金木犀は散り際にゆめを見る

アスファルトの くぼみにできる みずたまりは ときどき 宇宙みたいに魅力的なんだ ながれこん…

牙皎耀介
1年前
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[44] コスモスの好きな言葉

笑ってしまうくらい 可憐に咲くきみが 目を逸らさないから 口を衝いて出た 抱えきれない告白 …

牙皎耀介
1年前
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[45] さびしい秋風

陽に照らされ 色づきまぶしいもみじの枝葉は ためいき落とす わたしを呼び止め いつまで そ…

牙皎耀介
1年前
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[46] クロガネに落ちた雫

ショーウィンドウに映る しょぼくれた五体 低劣な野心が健在だったころは みずみずしく 歩けて…

牙皎耀介
1年前
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[47] 食べ残し

たったひとつの悲恋だと、誇大に決めつけ、ようやく塞き止められたことにも、胸をなでおろせない。 あと一歩の感覚を享楽したためか、連日の好機を裏切ってしまうまぬけさ。夢にまで見た設定状況にも、臆した小心、滑稽憐れ。完璧な落とし穴にはまったような、把握できない終焉は、もう過ぎたことだから、シェフの腕に託すしかないだろう。 芯から悔やんだ真夜中に、あふれ出す具材あれこれ。任せてくれと腕まくりするシェフは頼もしく、厨房からただよってくる香り、くんくん嗅いで待てば、実際、よだれが垂れて

[48] 葦の沼で振りかえると

「奇怪なことを言うが  きのう通った道が思い出せないんだ」 装った平静で自分もだと応じる …

牙皎耀介
1年前
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[49] THEATER0

あまりの空席に 四方八方 細い首が見まわす かすむ目玉をこすっても ここはまちがいなく シ…

牙皎耀介
1年前
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[50] 隠し部屋のランプ

ランプはまだ かすかに灯りを残している そばで眠る少年の右腕は カビの生えた人参さながら 黒…

牙皎耀介
1年前
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[51] 妄想する虫

陳腐な悲傷をひきずって どこへ道草食っていた? おまえに遠まわりなど 必要でも 不必要でも…

牙皎耀介
1年前
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[52] 残骸

愛 愛愛愛 羨望羨望羨望羨望羨望 絶望絶望  絶望絶望 切望切望切望切望切望      夢…

牙皎耀介
1年前
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[53] ススキの散歩道

眼前には もっとたくさんの道があったのかもしれない 好きな道を選ぶのにも 勇気が必要だった…

牙皎耀介
1年前
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[54] 銀杏じゅうたん

またいちまい 黄色い扇が 風に吹かれ落ち 重なり 靴を脱いであぐらを掻きたくなるほどの じゅうたんの一部に なってゆきます ずいぶんと いろんなものを 見過ごしてしまいました 楽なことではありませんでしたが 弱っちい人間ですから みじめみすぼらしい人生も 許してきたのです こんなふうに 毎度 肩を落としながら 魔法はないのでしょうか? 魔法使いはやっぱりいないのでしょうか? まだ見ぬ世界のうつくしさ 見せてほしいのです ふわふわ宙をただよったり びゅんびゅん風を切るように