Netflix 『西部戦線異常なし』にグッと来た
アメトークの読書芸人で、ヒコロヒーが映画が面白かったので、その原作を紹介していた。
それが『西部戦線異常なし(all quiet on the western front)』だ。
マイリストに入れたまま、放置していた。
戦争ものだが、ミリタリーオタクじゃない当方でも、楽しめた。
いや、素晴らしかった。
※
ざっくりと、あらすじが書いてあるので、ネタバレを含みます。
2023年のアカデミー作品賞
●西部戦線異状なし(All Quiet on the Western Front)
●アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(Avatar: The Way of Water)
●イニシェリン島の精霊(The Banshees of Inisherin)
●エルヴィス(Elvis)
●エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All at Once)
●フェイブルマンズ(The Fabelmans)
●TAR/ター(Tár)
●トップガン マーヴェリック(Top Gun: Maverick)
●逆転のトライアングル(Triangle of Sadness)
●ウーマン・トーキング 私たちの選択(Women Talking)
当方の視聴済みは、イブイブとフェイブルズマン、トップガンのみである。
作品賞を獲得したイブイブは、面白かったが、ストーリー上、東洋哲学的で、とっ散らかっている印象もある。
その点、今作の西部戦線異状なし(All Quiet on the Western Front)は、第一次世界大戦の話で、非常に見やすかった。
3基軸で、描かれるストーリー
戦線で、地獄に身を投じる若者
戦争を一刻も早く止めようとする外交官
贅沢な食事をする陸軍参謀長
使い捨てされる若者
最初に、若い兵士が死に、服やブーツをはいで、仕立て直しされ、今作の主人公 パウルに渡る。
その時に、前の持ち主の名札タグが付いており、それを捨てる軍人。
地面には、数十人の名札タグ。
作業的に使い捨てされていく若者の影を見る。
パウルは、親が止めているにも関わらず、自身で、軍人を志願し、友人と戦争に身を投じることを決める。
彼らは、パリの戦線に行くことをディズニーランドへ行く若者のように笑顔で、はしゃいでいる。
だが、戦線につき、そこが地獄なのだと思い知る。
塹壕シーン
戦いのシーンは、すごくリアルで、今、話していた兵士が次の時には、ムクロになって倒れてたり、骨が出て、死んでる友人など、傷の生生しさは、素晴らしかった。
泥水を平気で、飲み、寒さに悶え、股間で、かじかんだ手を温めているのも印象的だった。
誰も勝てると思っていない
食料難から盗みに入るシーンで、主人公の兄貴的存在 カットは、
”このペースで行けば、180年で、
フランスを占領できる。”
と軽口を叩いていた。
この戦争が如何に負け戦なのかを示唆している。
貧困な国民と裕福な陸軍参謀長
カットの故郷の奥さんからの手紙で、食料を送ったこととお金の送ってくれと打診があった。
当然、食料は、手元にない。お金も入ったのかわからない。
カットが”帰っても、戦争の記憶から逃れられないなら、戦場で、みんなと暮らした方がいいんじゃないのか"と弱気な発言をする。
このシーンで、塚本晋也監督『野火』の故郷に帰っても、戦争の傷に苦しむ主人公を思い出す。
列車のシーンでは、打って変わって、食べられないほどの食事が出てくる。
陸軍参謀は、犬に肉を放り投げ、グラスにワインをついでは、匂いが付かないように地面に捨てるような動作をしている。
国民を戦争に駆り立て、明日の命もままならない陸軍参謀長は、国民から奪った肉に舌鼓をする。
陸軍参謀長の憎たらしさったらない。
フランス軍の塹壕の豊富な食糧。
たかが数百メートル。されど数百メートル。
列車で、食べる豪華な食事。パンが焼きたてかどうか気にするフランス人。
戦争に身を投じた若者の無常なはかなさをビシビシ伝えてくる。
若い兵士のために頑張る外交官
フランスから一方的な休戦の条件を出され、
ある外交官が"降伏したら名誉の死で死ねない"と説くが
シビルウォーのバロンジモで、有名なダニエル・ブリュール演じる外交官が
”息子は、戦争で、無残に死んだ"
と答える。
死ぬことに名誉も糞もない。
その当時の軍人が如何に世論に操られていたのかがわかる。
ドイツは、疲弊し、調印する外なかった。
その調印で、軍人の筆が一瞬止まるのもよかった。
その調印によって、ドイツは、インフレを生み出し、若者の中から、ヒトラーという存在を生み出してしまう。
皮肉にも、戦火は、また、灯される要因になる。
戦車の絶望感
フランスの塹壕を支配したと思った矢先、轟音で、あたりが揺れる。
戦車が蜃気楼から出てくる様は、絶望感を煽る。
戦車のキャタピラに踏み潰される兵士。目の前で、火炎放射器で、火だるまになる友人。
そんな時でも、弾薬を持って、逃げろと指示され、食料を盗む時と同じように荷物を背負って、弾幕の中を駆ける。
水たまりで、一人の敵兵と死闘し、惨殺する。
だが、パウルは、彼も人間だと気づき、助けようとするも、時すでに遅し。
彼には、家族がいることを知り、涙する。
演技が非常に自然で、感情が揺さぶられる。
拠点
拠点に戻ると、同じ部隊のチャーデルが膝に傷を負っている。
障害を持つのは、嫌だと、頸動脈にフォークを刺し、何度も刺し、自害する。
戦争の苦しみと傷害の苦しみを未来と天秤にかけ、チャーデルは、自害する。
非常に痛ましく、生々しい。ミリオンダラーベイビーやんと思った。
ラスト
11月11日11時で、休戦となるが、カットは、呆気なく死に、パウルは、絶望する。
そこへ休戦に業を煮やした陸軍参謀長が戦いの命令を下す。
"パウル頼むから、そいつの頭を銃で、打ってくれ"と心から思う無情な命令。
最後に、この戦線から数百メートル進むのに1700万人の命が失われたことが明記され、エンドとなる。
感想
プライベートライアン、フルメタルジャケットよりも好きだ。
少なくとも、確実に、ダンケルクより面白い。
1917も同じ年代だが、ワンカット撮りなので、映画館で、観るものであって、自宅のテレビに耐えれない。
ウィストンチャーチルぐらい面白い。
どちらも、戦争の話だが、しっかり、そこに人がいて、暮らしがあったのを感じる。
外交官を演じるダニエル・ブリュール。
キャプテンアメリカ シビルウォーのバロンジモも、他者の戦争で、家族を亡くしたキャラクターだった。
バロンジモは、アベンジ(復讐)を選び。
今作は、戦争を止めようとした。
ヒューマンドラマをしっかり描いてくれる戦争映画にグッとくる。
ここまで、読んで頂き、ありがとうございます。
愛してるぜ!!