マガジンのカバー画像

創作・物語

49
これまでに書き上げた創作作品や、物語風に綴った日常を集めています。楽しいひと時のお供ができたら嬉しいです。
運営しているクリエイター

記事一覧

僕の空、わたしのそら

「ちがうよ。わるくないよ。」  隣のベンチから会話が飛び込んできて、読んでいた文庫本の小…

吉村伊織
1年前
20

透明の美学

何かと何かをくっつける。 それが、僕の仕事。 あるときは、壊れたものを修理する。破れた絵…

吉村伊織
2年前
15

オコッタイマー

胸につけてるマークが言うぜ。 「さあ、ショータイムの始まりだ」 発動時間は30秒。 パパの意…

吉村伊織
2年前
12

げんきえんぴつ

1年生になって最初の国語の授業は、校長先生が一人ずつえんぴつを配ることから始まった。 「み…

吉村伊織
2年前
13

瓶の中の黒電話

「ねえ、みてもいい?」 「ああ、いいよ。」 あやかが聞くと、おばあが答えた。町はずれの日本…

吉村伊織
2年前
15

ショートショートnote杯に向けて書いたお話たち

10月1日から今日(11月14日)まで、1ヶ月半にわたって開催された「ショートショートnote杯」。…

吉村伊織
2年前
6

空飛ぶストレート【ショートショート】

「あ」 おっちゃんが言った。僕が振り向いたら、 「ぶっ」 公園で知り合ったおっちゃんは、よくおならをこく。子どもの頃は、おならで空を飛べたらしい。僕はウソだと思う。だけど、おっちゃんは気になることを言う。 「ウソだと思うなら、それでいい。あとで飛びたくなっても知らんけどな。」 とりあえずやり方だけ教えてやると、こんなことを話し始めた。 「コツは3つ。まず、まっすぐに体を立てる。背中と腰が曲がったら、力が逃げて飛べん。次に、まっすぐに空を見上げる。空の中心に向かっていくイメ

数学ギョウザ【ショートショート】

「まさかここまで広がるなんて、僕が一番びっくりしています。」 インタビューに答えているの…

吉村伊織
2年前
16

ぼくがかんがえたさいきょうのマスク

見た目がカッコイイのは当然。 赤、青、黒、グレイ、白、の5色から、その日の気分で好きな色…

吉村伊織
2年前
13

君に贈る火星の【ショートショート】

花火がドンと鳴る瞬間、ビクッと体が反応した。だけど、おじいちゃんにもらった黒い石をギュッ…

吉村伊織
2年前
16

アナログバイリンガル【ショートショート】

少年と少女が、丘の上のベンチで風に吹かれながら話している。時は、205X年。ふたりの間には、…

吉村伊織
2年前
18

違法の冷蔵庫【ショートショート】

『高級プリン』と正面のタッチパネルに入力し、冷蔵庫のドアを開けた。現れたのは、予約3ヶ月…

吉村伊織
2年前
24

コロコロ変わる名探偵【ショートショート】

いつしか人は、親しみを込めてこう呼ぶようになっていた。 「名探偵コロン」 見た目はサイコロ…

吉村伊織
2年前
10

河童の川下り【ショートショート】

「どうだ、そろそろお前も一人でやってみるか。普通は素人から鍛えたら5年はかかるが、お前は飲み込みが早い。まだ3年しか経ってねえが、川の呼吸にちゃんと同調しとるのが分かる。」 河童の船頭が、キュウリの船を操りながら、河之介に話しかけた。急流を越えて、流れがゆるやかになったところは、淵と言う。ゆっくりと水面を漂っていると、心もほぐれて、口調もやさしくなるようだ。 「え、いいの?」 「ああ。その前に、ひとつ聞いておきたいことがある。試験と言うわけじゃないが、お前が、川を下る時に気