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漫画キングダムから学ぶ会社経営 #42:呂不韋の経営論

本記事は、「漫画キングダムから学ぶ会社経営」と題し、毎回、様々な視点から漫画キングダムとビジネス(特に経営)での共通点及びそこから得られる学びについてまとめていきます。今回は42回目の記事になります、過去の投稿はこちらからご覧ください。(各記事は基本的に、キングダム最新巻までのネタバレを含みますのでご了承ください。)

前回#41では「王になる手段」というテーマで、キングダム内で王様になりたがっていた大物2人、呂不韋と王翦将軍の考え方の違いについてまとめました。端的に言うと、呂不韋は巧妙な謀反により一見無実で王を奪い取り、王翦は独立による王への願望を持っているので、これらは似て非なる物だという事でまとめました。まだお読みでない方は、こちらのリンクよりご確認ください。

さて、前回、呂不韋のやり方については、いついかなる時代においても褒められるべきではないと述べましたが、呂不韋の(もし国王になったら)どのような社会を作り、どのような国にしたいかと言うのは、非常に興味深く、現代社会においても参考になるので、ここでまとめたいと思います。

前回も述べましたが、呂不韋は、元は趙の商人で、その商売力で、一商人から丞相のさらに上の位「相国」にまで成り上がった、サクセスストーリーの持ち主です。呂不韋の出世の基盤は商売なので、彼の歴史、人脈、などから察するに、財力は恐らく小国の国家予算レベルだったと想像できます。一代でこれほどの大富豪になったのは、現代のGAFAM創業者に似ていると言えます。

そんな呂不韋が自分の理想とする社会について語る場面があります。それは、秦国王嬴政との、最後の問答でした。嬴政はご存じの通り、中華統一により、国境をなくし、争いのない世界を作ると豪語しますが、それに対して、呂不韋は、金を操ることにより国を治める。つまり、金による欲の増長、人の進化を促し、富が富を呼ぶ社会、その結果、秦(の貨幣)を中心とした、資源、産業の循環を行うことにより、血の争いをも凌駕する喜楽を生み出し、豊かさで全体を包み込む国を目指す。という社会です。

呂不韋 3
お金で成功を掴んだいかにも呂不韋らしい理想だと思いますが、実はこの考えというのは、現代社会に非常に近いと思います。呂不韋の理想国家は、現代の管理通貨制度をイメージしたものだと思われます。秦国を中心とした管理通貨制度を導入すれば、物価や経済の安定を図る事ができ、実質的に中華をコントロールする事ができます。みなさんもなんとなく現代社会におけるこの制度はイメージできるかと思います。

呂不韋が本当にここまでの考えにあったのかはあの問答だけでは推測に過ぎませんが、人の大きさ、思慮の深さ、経験値などから、ここまで考えていても不思議ではありません。だとするならば、呂不韋こそ、時代を先取りしすぎ、生まれた時代が違い過ぎた人間なのかもしれません。

あまりの思想の深さに会社経営を遥か通り過ぎた世界観を持っている呂不韋ですが、会社規模で見ると、呂不韋のお金を中心とした産業の発展というのは、あの時代においては完全に新たなビジネスモデルで、現代でいう所の仮想通貨のような産業の構築に近いかもしれません。

経営目線で考えると、呂不韋はかなり優秀な経営者に見えます。「#15:CEOの資質」でも述べましたが、呂不韋はこれら必要な資質を全て持ち合わせています。その中でも呂不韋の最も注目すべき点は、利他主義な点にあると言えます。彼のお金を中心とした世界というのは、理想論ですが、争いがなくなり、富が富を生む理想的な社会で不幸な人を極力減らす経営方針になります。企業の在り方は様々ありますが、全体的な会社満足度でいうと、このような会社が一番高いように思えます。皆が息苦しくなく、喜怒哀楽の「喜」と「楽」にあふれるビジョンを持つのも経営者の役割ではないでしょうか。

今回は呂不韋という超大物の社会への理想及び経営論についてまとめました。漫画キングダムの面白い所は、皆が好きな大将軍だけでなく、政で成功を収めた大物の人間像の描写にもあります。この時代に生まれた格言などと一緒にこれら人物の深堀をしてみるのも面白いかもしれません。

それでは、また次回。

注)写真はすべて漫画キングダムより引用

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