見出し画像

げんきえんぴつ

1年生になって最初の国語の授業は、校長先生が一人ずつえんぴつを配ることから始まった。
「みなさんには、おうちの人がつけてくれた名前がありますね。たくさんの願いが込められていて、名前には力が宿っています。これは、その力を引き出せるえんぴつです。太く、しっかりした字で名前を書くと、元気がわいてきます。たくさん練習してくださいね。」
「はーい。」
教室が、明るい声に包まれた。

みんなは、見せあい、ほめあいながら、名前を書いた。
形が変でも、大きさのバランスが悪くても大丈夫、と先生も声をかける。大切なのは、心を込めて、ていねいに書くこと。

2回目の春を迎える頃には、ちびたえんぴつばかりになっていた。

最後の授業にも、校長先生がやってきた。
「みなさん、とっても素敵に名前を書けていますね。最初のえんぴつは小さくなってしまったけど、もう大丈夫。これからは、どんなえんぴつを使っても、しっかり書けるはずです。元気な2年生になってください。」

-了(410字)-

お題にそった410字以内のショートショートを投稿する、「 #ショートショートnote杯 」。
募集期間が過ぎたけど、引き続き410字縛りで訓練中。今週も挑戦してみました。

今回のタイトルは、リビングのテーブルの上にあったものから生まれました。
※田丸雅智さんの講座で教わった、「不思議な言葉」の作り方を参考にしています

使った言葉は、リモコンとえんぴつ。
リモコン→声を大きくする→励ます→元気づける
こんな連想です。

そこに、数年前に校長先生に教わった「名前」に対する考え方を乗っけてみました。

改めて、手書きの名前を見つめるきっかけになったら嬉しいです。

この記事が参加している募集

#私の作品紹介

96,516件

最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでもお役に立てたら嬉しいです(^-^) いただいたサポートは、他の誰かのお役に立てるよう使わせていただきます。 P.S. 「♡」←スキは、noteユーザーじゃなくても押せますよ(^-^)